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FASHION
Aug 31, 2018
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】MIKE AMIRI as AMIRI at Restir

【インタビュー】MIKE AMIRI as AMIRI at Restir


東京・六本木にあるショップ「リステア」にて、LA発のブランド《アミリ》が日本初のポップアップストア「AMIRI AW18 TEMP STORE」を10月下旬までオープンしている。

 

《アミリ》は、デザイナーのマイク・アミリによって2014年に立ち上げられたブランドだ。ロックンロール・スピリットが注入されたコレクションが話題となり、ジャスティン・ビーバーなどセレブリティが愛用していることもその人気を押し上げ、瞬く間に世界中で多くのファンを獲得した。2018-19 F/Wシーズンのコレクションは初めてパリで発表するなど、その展開に注目が集まっている。スタイルを突き詰めるだけでなく、ショットガンで服を撃つ驚きのダメージ加工や、リジットの良さを残したストレッチデニムなど素材開発にも積極的に取り組んでいる《アミリ》。ポップアップストアのオープニングに合わせて来日したマイク・アミリに、ブランド創立の経緯や素材・加工への取り組みについて伺った。

——マイクさんの生い立ちについて教えてください。どのような環境で育ちましたか?

 

両親と2人の兄弟とともに、ロサンゼルスのハリウッドで育った。小さな頃からスケートボードをし、ミュージシャンとして曲を書いたりドラムを叩いたりして過ごしていたよ。両親は共働きだったから、子供である俺たちも常に忙しく遊びまわって、家の外で過ごす時間を多くする必要があった。何しろ、インターネットが発達する前だったからね。いつも俺は“クリエイティブなこと”をして、トラブルばかり起こしていたよ(笑)

 

 

——ブランド創立は4年前ですが、それ以前は何をしていたのでしょうか?

 

ミュージシャンとしての活動を続けていて、曲を書き、プロデュース業などを行うことで稼いでいた。韓国のミュージシャンに曲を提供していたこともある。ヒップホップの要素を取り入れたK-POPみたいな曲だったね。音楽関係の仕事を続けるうちに、もっと明確なことをやりたいと思い始めた。そこで昔から好きなファッションの分野に挑戦しようと、ヴィンテージウエアやデザインについて学んだんだ。何かを媒介にして物語を伝えるという意味では、服作りと音楽制作は同じアイデアだった。俺の活動は、ロサンゼルスにいるシンガーのステージ衣装を手がけることからスタートした。スタイリストが俺を呼んで、楽屋の小さなスペースで作業をするといった具合さ。エアロスミスのスティーブン・タイラーの衣装を手がけたこともある。その後は、大企業から小企業まで、ロサンゼルスのあらゆる会社でデザインの仕事をした。俺はなんでもやってみたかったんだ。バッグを作りたい、次はシューズを作りたいとね。そうしたことを長年やっていたよ。

 

 

——それでは《アミリ》を立ち上げて、何を始めに行いましたか?

 

《アミリ》は、俺個人から始まったプロジェクトだ。ビジネスのためにスタートさせたわけではなく、ただ自分が本当に好きなものを作りたかったんだ。正直なところ、自分の仕事を自慢したかったようなものだ。だからこそ、自分のやりたいようにやりきることで、ピュアなコレクションを作り上げることができた。最初のシーズンは15アイテムほど制作したが、特に売る当てもなくまったくのノープランだった。それを展示できる店を探していたところ、LAのショップ「マックスフィールド」と話が進み、彼らが「エクスクルーシブにさせてくれないか」と誘ってきてくれたんだ。俺にとっても服を大量に生産するのは不可能だったし、ちょうどいいと思ったよ(笑) たくさんのお店と取引をする前に、ブランドとは何かを学べて助かったね。

パリで発表した2018-19 F/W Collection
リステアで販売中の2018-19 F/W Collection

——設立からたったの4年間で《アミリ》は大きなブランドになりました。なぜこのような早いスピードで成長できたのでしょうか?

 

その一つの理由は、俺が一点にフォーカスしてブランドを展開したことにある。俺個人から始まったブランドだからこそ、判断基準が常に自分の中にあり、ブランドのあるべき姿を見失うことはない。ブランドを運営するにあたって発生する業務と挑戦を繰り返して、自然に育った結果が今なんだ。そのように10の方向に進むのではなく、我が道一つに絞ってきたことが、成長の早さに繋がっているんだと思う。また同時に、ファッション業界の流れがインディペンデントやストリートという方向に振れていたことも理由だ。インディペンデントブランドのデザイナーが、ビックブランドのデザイナー同様の力を持ち、また尊敬されるようにもなった。また、多くのクリエイターを排出することで、ブランドが拠点としているロサンゼルスが注目を集めるようにもなったこともある。様々な理由が重なったからこそだね。

 

 

——《アミリ》は、セレブリティが着用していることでも注目を集めています。最近のあなたのインスタグラムには、ポール・ポグバやマイク・シノダ、フューチャー、ジャスティン・ビーバーが登場していますね。ギフトとして服をあげることで着用してもらっているわけではないとのことですが、なぜセレブリティに好まれるのだと思いますか?

 

《アミリ》は卸先を絞っているので、どこのショップでも買えるわけではなく、また制作数をコントロールしているので、希少性が高いからではないかな。そして何より、服に魂がこもっていることが影響していると思う。《アミリ》では、ジーンズやジャケットもまだアトリエで、手作業で縫っている。ビッグブランドでは、デザイナーはいわゆるブロダクトの手触りから離れがちだと思うからね。また、俺の育ったロサンゼルスはダンスミュージックやヒップホップ、ロックンロール、グラフィティ、そしてギャングの中心地でもあって、非常に無秩序な街だ。ヨーロッパのロックンロールは非の打ち所がないほど完璧だが、ロサンゼルスのロックンロールは違う。少し汚れていて、クリーンやフラットなものではない。その不完全さに、魂が宿っていると思うんだ。

 

 

——コレクションの95%がLA内で生産されているとのことですが、LA製にこだわる理由も“魂”に関連しているのでしょうか?

 

そうだね。俺はファッションスクールで学んだわけではないので、ロサンゼルスにいる経験が服を作っていると言ってもいいくらいだ。LAの工場ごとに得意分野など特性を学びながら小さな工場を細かく利用することで、大きな工場でできない作業を行なっているんだ。

 

 

——《アミリ》ならではのダメージ加工として、「ショットガンで服を撃つ」というものがありますね。これはどのようにして生まれた手法なのでしょうか?

 

俺はあるときフリーマーケットで、ショットガンで撃たれた跡のある古い服を売っていたんだ。ダメージがひどすぎて誰も買わなかったけれど、俺はずっとその穴が美しく興味深いと思っていた。特に、狙ってできるものではなく、同じものは2つとない点に惹かれたんだ。そこでこのアイデアをデリケートなラグジュアリーアイテムに適用してみるのはどうかと考えた。完璧に作り上げたものを、美しい方法で壊してしまうんだ。もちろん変な方法だと思ったけれど、実際にやってみると手応えを感じたんだ。またこの方法によって、服にストーリーが加わるという点も重要だと思う。ストーリーを語るにはロゴを用いることもあげられるけれど、この服なら友達に「本当にショットガンで撃ち抜かれているんだぜ!」と話すことができる。それって素敵だと思うんだ。

 

 

——マイクさんが自ら撃つのですか?

 

最初の頃はもちろん俺が撃っていたよ(笑) 適切なやり方を見つけるまでは苦労したよ。服に近づきすぎると本当に破壊されてしまうから、少し距離をおいて撃つことを学んだ。失敗して服が使い物にならなくなるたびに、「自分は何をやっているんだ!」と思ったね(笑)

 

 

——どこで撃つのでしょうか?

 

ジュシュア・ツリー近辺の、カリフォルニアの砂漠地帯だ。

 

 

——安全ですか?

 

まあ、安全みたいなものだよ!(笑)

リステアでのポップアップショップの内装

——《アミリ》では、デニムパンツにストレッチデニムを採用していますね。あなたもヴィンテージ好きとのことですが、例えば、ヴィンテージデニムのコレクターは、ストレッチデニムを苦手とする人が多いと思うので意外でした。なぜストレッチデニムを使用するのでしょうか?

 

これはブランドにとって、とても重要なことだ。俺はクラブやパーティに行くたびに、いつもリジットデニムがもっと快適だったらいいのにと思っていたんだ。数多のブランドがデニムパンツを作っているけれど、どれもがリジット。なぜなら、ストレッチ素材を取り入れたデニム生地にウォッシュ加工を施しても、コットン100%特有の色落ちが再現できないからだ。同じ加工プロセスをストレッチ素材に行うと燃えてしまうんだ。しかし《アミリ》はイタリアにて素材開発を行い、ストレッチ素材を使いつつもリジットの色落ちになる生地の開発に成功した。たどり着くまでにかなりの時間を要したね。このデニムを使用できるのはウチだけで、一度履いたら快適すぎて他のブランドのものを履けなくなるはずさ。

 

 

——そんなLAのファッション/カルチャーシーンと密接にリンクしている《アミリ》ですが、日本でも高い売れ行きを誇っているようです。それはなぜでしょうか?

 

俺が思うに、日本のファッションには少しクラシックなアメリカの要素、そしてロックンロールの要素があると思う。《アミリ》はそれらの要素を含んでいるから、日本のマーケットとうまくマッチしているんじゃないかな。また日本人はブランドやデザイナーへの知識欲があり、ブランドの持つストーリーまで知りたがる。いまではソーシャルメディアを使ってブランドのストーリーを発信することができるから、日本に限らず世界中の顧客とダイレクトにつながることができる。

 

 

——好きなミュージシャンを教えてください。

 

長年、ガンズ・アンド・ローゼズのファンだよ!

 

 

——ロック以外の音楽はいかがですか?

 

もちろん聴くよ! 俺の育った時代は、もうすべての音楽が混ざりはじめていた。例えばレッド・ホット・チリ・ペッパーズが好きな人も、N.W.A.を聴くような時代になっていた。現在のシーンで面白いのは、人々をスタイルで分断するような境界線はもう存在しないこと。ロックスターと呼ばれるのは、なにもロックミュージシャンじゃなくてもいいんだ。だって、トラヴィス・スコットはもうロックスターのように見えるだろう。もうグループやスタイルみたいなもので人は判断できないんだ。

 

 

——最後に、今回の「リステア」でのポップアップストアについて教えてください。どのようなコンセプトでこの内装を作りましたか?

 

今回の内装は、俺がティーンエイジャーのときに観た映画『ロストボーイ』(ジョエル・シュマッカー監督、1987)がインスピレーション源になっている。とてもゴシックな雰囲気があって、映画の中のファッションやスタイルは僕にとっては“ハリウッド的”なものなんだ。ハリウッドの子供たちは、ロックンロールとパンク、ストリートを融合したようなスタイルをしているからね。映画の中には、ある男がバンパイアになる、セレモニーのような大きなシーンがあって、彼らは通過儀礼を受けなくてはいけないんだ。パリで開催した2018-19 F/Wシーズンのプレゼンテーションのセットでは、この映画の儀式のシーンを再現した。デザイナーにとっても、初めてのパリコレクションは通過儀礼のようなものだからね。今回のポップアップストアでも、同様のコンセプトを再現したよ。また儀式的なセットである燭台以外にも、真っ白にペイントされたアンプやターンテーブル、鳥の彫像をおくことで、服に込めたストーリーをより鮮明に見ることができるようにした。また、それらはあくまでも全体がクリーンな世界観に留めることに一役買っているね。「リステア」のメインショップに漂う、地下特有のダークな雰囲気とは異なった世界観したかったから。ここまで大規模なポップアップショップを開くこともあまりないから、ぜひ多くの人に足を運んでほしいね。

リステア限定アイテムであるTシャツ、フーディ、デニムパンツ。売り切れ必至なのでお早めに。

 

 

 

RESTIR
ADDRESS 東京都港区赤坂9-6-15
OPENING HOURS 11:00 – 21:00
TEL 03-5413-3708
URL www.restir.com

 

 

Edit_Ko Ueoka

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