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LIFESTYLE
Apr 28, 2025
By THEM MAGAZINE

BRAND STORY: uka Regenerative and Total Beauty Vol.1

美容は単に「飾ること」ではなく、自分自身を“回復”させるプロセスだ。疲れた肌を整えること、清潔な髪を保つこと、健康な爪を育てること。それらはすべて、よりよい自分でいるための手段であり、毎日のパフォーマンスを高めるための行為でもある。トータルビューティーを提案し、東京を中心にサロンを展開する《ウカ》は美容を回復と捉え、心が満たされ内側から生まれる輝きを「きれい」と定義づけている。“本物の技術・本物の感性・本物の気配り”を理念に掲げ、サロンで技術を提供しながらお客様の声を反映したサロン発の製品作りを行い、サロンとホームの2軸で自身を「ケア」することの大切さを唱える《ウカ》。今回、代表取締役CEOの渡邉弘幸氏と、《ウカ》代表でありトップネイリストの渡邉季穂氏、そして季穂氏を含めたサロンに立つ技術責任者5人に、ブランドの歴史とあり方、そしてその核について伺った。

uka park side suite

デザイン性のあるヘアスタイルを提案するため、理容室からユニセックスのヘアサロンに

 

《ウカ》は、1946年に現代表である渡邉季穂氏の祖父が創業した、神奈川・厚木の理容室「理容むこうはら」から始まった。1978年に、代表の父であり先代の向原一義氏が“理容と美容の垣根を越えたユニセックスなヘアサロン「エクセル」”へ転向させた。

 

理容室からヘアサロンへ転向した契機は、《ヨウジヤマモト》や《コム デ ギャルソン》など日本のブランドがパリで発表したコレクション。先代は、パンチパーマや角刈りといった伝統的な男性向けのヘアスタイルから脱却し、性別にとらわれないデザイン性のあるヘアスタイルを提案したいと思っていた中で、それらのコレクションを見て胸を突かれた。全国理容競技大会で優勝するなどの実績を積んでいたものの、「女性のヘアスタイル提案についてはなんの裏付けもない自分が、ユニセックスを提唱しても意味がない」と考えた先代は、さらに己の技術の研鑽に励んだ。その結果、日本全国でヘアショーや講習活動を展開するまでに至り、男女関係なくヘアスタイルを楽しめる“ユニセックスサロンのパイオニア”となった。後進の育成にも尽力し、1996年に現代の名工(卓越技能章)、2008年に黄綬褒章を受章した。

「uka IZU Shampoo」「uka IZU Conditioner」地肌を整えるための抗菌効果や抗酸化力があり、かつ、環境保全にも有用である伊豆のクロモジから得た“クロモジウォーター”をキー成分として配合。製品を使うほどに、“使用者の髪や頭皮環境のみならず、地球も回復”する。

《ウカ》が考える「本当の美しさ」とは。提案する領域はさらに広がった「トータルビューティー」へ ⏤渡邉弘幸 (《ウカ》 CEO)

 

「美容室でネイルも」という形から、現在はヘア、ネイル、アイラッシュ、ヘッドスパ、エステティック、製品開発と、その販売でストアの運営、カフェ「ウカフェ」の運営まで行う《ウカ》。その前身であるトータルビューティーサロン「エクセル」は1978年にヘアサロンから始まり、その約20年後にトータルビューティーをスタートさせた。「エクセル」から《ウカ》へブランド名を変更したのは、2009年のことだ。

 

ブランド名は、さなぎが蝶へと変わる「羽化(うか)」を意味し、「女性も男性もひとりの大人として美しく輝けるように、世の中に美を広める存在になっていけたら」という願いが込められている。では、彼らが考える「美しさ」とは何か。

 

「褒められると、人は嬉しくなる。その瞬間の笑顔こそが最も美しい」。季穂氏が繰り返し語るこの言葉に《ウカ》の哲学が凝縮されている。単に見た目を整えるものではなく、自信を与え、人を前向きにする力を持っている美容。季穂氏のパートナーでもある渡邉弘幸CEOは「人間の美しさは、外側だけでなく内側からの回復によって生まれます。ルッキズム的な見た目の美しさは、その人の最初の見た目の印象を向上させますが、私たちはそれよりも、心が満たされている状態を“きれい”だと考えています。美容室に来て瞬間的に見た目を美しくすることはもちろんできます。ですが、私たちはそれより前の、お客様自身のホームケアの段階から、根本的にコンディションを整えるお手伝いをしたいのです」と言う。

 

表面的な美ではなく心の充足が伴った美を重視するため、《ウカ》は市場調査より「お客様の声」を優先している。渡邉CEOは「マーケティングリサーチは一度もしたことがありません。何を始めるにも、自分たちのやりたいことや技術者への気遣いに込めた情熱と、“お客様のために”ということが今までの変化や製品開発のきっかけになっています」と語る。「お客様が変化していくためのきっかけづくりをしたい」。その思いから、ホームケアの段階から関われる製品設計や施術提案を行っている。

 

また《ウカ》は「環境が回復する場所で育つものを取り入れることで、人間も地球も回復する」という視点を持ち、サステナブルな原料を用いたプロダクト開発にも力を入れる。2024年7月の「IZU Shampoo」と「IZU Conditioner」の発売を皮切りに「次世代に、健やかで住みやすい地球をバトンタッチできるように。アイデアと誠意を尽くして、今できることにみんなで取り組み、地球環境を回復させて循環するほうへ進むこと」と定義づけた“Regenerative Good”を提唱し、“サステナブルのその先”を目指す。

 

渡邉CEOは「“Regenerative Good”は、海洋学者でサーファーの佐藤延男先生との伊豆での出会いが着想源です」と述べる。「COVID-19がきっかけで国産原料に注目していたのですが、そのなかでハイトーンのヘアカラーをする人が増えました。それに伴いカラー剤のアレルギーを発症する人や、頭皮や髪の毛を傷める人も増えて。そんなお客様が家で行う日々のメンテナンスに対して、私たちはどう答えを出すかと考えていたときに佐藤先生と出会いました。クロモジという主成分を用いることで、伊豆の回復とともにお客様も回復する設計を採用しないとダメだと考えました。良い製品を生み出すためだからといって、お客様の健康を害することや気候変動、環境破壊には加担しません」

 

uka 東京ミッドタウン 六本木

技術者へ与える新たな価値

多岐にわたる施術を受けられるサロンをはじめ、製品を販売するストアやカフェ、Eコマースなど、彼らが展開を拡大する理由は、「美容師の仕事に新たな価値を与え、技術やこだわりを応援したい」という思いによるものだ。

 

美容師を目指す人は年々減少している。加えて、拘束時間の長さや肉体的な疲労などの理由から、美容師になったものの数年で職を辞してしまう、という人は約7割に上る。その現状を踏まえ、渡邉CEOは「今の美容業界のビジネスモデルでは、技術者のポテンシャルを最大限生かしきることができない」と考える。「業界法則のようなものは変わらないとしても、私たちは美容師に、美容師以外の選択を提案することができる。《ウカ》では、サロンワークを支えるバックステージのような仕事の他にも、リテールや開発など選択肢は多数あり、実際にローテーションしている事例もあります。技術の向上を目指すこと、お客様と繋がること。それだけでなく、製品開発などの場面から社会と繋がり、貢献するという価値をも生み出したいと考えています」

渡邉弘幸

東京都出身。明治大学卒業後、株式会社博報堂に入社。2009年に退社し、夫人であり《ウカ》トップネイリストの渡邉季穂氏の祖父が創業した株式会社向原に代表取締役副社長として入社。トータルビューティーサロン「エクセル」から「ウカ」へリブランディングさせ、2014年から代表取締役CEOを務める。

 

STAFF

PHOTOGRAPHY BY AYUMU YOSHIDA.

Edit_NONOKA FUJIWARA(Righters).

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