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PHOTOBOOK
Mar 11, 2018
By THEM MAGAZINE

【選書】Photobook by Women Photographers

「Flying Books」と「SO BOOKS」がオススメする、女性写真家による写真集6選。

 

4月24日発売の『Them magazine No.018』では、新時代を切り開く女性を特集。ウィメンズモデルでのファッションシュートをはじめ、女性クリエイター対談やインタビューを通して今を生きる“ミューズ”のスタイル、哲学に迫った。誌面の一企画では、女性を撮る4人の女性フォトグラファーを紹介 (P126-)。女性が女性を撮る場合のみ立ち現れる、透明で澄んだ関係性に注目した。

今FEATURE企画では弊誌の特集内容に紐付き、写真への造詣が深い2つの書店「Flying Books」と「SO BOOKS」に選書を依頼。女性写真家による写真集というテーマで、3冊ずつご紹介いただいた。

 

 

ご紹介者
「Flying Books」店主 山路和広さん

 

「個人的に交流のある3人の写真家さんの作品をご紹介します。それぞれ異なった女性ならではの視点が現れていると思います。(3冊とも著者のサイン入)」

『しきしま』 / 西村多美子

 

1973年発刊の幻の写真集、2014年に六本木の「ZEN FOTO GALLERY」から刊行された待望の復刻版。『しきしま』というタイトルは、古い言葉で“やまと=日本”を意味する。「収録されている作品は、写真学校卒業直後、旅で撮った写真を雑誌に寄稿してはそのギャラでまた旅に出るという生活を繰り返していた西村さんの旅の写真をまとめたもの。森山大道さんらと活動を共にしていた方で、荒いタッチや強いコントラストが特徴で、タンカーを一面に写した迫力のある写真がある一方で、三輪車に乗った少女や、赤ちゃんを抱いた女性などの写真からは、西村さんの女性ならではのやさしいまなざしを感じます」。西村さんは5月11日より『ZEN FOTO GALLERY』で個展を開催し、新写真集『旅人』を発刊する。

 

¥7,000 (Flying Books)

『NY 1980』 / 大竹昭子

 

作家、写真評論家としても著名な大竹昭子さんによる写真集。『NY 1980』は、NYに在住した79年から81年の間に撮られた写真とエッセイによる構成となっている。「文筆家、写真の評論家としても切れ味の鋭い方だと思いますが、その鋭い視線で、HIPHOP創成期のグラフィティなど、当時の街の風景を切り取り、写真と言葉で表現されているのがこの本の魅力です。大竹さんの持つ“女性らしさ”とは、男のロマンチシズムとは対極のリアリスト的なところかと思います。男性だと敢えてノスタルジックに表現したりする要素も、大竹さんは現実をありのままに切り取り、表現されているところが心地よい作品です」

 

¥ 2,410 (Flying Books)

『LS LAURIE SIMMONS』 / ローリー・シモンズ

 

最後にご紹介いただいたのは、写真家であり現代アーティストでもあるアメリカの作家、ローリー・シモンズの1987年にパルコから出版された作品集。「おもちゃの人形を使ってあたかも風景写真のように撮った作品や、ラブドールをモデルにした作品など、彼女の表現は非常にユニークで、ほかの人が考えなかったアイデアを、柔軟に具現化しています。人形の家や、水中でのバレエなど、好奇心や妄想、遊び心が満ち溢れた作品は、まるで少女の夢想の中に迷い込んだかのような魅力があります」

 

¥ 9,500 (Flying Books)

 

 

 

 

 

ご紹介者
「SO BOOKS」 店主 小笠原郁夫さん

「女性写真家ということで、いわゆる“女性が撮る写真”というステレオタイプなイメージから離れていると思う3名の作家の写真集をセレクトいたしました」

『危険な毒花』 / 常盤とよ子

 

戦後女性写真家の草分けとされている常盤とよ子さん。1951年に東京家政学院を卒業後、通信社のアナウンサーとして働いていたが、後に夫になる写真家の奥村泰宏の影響でカメラを手に取った。「常盤さんはお父様が戦争で亡くした複雑な感情から、進駐軍を相手にする女性たちのドキュメンタリーを撮り始めました。そこから踏み入って、赤線地帯の女性たちや性病に苦しむ女性たちなども撮っています。本書の構成は、それらの写真と常盤さんの自叙伝が混じったフォト・ルポルタージュ。常盤さんが活動を始めた50年代はウーマンリブ運動などが起きる前ですから、その時代性を考えるとすごいことだなと思います」

 

¥21,600 (SO BOOKS)

『東大全共闘 われわれにとって東大闘争とは何か 撮影渡辺眸 編集東大全学助手共闘会議』/ 渡辺眸

 

1942年に東京に生まれ、明治大学を卒業し、60年代から時代のうねりを撮り続けた写真家である渡辺さん。68-69年に起こった東大全共闘の闘争をバリケードの内部から切り取ったこの写真集は、彼女の代表作の一つ。07年に新潮社から復刻版も出たが、こちらは69年に三一書房から発刊されたオリジナルだ。「同時期の闘争を撮っている男性写真家の作品と比べると、渡辺さんは視線が穏やかだと感じられ、どこか女性に対するシンパシーがあった上で撮られています。女性だからこそ撮れるシーンや被写体も登場しているかと思います」

 

¥32,400 (SO BOOKS)

『Slope Way, Inagi, Tokyo 13:00-15:00, October 13, 2009』 / 小松浩子

 

藤岡亜弥さんと共に、今年の『第43回木村伊兵衛写真賞』を同時受賞した写真家、小松浩子さん。彼女の写真集『Slope Way』には、2009年東京・稲城の郊外にある資材置き場で撮影された写真が掲載されている。「SO BOOKS」では通常版の他に、スペシャル・エディションも取り扱っている。「こちらは『Slope Way』に収録された100枚の図版からランダムに選ばれた10枚を、作家自らがバライタ紙に焼いてプリントし糸で綴じた特別仕様です。20部限定で、『SO BOOKS』のみで販売しています。彼女の写真はとてもニュートラルで、いわゆる女性らしさというコンテクストから逃れている点も特徴としてあるのかと思います」

 

¥108,000 (SO BOOKS)

 

 

今年の『木村伊兵衛写真賞』ノミネート作家は、なんと6名全員が女性であった。この事実は昨今の女性写真家の活躍を裏付けていると言っていいだろう。写真家について、ただ一様に性別で切り離して考えるのはナンセンスだが、それは写真を読み解くひとつの視点にはなり得るはず。ここに紹介された写真集は、女性性のみならずさまざまなコンテクストを内包している。多角的な目線を持って、それぞれの作品を堪能したい。

Flying Books

住所 : 東京都渋谷区道玄坂1-6-3 2F
開店時間 : 12:00-20:00 日曜-18:00
電話番号 : 03-3461-1254
WEB : flying-books.com

SO BOOKS

住所 : 東京都渋谷区上原1-47-5
開店時間 : 13:00-19:00 日月定休
電話番号 : 03-6416-8299
WEB : sobooks.jp

西村多美子「旅人 (Ryojin)」

会期 : 5月11日(金)〜6月16日(土)
アーティスト トーク: 5月12日(土) 16:00-17:30| ゲスト:北井一夫
会場 : ZEN FOTO GALLERY / 禅フォトギャラリー
住所 : 東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル208号室

 

 

Edit_Ko Ueoka

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