Apr 29, 2025
By THEM MAGAZINE
BRAND STORY: uka Regenerative and Total Beauty Vol.2

美容は単に「飾ること」ではなく、自分自身を“回復”させるプロセスだ。疲れた肌を整えること、清潔な髪を保つこと、健康な爪を育てること。それらはすべて、よりよい自分でいるための手段であり、毎日のパフォーマンスを高めるための行為でもある。トータルビューティーを提案し、東京を中心にサロンを展開する《ウカ》は美容を回復と捉え、心が満たされ内側から生まれる輝きを「きれい」と定義づけている。“本物の技術・本物の感性・本物の気配り”を理念に掲げ、サロンで技術を提供しながらお客様の声を反映したサロン発の製品作りを行い、サロンとホームの2軸で自身を「ケア」することの大切さを唱える《ウカ》。今回、代表取締役CEOの渡邉弘幸氏と、《ウカ》代表でありトップネイリストの渡邉季穂氏、そして季穂氏を含めたサロンに立つ技術責任者5人に、ブランドの歴史とあり方、そしてその核について伺った。

手元はメンタルのバロメーター。自身の原体験から「きれいにすることの気持ち良さ」を伝える。 ⏤渡邉季穂 (《ウカ》 代表 / トップネイリスト)
生きる道具であり、さまざまなシチュエーションで視界に入る自分の手。《ウカ》代表でありトップネイリストの渡邉季穂氏は「手はストレスの影響が表れやすい部分。爪がきれいでないと無意識に触ってしまい、さらに傷つけることで負のサイクルに陥ります。私は幼少の頃から爪をいじる癖があり、傷んでいた自分の爪がコンプレックスでした」と振り返る。現在提唱しているネイルケア方法は、自身が友人に連れられたネイルサロンで受けた施術の経験に由来する。「私は爪が汚いから行きたくなかったのですが、『きれいにするために行くんだよ』と、友人に誘われるがままにケアをしてもらうと、驚くほど爪がきれいになったんです。あのときの感動と気持ち良さは、今《ウカ》で提案しているディープケアメソッド(爪そのものを美しく魅せるケア)の重要なファクターになっています」
そして、《ウカ》がトータルビューティーを提案し始めたきっかけは季穂氏の体験にある。氏は今から30年ほど前、ロサンゼルスのビューティーサロンを見て日本との違いに衝撃を受けた。そこでは、ひとつのサロン内でメイクやエステを行う他、ヘアとネイルのメニューを同時進行するなど、多岐にわたる施術が行われていた。「当時の日本では、ひとつの美容サロンの中でいろいろなメニューを同時に行うお店はほとんど存在しませんでした。ロサンゼルスで行われていた“ワンストップショッピング”のような施術を目の当たりにし、『私がやりたいことはこれだ』と思いました。そして、自身の父である先代に直談判したところ、『そんなにやりたいならやってみなさい』と言われ、サロンでネイルの施術を行うことになりました」と振り返る。しかし、同時施術の形式は日本では浸透しづらく、「専門店の技術者のほうが上手だろう」と施術を断られることもあったという。それを打破するため、季穂氏はネイリストやヘッドスパリストをはじめとする各部門の技術力を追求。お客様が納得できる技術力を磨き続け、施術を提供し続けていく。このことが、《ウカ》が目指すトータルビューティーをつくり上げ、世の中に浸透させるひとつの転機だったという。「お客様がサロンを後にするときは、髪や爪が綺麗になっているだけでなく、本人のモチベーションも高まり、自信を持ってほしい。それが、私たちがお客様に対して提供できる本当の“ビューティー”だと思っています」

続けて、「店の規模が大きくなるにつれ、顧客の声を細やかに聞くことは難しくなります。私たちのサービス提供や商品提案はお客様の声を形にすることにあるので、より幅広くお客様の声を聞くために、顧客満足度調査アンケートのukaizen(ウカイゼン)を始めたことも大きな転機でした」と語る。ukaizenが始まったのは約10年前。「シャンプーが下手だった」や「技術者に魅力を感じない」「電話対応が冷たい」など、辛辣な意見まで包み隠さず「改善報告書」としてまとめ、店舗で頒布する紙面やWeb上に公開。「うれしいことが世界でいちばん多いお店」をヴィジョンとし、「あなたと私と地球が、もっときれいに、うれしくなることを増やしていきたい」という理念のもと、「お客様と一緒にお店づくりをする」といった独自の経営姿勢を継続しながらサービス改善を行っている。

「美しさは、自分を労ることから始まる」
彼らが生み出すプロダクトのベースには、サロンワークとの繋がりがある。“お客様がサロンで体験したことを、自宅で再現できるものをつくる”ことをルールとし、「持って可愛い、置いて可愛い、贈って喜ばれる、使って気持ち良い。そして効果がある」という5点を基準にしている。《ウカ》初のオリジナルプロダクトでありシグネチャーアイテムの「ネイルオイル」は、季穂氏のサロンワークから着想を得て誕生した。「お客様の爪を美しく整えても、次に来店されるまでに良い状態をキープしてもらうには、ネイルオイルでのホームケアが不可欠。ですがネイルオイルは、ベタつくとか、こぼれるとか、使わない理由がすごく多くて。どうしたら日常的に使ってもらえるのかずっと考えていました」。その答えを見つけるまで実に15年。長い構想期間を経て、「可愛くて、いい香りがして、持ち運びやすくて、使いやすいネイルオイル」を生み出した。「競合が多いヘアケアの世界とは違って、ネイルオイルは市場がまだ確立されていませんでした。それならば、ちゃんと使ってもらえるプロダクトをつくれば、日常に浸透させられるかもしれないと思いました」
経営者でありながら、サロンだけでなくクリエイティヴ撮影のネイリストや講師としても活動する季穂氏。幅広い活動の中で氏が大切にしているものは、「綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、関わってくれるすべての人です」と語る。「スタッフがいるから今がある。今まで関わってきてくれた人、そして今関わってくれている人。私たちとともに働く人たちが楽しそうに仕事ができる環境を目指しています」。お客様のみならず、《ウカ》に携わるすべての人を大切にしていると語る季穂氏は、“美しさは自分を労ることから始まる”という自身の原体験を重視し、サロンの技術者とお客様に寄り添う製品開発とサービス提供を行い続けている。


《ウカ》代表・トップネイリスト。山野美容専門学校卒業。雑誌やCM、広告、ショーやコレクションでのクリエイティヴ活動をはじめ、長年の経験を生かしたプロダクト開発やストアプロデュースなども行う。著書に『ukaが教える 大人のハンド&ネイルケア』(2021年 主婦の友社)、『雰囲気からして美人』(2019年 ダイヤモンド社)などがある。
STAFF
PHOTOGRAPHY BY AYUMU YOSHIDA.
Edit_NONOKA FUJIWARA(Righters).