Them magazine

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MUSIC
May 29, 2026
By THEM MAGAZINE

COMING UP Vol.07_06 『SINGING』by GIA MARGARET

沈黙のあとに響く、やわらかな再生

シカゴを拠点に活動するシンガーソングライター、ジア・マーガレットが、ニューアルバム『Singing』を4月24日に〈Jagjaguwar〉からリリースする。2018年の『There’s Always Glimmer』以来、じつに8年ぶりとなるヴォーカル・アルバムだ。デビュー後、彼女は声帯を痛め、長いあいだ思うように歌えない時期を過ごした。本人がそれを「エゴの死」と振り返るように、それはシンガーとしての自己認識を大きく揺さぶる経験だったはずだ。しかしその喪失は、表現の終わりではなかった。歌を手放した時間のなかで、彼女はアンビエントやインストゥルメンタルの方法論を深め、『Mia Gargaret』『Romantic Piano』といった作品を通して、沈黙や余白、音の質感そのものに耳を澄ませる感覚を鋭くしていった。そうした歳月を経て生まれた『Singing』は、単なる“歌への復帰作”ではない。アンビエントの繊細な構築力を内包したまま、ポップ・ソングの形式へと戻ってきた一枚である。先行曲「Everyone Around Me Dancing」では、祝祭の中心ではなく、その縁から世界を見つめるような孤独と安堵がにじみ、「Good Friend」では90年代後半を思わせるノスタルジアのなかに、グレゴリオ聖歌やスクラッチノイズまでが自然に溶け込む。ボコーダーをはじめとする加工された声もまた、本作では隠すためではなく、自分の声をあらためて受け入れるための手段として機能している。過去の自分を弔いながら、未来の自分へと手を伸ばすように歌われた『Singing』は、喪失の先にしかたどり着けない静かな強さを宿した、親密な再生のアルバムだ。

【リリース情報】

シンギング

ARTIST ジア・マーガレット
RELEASE DATE 2026年4月24日
LABEL Big Nothing / Ultra Vybe
URL bignothing.net/giamargaret.html

GIA MARGARET

ジア・マーガレット シカゴを拠点に活動するシンガーソングライター/マルチインストゥルメンタリスト。フォーク、アンビエント、エレクトロニカを横断する、静謐で親密な音楽性を持つ。2018年のデビューアルバム『There’s Always Glimmer』で注目を集め、その後は声帯の不調を経て、アンビエントやインストゥルメンタルへ表現領域を拡張。『Mia Gargaret』『Romantic Piano』を経て、8年ぶりのヴォーカル・アルバム『Singing』を発表。

 

Text_KO UEOKA.

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