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MOVIE
Jul 27, 2023
By TORU UKON (Editor in Chief)

 Go See a Movie : 映画館へ行こう!オリヴィエ・ダアン 『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』

1970年代のラ・グランド・ダム

『エディット・ピアフ 愛の讃歌』『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』で歴史に名を残す偉大な女性(グランド・ダム)を独創的な視点で描いてきたオリヴィエ・ダアン監督。そんなフランスの俊英が“世紀の女性3部作”のラストを飾る人物として選んだ人物はシモーヌ・ヴェイユ。1970年代のフランスで女性や社会的弱者の権利を求めて奮闘し、2017年に89歳で生涯を閉じたフランスの国民的政治家だ。

1974年のパリ。 カトリック人口が多数を占め、男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ヴェイユ(エルザ・ジルべルスタイン)は、レイプによる望まない妊娠や違法な手術で命を失う女性たちのために中絶手術の合法化が必要だと熱弁をふるう。「自ら進んで中絶をする女性はいません!」と彼らの前で声高に訴えると、圧倒的な反対意見を退け、のちに“ヴェイユ法”と呼ばれる中絶法を勝ち取った。1979年には、女性として初めて欧州議会議長に大抜擢。理事たちの猛反対をものともせずに、“女性の権利委員会”を設置!さらに移民、エイズ患者、そして囚人など、弱者の人権のためにも闘い、フランス国民に最もリスペクトされる女性政治家になっていく。その信念と情熱を感じさせる“鉄の意志”は、ユダヤ人であったため16歳で家族とともにアウシュビッツ収容所に送られ、たときに味わった苦い体験の中で培われたものだった……。

晩年のシモーヌ役を演じるにあたり、体重を8kgも増やして臨んだエルザ・ジルベルスタインの気高い演技はもちろん、当時を再現した豪華な美術や、カール・ラガーフェルドが《シャネル》のアトリエで特別にデザインを手がけるほど“おしゃれ”だったというシモーヌの“パリシック”な衣装も要チェック!2022年、フランス映画の年間興行成績1位に輝いた本作、「誇り高く生きよう」というフレーズが浮かんでくる。

Simone, le voyage du siècle

2022年/フランス/フランス語/140分/G
TERM 7月28日(金)〜
SCREEN ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
FILM SISTRIBUTION アット エンタテイメント
URL simonemoviejp.com

Olivier Dahan オリヴィエ・ダアン

1967年フランス生まれ。1991年にマルセイユ地中海美術大学を卒業。1998年から1997年にかけて7本の短編映画を撮影。 数々のミュージックビデオを監督。2006年の監督作『エディット・ピアフ 愛の讃歌』はアカデミー賞3部門にノミネートされ、主演のマリオン・コティヤールは主演女優賞を受賞。一躍世界で有名になった。2012年の監督作『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は、2014年カンヌ映画祭のオープニング作品として上映された。

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Edit_Mami Ukon

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