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Oct 22, 2025
By THEM MAGAZINE

Interview with RYUNOSUKE OKAZAKI for Collection「004」

《リュウノスケオカザキ》の新境地「004」。

岡﨑龍之祐が手がける《リュウノスケオカザキ》が、29点もの最新コレクション「004」を発表した。岡崎は東京藝術大学院在学中から作品が高く評価され、2021年には文化庁の支援を得て東京コレクションに公式参加。そして2022年には、ファッションデザイナーの登竜門「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストに選ばれ、造形美あふれるドレス群とともにファッションデザイナーとしてその名を広めた。国内外で多くの展覧会を開催し注目を集めてきた岡﨑だが、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で、コレクション「003」から新作の「004」まで、計7作品を展示、さらに今回のコレクションの代表作である「Sakura」は、英ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の永久コレクションとして収蔵されることが決まった。岡崎ならではのファッションとアートの視点で生み出される造形美や、初のプレタポルテコレクションについて話を聞いた。

線が面へと変わり、布が重力に従いながら思いもよらぬ形を描く。その偶然の造形に、彼は「自然の意志」を見る。《リュウノスケオカザキ》の新作コレクション「004」は、その過程で生まれる「重力のリズム」を受け止めた作品群だ。縄文時代の暮らしから着想を得て製作した「JOMONJOMON」シリーズは、ドレスは身体から離れ、生命体のように変容していった。だが、「004」で岡﨑は方向を反転させる。「今回は人間の身体をすごく意識しました。布が身体を包み、支えるように見えたんです」。そして、今回のコレクションでアシンメトリーなデザインが多い理由について、「芯材を入れて布のたわましたドレープを見た時に、これまでよりすごい身体を感じた」と語った。「これまでは結構身体から拡張していくような関節を増やしていくようなイメージでの制作だった」が、今回は「核となるその身体そのものをより一層意識した」のである。素材は前作から引き続き、光沢と独特な色相を生み出すベロア生地とシアーなストレッチ素材、レザーを使用。素材選びは常に思考より先に、手の感覚が導くという。「触って直感的にこれだ、と思えるものを選ぶ。光が当たったときの反射や、手で触れた時の感触で、造形の可能性が浮かんでくる」

「デザイン画を描かず、布と対話しながら形を探していく」。彼の製作の特徴は、モノづくりにおける感覚で養った手の経験を重視して、デザイン画やスケッチを描かないこと。どこから見ても美しいものであるかという探究心が、彼のコレクションを生み出す。「手の経験」という言葉を彼はよく使う。作ることを通して手が学び、手が考える。
「作り続ける中で、手が教えてくれる瞬間がある。布を持ち上げたり、ねじったりして、偶然生まれる形が次の発想につながっていく」。その過程で、これまで一貫して追求してきたシンメトリーの構造から、自然にアシンメトリーのドレスが生まれた。岡﨑はその変化を「縄文土器から弥生土器に移行したよう」と表現する。装飾的な祈りの造形から、より静かな機能美へ。そこには、形の進化とともに祈りの姿勢そのものが更新されている。広島出身の彼にとって、創作は常に「祈り」が根幹にあるという。「広島への平和の祈りが原点にあります。縄文の人々が自然に祈ったように、僕も見えないものに向かって形を作っている」。
その祈りは、宗教的でも感傷的でもなく、生きることへの祈りとして現れる。自然災害やパンデミックの時代において、岡﨑は人間が自然の一部であることを再確認しようとしている。

コレクション〈004〉では、これまで発表してきたコレクション形式に加えて、新たにバッグやシューズを発表。ブランドとして初の試みであるプレタポルテへの挑戦を始めた。「アートもファッションも変わらない。発表の場が違うだけで、やっていることは同じ。どちらも本気だからファッションなのか、アートなのかは定義しないです。より多くの人が手に取れる形で表現できたら」。
その言葉には、祈りの造形を現実の衣服へと落とし込もうとする、柔らかな覚悟が現れる。岡﨑は今、ブランドを三つの軸で構想している。アートとしてのインスタレーション、ドレスコレクション、そしてプレタポルテ。「どれも僕にとって同じ表現です。大事なのは続けること。続けることでしか見えない形があると思う」。


 

Ryunosuke Okazaki – JOMONJOMON

会期:2025年9月13日(土)〜10月19日(日)

場所:V&A South Kensington

https://www.vam.ac.uk/

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