May 23, 2025
By THEM MAGAZINE
COMING UP Vol.01_05 『LOTUS』by LITTLE SIMZ

内省と開放が導く、許しに満ちた物語
今最も注目されるUKアーティストの一人、リトル・シムズ。高い評価を得た連作アルバム『Sometimes I Might Be Introvert』(2021)と『NO THANK YOU』(2022)を経て、どのようなステージへと突入するのだろうか。6枚目となる今作『Lotus』には、そんな期待が寄せられる。アルバムの幕を開ける「Thief」と「Flood」は、威嚇するような勇ましさと不吉な鋭さを宿し、圧倒的なエネルギーを放つ。これが今のリトル・シムズなのか――その凄みに息を呑むが、3曲目「Young」では一転、楽天的なムードが漂う。この大胆なコントラストこそが『Lotus』の核だ。彼女はケンドリック・ラマーのように声色を自在に操り、楽曲ごとに異なるキャラクターを演じている。それは、英国のドラマ『トップボーイ』で俳優としてのキャリアをスタートさせたこととも無関係ではないだろう。兄弟の会話劇「Blood」や、サンファを迎えた楽曲にも、ケンドリック・ラマーの『Mr. Morale & The Big Steppers』を想起させる要素も感じられる。本人は本作を「日記のようなアルバム」と語り、パーソナルで率直な表現が鍵となり、制作前には深い不安や落ち込みを経験したことも明かしている。ボサノヴァ、ソウル、サンバと、さまざまな音が交錯するが、通底するのは“許容”だ。それは他者へのものでもあり、自分自身へのものでもある。音楽は彼女にとってセラピーであったが、聴き手にはポジティヴなフィーリングとして届く。

リトル・シムズ 1994年、ロンドン生まれのラッパー、ソングライター。2015年にアルバム『A Curious Tale of Trials + Persons』でデビュー。ロンドンの「サウスバンク・センター」が毎年開催する音楽イベント「メルトダウン」の2025年度キュレーターも務めている。
【リリース情報】
ARTIST リトル・シムズ
RELEASE DATE 2025年6月6日
LABEL Awal / Beat Records
URL https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14743
Text_KO UROKA.