May 08, 2026
By THEM MAGAZINE
COMING UP Vol.07_03 『LUIGI GHIRRI FELICITÀ』by ALESSIO BOLZONI, LUCA GUADAGNINO
ルイジ・ギッリから読み解く“幸福”
イタリアのカラー写真を代表するフォトグラファー、ルイジ・ギッリ(1943〜1992年)。測量技師から写真家に転身し、49歳で早逝した彼が本格的に活動した期間はおよそ20年にすぎない。決して長いとはいえない活動の中で生み出された作品は世界中の人々を魅了し続け、これまで各地で開催された写真展は100をゆうに超えるだろう。
数多くの写真が繰り返し展示されてきた一方で、本書に収録された写真の多くは、これまで展示も出版もされたことがない。没後三十数年経った今、彼のアーカイヴが新たな解釈の方向を示しているのだ。
本書は、ファッションフォトを中心にロンドンで活躍するイタリア人写真家アレッシオ・ボルゾーニと、『君の名前で僕を呼んで』(2017年)で知られるイタリア人映画監督ルカ・グァダニーノによってキュレーションされた一冊。『Felicità(幸福)』というテーマからギッリの作品世界が読み解かれ、「幸福」の探求は浪費や見栄ではなく、注意深さやゆったりとした時間、好奇心から導き出される。そしてそれは、視線に宿る静かな楽観として捉え直された。ボルゾーニとグァダニーノのタッグは、ギッリの作品の物語性とリズム、鋭い感性を際立たせ、彼の創作が現代において切実な意義を持つことを浮かび上がらせる。
ともに収録されたギッリによる3つのエッセイは、内省的な場として機能し、写真群への理解を静かに導く。そのひとつ『The Open Work』でギッリは、「写真とは思考と視線の壮大な冒険」「世界を撮影することは、同時にそれを理解する手段」「写真は、あらゆる批評的・知的な説明を超え、それ自体が持つあらゆる否定的な側面をも超えて、私たちひとりひとりの内に宿るこの“無限”への渇望を膨らませるための、素晴らしい視覚言語である」と記している。
写真というメディアを用いた芸術家、ルイジ・ギッリ。本書にあるのは、見過ごされてきた光の集積と、静かに息づく幸福の気配である。
ルイジ・ギッリ 1943年イタリア生まれ、1992年没。写真家、芸術家。20世紀のイタリアを代表する重要な写真家のひとり。測量技師、グラフィックデザイナーとしての経験を経て、30歳で写真家としてのキャリアをスタート。活動開始後まもなく国際的な注目を集める。1978年、自身の写真を集めた初の写真集『コダクローム』を出版。
Photography_TORU OSHIMA.
Text_NONOKA FUJIWARA(Righters).