May 09, 2025
By THEM MAGAZINE
COMING UP Vol.01_03 『CHICAGO』by Mark Steinmetz

慈愛に満ちた眼差しが捉えた80年代後半のシカゴ
「ごく普通の人々が暮らす、ごく普通の風景」をモノクロフィルムで捉えるアメリカのフォトグラファー、マーク・シュタインメッツ。本書は、イリノイ州シカゴにある「ステファン・デイター・ギャラリー」で2025年2月7日から4月27日にかけて行われた同氏の初の個展に合わせて編集されたもので、シュタインメッツが1988年から1991年にかけて撮影した写真群を収録している。シカゴの独特な築建や多様な地区、エネルギーは、シュタインメッツにインスピレーションを与え、被写体の感情を切り取るようなポートレートが時代の魅力を写し出す。サンダルを調節する子ども、本を読む男性、バスの背もたれに寄りかかる女性、海辺でたそがれる男性、タバコに火をつける人といった“ごく普通の人々”の様子が、シュタインメッツの鋭い眼差しによって、アメリカの都市生活者のノスタルジアを掻き立てるように昇華されている。冒頭には、1991年から2011年までニューヨーク近代美術館(MoMA)で写真部門のチーフ・キュレーターを務めたピーター・ガラシによるエッセイを掲載。シュタインメッツの鋭くも慈愛に満ちた観察眼によって切り取られ、特別な存在のように写し出された「ごく普通の人々」のポートレートからは、優しくノスタルジックなイメージを受け取ることができる。¥14,300(twelvebooks)
マーク・シュタインメッツ
1961年アメリカ生まれ。1980年代半ばからフォトグラファーとして活動。アメリカ東南部の小さな街やパリの街角、イタリアのさまざまな都市などを被写体とし、シリーズ化している。1994年にグッゲンハイム・フェローシップを受賞。作品はニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館、シカゴ美術館、ロサンゼルス郡立美術館に収蔵。
Photography_TORU OSHIMA.
Text_NONOKA FUJIWARA(Righters).