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FASHION
Jun 20, 2023
By YATA CHIHIRO

Interview with NICK WOOSTER & KUON for Collaboration Collection

「自分が着たいから作った」。ニック・ウースターが見い出した、日本の美しい継ぎ接ぎ文化。

 

 

6月21日、世界的ファッションコンサルタントのニック・ウースターと、《クオン(KUON)》のコラボレーション第2弾が世界の取り扱い店舗で発売。日本では、6 21日~27日に伊勢丹新宿店メンズ館6階にて開催されるポップアップショップにて先行発売される。

 

《クオン》は、2016年春夏のスタート以来、「新しいものは古くなるけれど、美しいものはいつまでも美しい」をテーマに、日本の伝統的な手仕事である刺し子や襤褸(ぼろ)パッチワークをブランドのアイデンティティにしている。2017年秋冬からはパリで展示会を開くようになり、2018年の「Tokyo Fashion Award」では受賞を獲得した。2021年に発表したニック・ウースターとのコラボレーション第1弾では、アメリカ、ヨーロッパのヴィンテージのミリタリーウエアや日本のシルクの着物を、日本のアップサイクル技術である裂き織りで製作。コレクションは香港の店舗、日本ではネットで販売され、好評を博した。この度、東京ファッション・ウィークで来日したニックと、《クオン》デザイナーの石橋真一郎に、第2弾コラボレーションの製作秘話を伺った。

 

ーーニックさんがいつ、どのように《クオン》と出会ったのか教えてください。

【ニック】「《クオン》との出会いは、今年3月にも来日した、2018年の東京ファッション・ウィークがきっかけです。この10年間、ゲストとして参加し、多くの興味深い日本のブランドに出会うことができました。《クオン》はそのブランドのひとつです」

 

ーーなぜ《クオン》とコラボレーションをしようと思われたのでしょうか?動機を教えてください。

【ニック】「私は長年ファッションの仕事をしていますが、《クオン》が2016年から発表している、古いヴィンテージファブリックをパッチワークしたジャケットを見たとき、この類のストーリーに非常に興味を持ちました。そのような興味深いブランドとコラボレーションすることは私にとって偶然では無く必然的な出来事なのですが、強いてコラボレーションに至った理由を考えるとすると、私が《クオン》の服を着たいからです」

 

ーーそれでは、コラボレーションアイテムに込められた、ニックさんのクリエイションを教えてください。

【ニック】「もちろんです。スタイルに関しては、私が考えるワードローブから生まれました。クラシックなジャケットとショーツは、私がよく着ている大好きな組み合わせなのです。今回のコラボレーション第2弾では新たにパンツも加えました。このパンツは特にTシャツとの相性がよく、カジュアルウエアにも合わせやすいので、着る人の年齢を問いません。今回のコラボレーションがもたらした特別なアイテムであると同時に、私にとっても一生のワードローブとなったのです。私が得意とするカラーパレットやスタイルのアイデアを、伝統的な職人技とかけ合わせることができ、非常に楽しかったです」

 

ーー第1弾のコラボレーションに続き、今回また復刻・再販したいと思ったのはなぜでしょうか?

【ニック】「コラボレーション1回目では、香港向けの特別なプロジェクトでした。なぜ2回目に至ったかというと、私は多くの場面でコラボレーション1回目のピンクのウエアを着用していたのですが、それを見た人から『それはどこのブランドのものだ?』『どうしたら手に入るの?』と聞かれることが多かったので、この機会に他の国にも展開することにしました。自分が着たいという理由もありますが、周りの反応も大きかったので、またコラボレーションしたいと強く思ったのです」

ーー石橋さんのクリエイションのどのようなところに魅力を感じていますか?

【ニック】「まず、彼は優秀なデザイナーだと思います。勘もいいし、センスもいい。私にとっては、こういう才能のある人たちと一緒に仕事をしたり、付き合ったりすることが一番面白いのです。だから、彼が私と一緒に仕事をしたいと言ってくれるのはとても嬉しいし、彼と一緒に仕事ができるのは幸せなことです。私にとって魅力的なのは、歴史あるもの(こと)に携わること、才能ある人と仕事することなのです」

ーー第2弾でも、ウエアにピンクが取り入れられていましたが、ニックさんにとってピンクとはどのような存在でしょうか?

【ニック】「ピンクは、フェミニンだと言われる色のひとつですが、私はどんな肌の色にも似合う色のひとつだと思っています。肌の色が暗い人も明るい人も、白い人も黒い人も、誰にでも似合うと思います。特に赤毛の人なら、ピンクは最高です。最初のコラボレーションは、カーキがベースで、ピンクはアクセントのようなものでした。ですが今回は、ピンクを主軸に構成し、白とグレーでコレクションの幅を作りました」

 

ーー《クオン》では、日本の伝統的な技術や素材を西洋的解釈されています。西洋的な解釈の手法を教えてください。

【石橋】「おそらく僕ら日本人は、和服より洋服に慣れ親しんで育ってきたと思います。加えて僕は、イギリス、イタリア、アメトラなどのテイラードに関わっていたので、ファッションのベースは西洋にあると思っています。逆に、日本の伝統技術の方が、新鮮に感じることって多いと思います。《クオン》というブランドのデザイナーをするにあたって、日本の文化を調べることが多いのですが、その度に面白いものに出会います。コレクションでは、刺し子や襤褸といった技術を僕のフィルター(西洋的なファッションの解釈)を通して表現しています」

 

ーー第1回のコラボレーションでは、日本での販売はありませんでした。卸し先を香港に選んだ狙いを教えてください。

【石橋】「日本では、ネット販売のみでした。実は、《クオン》発足当時から、中国からの引き合いはかなりあったんです。中でも、香港のショップ『initial gentleman』とは以前からコラボレーションという形でいろいろやらせてもらっていました。1100万円を超えるボロのジャケットとかも卸しで仕入れてくれてたんですよ。もちろん、中国は富裕層が多く、日本の文化が好きな方もいらっしゃるので、『initial gentleman』との取り組みが続いていました。ニックさんとコラボする話があがった時も、『initial gentleman』にお話させてもらって、独占販売にしました」

 

ーー第1回と第2回で、展開アイテムやカラーなどの違いを教えてください。

【石橋】「第1回では、刺し子と裂き織りを軸に展開しました。先ほどニックさんもおっしゃっていたように、ピンクは差し色として使用しました。その時の刺し子の素材は、ピンクの着物、チノ、ミリタリーのヴィンテージ物。だから、第1回はメンズの定番的なアイテムを、ヴィンテージのアップサイクルで作ったコレクションとなりました。刺し子でも裂き織りでもピンクを使いましたが、第2回では刺し子をメインに展開しました。ピンクは反響が大きかったし、ニックさんも好きだから続けて使用。加えて、『着物の白も面白いよね』っていう話になりました。でも、白の着物ってあまり残ってないんですよ。藍染めとか草木の染物は虫がつかないので、ある程度は探せる。対して白は汚れるし、早々に廃棄されてしまっていて残っていない。だからこそ、昔のシルクの白でやったらかっこいいものができると確信し、なんとか頑張って探しました。あと、ニックさんはスーツも好きなので、スーツ地もやりたいっていうことになって。これらの白の着物、ピンクに染めた着物、それとグレーのスーツ地の3点でコレクションを作ろうとなりました」

 

 

ーーコラボレーションでニックさんから受けた影響がありましたら教えてください。

【石橋】「やはり長年、洋服をたくさん見られていて、さまざまな業種の方ともお会いされてる方なので、洋服を誰に届けたいとか、どういう風に見てもらいたいかという考え方に、とても刺激をもらっています。今回のコラボレーションの目的には、クラフトマンシップやテイラーリング、それらをちゃんとファッションとしてかっこよく見せることだったので、《クオン》のいいところをきちんと理解してくださっているニックさんから、ファッションコンサルタントとしてのブランドマーケティングの大切さを教えていただきました」

 

 

 

Photography_MAKOTO HOSHINO

Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
Jacket¥220,000 Pants¥176,000 Hoodie¥49,500 T-shirt¥25,300 Shorts¥132,000 Shirt¥99,000
NICK WOOSTER

ニック・ウースター アメリカ出身。ファッションコンサルタント。アメリカの高級デパート「ニーマンマーカス」で勤務後、「バーグドルフ・グッドマン」でメンズ・ファッション・ディレクターを務める。2011年に独立し、「ウースター・コンサルタンシー」を立ち上げる。

石橋 真一郎

いしばし しんいちろう 岩手県出身。丸の内の老舗テーラーにて修行後、パリコレクションブランドのパタンナーとして入社、2014年独立し、フリーパタンナーとして数々のブランドを手がける。2016年春夏より《クオン》のデザイナーに就任。

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