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ART
Mar 27, 2020
By THEM MAGAZINE

Interview with ILL-Studio

アートディレクター、出版、キュレーター、デザイナーなどフィールドを一つに縛ることなく活動するThomas SubrevilleとLeonard VernhetによるILL-Studio。2007年から活動しており、過去10年間で、《シャネル》や《シュプリーム》、《エルメス》、《ナイキ》など世界的なブランドとコラボレーションをしている。また音楽の世界でも活躍しており、Tame ImpalaのMVやSoulwaxのクリエイティブディレクターなども担当している。いったい、彼らは何者なのだろうか。その真相に迫る。

 

――ILL-STUDIOでの活動をされる前は何をしてらっしゃったのでしょうか。

 

僕たちはスケートボードを通じて知り合って、2000年初頭に仲間たちと一緒にスケートボードマガジンを作っていたんだ。他にも、ILL-Studioを始めるまでの1年間は、カルチャー向け雑誌も作っていたよ。一番大切なことは、ILL-Studioは、僕たちのこれまでに培った経験がもとになっているということ。10歳ぐらいのころからもっていた自分たちの世界観であったり、身の回りにあったカルチャーや、視覚的要素へのこだわり、他にも小さいころに見ていたカートゥーンや反抗期だったティーンエイジャーの頃のこととか全てが含まれているんだ。

 

――以前のインタービュー記事で、お二人ともアートやファッションに関する特別な教育を受けておらず、それらに関してほぼ独学であるとありました。現在の活動を行うきっかけは何が挙げられますか。

 

その通りだね。90年代後半か00年代の初めの頃は、みんな高校卒業後もしくは、卒業前に自分の進みたい進路を選ばなくちゃいけなかった。例えば、医者や建築家、経済学者、ファッションデザイナーになりたかったら、早い時期から進路を決めて次の年にはなりたい職業に向かって集中しなくちゃいけない。僕たちはいろんなことに興味があったから、このシステムはとても窮屈に感じたよ。僕たちはファッションやデザイン、音楽、建築、アートの中からどれか一つに絞りたくなかった。その結果、周りに縛られずにやりたいことをできるような会社を始めた。つまり、それがILL-Studioであって、多角的な実験ができるから“ノーマルな仕事”を選ばなくていいんだよね。

――あるインタビュー記事で、“今の時代は、相反する要素全てが(アンダーグラウンドとマインストリーム、過去と現在、ハイ&ローなど)一つのポットに入り混じっている時代”と仰っています。将来、あらゆる要素に関してよりいっそう隔たりがなくなると思います。そこで、それらを通じてご自身でこれからやりたい表現があれば教えてください。

 

若い人たちがあらゆるものをカテゴライズすることにどんどん関心を持たなくなっていることにはとても共感できるし、僕たちもカテゴライズされたくない。ビジュアルだけに限らず言葉や音を通じて実験したいことや表現したいことはまだまだある。僕たちの表現は何年経ってもビジュアル以上の何か新しいものに進化していると考えているよ。デザインすることへの僕たちの気持ちを抑えたりしないさ。なぜなら、あらゆることに関われるという広い視野を持っているからね。

 

――アートディレクター、出版、キュレーター、デザイナー、ディレクターなど幅広く活動しておりますが、それらの活動の原動力はなんですか。

 

原動力になっているのはすべてのことを同時にやるという自由なところだと思う。僕たちはなにか一つのことを決めてそれだけをやるっていうスタンスではなくて、逆に僕たちにとってのチャレンジといえば、どんな状況でもその自由な感覚を常に維持できるようにするということ。先のことはわからないけど、自分たち自身を制限する理由は何もないので。これが自分たちのモチベーションをキープするやり方だよ。

――お二人は《シャネル》や《エルメス》、《シュプリーム》など世界の名だたるブランドとコラボレーションをしております。これらのコラボレーションはどのように実現しているのでしょうか。

 

どのようにして実現したのかは、オファーしてくれたブランド側に聞いた方がいいと思うけど(笑)。どのプロジェクトもそれぞれ違ったコンテクストがあるので、正直なところ何か一つの正解があるわけではないんだ。でも、こういうプロジェクトに関わる上で気をつけていることはあって、それは自分たちを一つのスタイルや型にはめないようにすることと、自分たち自身の活動との境界線をつくらないっていうことかな。だから、どのブランドも決まった仕事を依頼するためというよりも、まず僕たちの美的センスに関心をもってコンタクトしてきてくれていると思う。それが結果的に、名だたるブランドとの映像やファッション、建築、雑誌の制作っていう形になったっていう感じかな。

――昨年、日本国内で初の展示会を開催されましたが、これまで日本から受けた影響はどのようなものがありますか。またそれがご自身の活動にどのように表現されているでしょうか。

 

自国文化だけでなく海外の文化を日本なりに研究し、探究して、解釈する独自の文化にいつも大きな影響を受けているよ。日本にある全てのものがとても正確で強い文化的なコンテキストを持っているとも思うんだ。僕たちはたくさん日本へ旅行に行くけど、それはまるで若い学生が図書館に行くような感覚に近くて、探し方を知っているならそこにはなんでもあるよって感じかな。

 

――日本のアーティストで一緒にプロジェクトを行いたい人や団体はいますか。またその方を選ばれた理由はどうしてですか。

 

たくさんいるよ。一つには絞れないかな。でもイエロー・マジック・オーケストラからは僕たちのクリエイティブな表現に絶え間なく影響を受けているよ。音楽からライブ、彼らがステージ上で着用している衣装、彼らが書いた本まで、とても親近感を感じるよ。

――とてもお忙しいお二人ですが、将来的にどのような展望を持ってこれから活動されるのでしょうか。また、その理由などもお聞かせください。

僕たちはメインの活動として”General Index”というブランド兼レーベルを始めたんだ。ILL-Studioは新しくてワクワクするようなプロジェクトを進めようとしているけど、自分たちのやり方で今あるモノを実験するための新しいプラットフォームを必要としていたんだ。そこで”General Index”で自分たちを主体としたプロジェクトやコラボレーションとして服や本、音楽、インスタレーションを作ろうとしている。ぜひ、HP www.general-index.euをチェックしてみてよ。

――《ユナイテッドアローズ&サンズ》とコラボレーションを行いますが、どのような経緯で実現したのでしょうか。

 

このコラボレーションは”General Index”の名前で行われる。共通の友達がたくさんいて、東京で展示会を開いたときに自然と彼らに会ったんだ。彼らがコラボレーションに興味ないか聞いてきて、すぐさま「YES」って答えたよ。今までやってきたことが実を結んだと感じるよ。このコラボレーションは”Pale Blue Dot”つまり60億キロ彼方宇宙からボイジャー1号で撮影した地球の写真がテーマであり、宇宙における人間の将来の展望について。それは1994年にカール・セーガンが書いた著書の名前でもあるんだ。26年前に書かれたものだけども、現在の2020年にも非常に関連しているよ。このコラボレーションで発表されるラインナップは直接的であろうと間接的であろうとカール・セーガンの著書にある哲学に関連している。早くみんなとこのコラボレーションを分かち合える日が来るのを楽しみにしているよ。

ILL-STUDIO

アートディレクター、出版、キュレーター、デザイナーなど一つに縛られることなく幅広く活躍するThomas SubrevilleとLeonard VernhetによるILL-STUDIO。2007年から活動しており、《シャネル》や《エルメス》など名だたるファッションブランドとコラボレーションを行うだけでなくTame ImpalaのMVのディレクションやSoulwaxのクリエイティブディレクターなども担当した。5月には《ユナイテッドアローズ&サンズ》とのコラボレーションを発表予定で、これからの日本での活躍もいっそう楽しみな存在である。

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