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ART
Jan 19, 2022
By AccountRighters

KIYOHIDE HORI | RED

自己を映し出す、赤いワンピースの女

1月19日より、銀座の「シャネル・ネクサス・ホール」にて、「RED 堀 清英 写真展」が開催される。

 

高校生のときに初めてアレン・ギンズバーグの詩集を読んだという堀清英は、ギンズバーグが当時の若者たちの怒りを代弁するためにうたった自由を、現代の日本で堀が感じた違和感や恐怖とをリンクさせ、写真を通じて表現しようとした。

 

大学在学中から日本とアメリカを行き来し、ウィンストン・チャーチルをはじめとした20世紀の偉人たちのポートレートを撮り続けたユーサフ・カーシュに自身のポートレイトを依頼したことをきっかけに、堀は写真の世界に足を踏み入れることとなる。

 

1991年よりニューヨークに居を移してからは国際写真センターに通い、アシスタントやプリンターを経験しながら、自身の作品を撮り続けていく。ギンズバーグの詩の朗読会や瞑想会に足繁く通い、本人との交流を深め、彼のポートレートを撮り始めた。97年に帰国してからは、主題であるポートレートを通じて広告や雑誌など、さまざまなフィールドで数多くの有名人やミュージシャンの内面を映し出してきた。

 

 

©Kiyohide Hori

 

震災後、ギンズバーグの『HOWL』を再読しそのアンサーとして、人間性の原点への回帰を目指した『re;HOWL』を発表。ニュージャージー州の砲台跡に日本の風景写真、千葉の戦跡にはアメリカの風景写真を置いて撮り、現代社会にアイロニカルな視線を投げかけた。

 

他者や社会に向けたまなざしは、自分自身を向いた。2010年の『いぬまるけ Dogs…anywhere』では、動かない犬(の形をしたドアストッパー)に当時の自己を投影。そこには堀の作品にたびたび登場してきた黒い山高帽や服など、光を拒絶し、無個性でありながらも逆に強い個性を放つ黒が写しとられている。

 

©Kiyohide Hori

 

そしてこの展覧会で初公開となる表題作の「RED」もまた、 “自分”とは何者か?という問いの答えを、色を纏った被写体に委ねることで導き出そうとする。自分自身を重ね合わせた赤いワンピース姿の女性を、公園に残る古い遊具やゴミ処理場、科学館といったさまざまな場所で撮影している。

 

そして3部構成となる展示ではこの「RED」のほか、シュルレアリスムからの影響を色濃く反映した1990年代以降の作品や、創作活動の原点ともいえる手製のフォトブックを公開。「自身の写真作品はサイコロの眼のように偶発的に導かれたピクチャーポエムである」と語る堀の、長く続く自己探究の軌跡を辿ることができる。

 

一説によると、夢に赤い服の女性が出てきたとき、綺麗な赤であればそれは自分の気持ちが安らいでいて、幸運が訪れる前触れなのだそうだ。堀が自らを投影したワンピースは、どのような赤として映し出されているのだろうか?その鮮やかさを、その目で確かめてほしい。

©CHANEL
RED 堀 清英 写真展

TERM 2022年1月19日~2月20日
PLACE シャネル・ネクサス・ホール
ADDRESS東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング
OPENING HOURS 11:00-19:00
URL nexushall.chanel.com/program/2022/red

堀 清英

ほり きよひで 愛知県出身。明治大学在学中の1980年代、デザイン事務所でのアルバイトを機に写真に興味を持つ。1991年よりニューヨークのICP(国際写真センター)にて学び、作品制作を開始。1997年に帰国後、ファッション誌やカルチャー誌で活躍。ミュージシャンのCDジャケットやライブ写真も手がける。現在は自身の作品制作を基盤に、人物写真を中心に活動している。

 

Text_JUNICHI ARAI.

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