Jan 26, 2022
By THEM MAGAZINE
TOKUKO USHIODA | My Husband
夫の記録、子の記録、自分の記憶
以前間借りしていた西洋館の大家が引っ越しするーーほったらかしだった生活用品や雑貨の山をかき分けて整理整頓を進めると、中身の入った印画紙の紙箱を見つけた。開けてみると、40年前のネガやプリントがぎっしり詰まっている。これが、潮田登久子の写真展「マイハズバンド」が開催に至るきっかけだ。
撮影されたのは、観察的な眼差しで親族や友人の冷蔵庫を撮った代表作『冷蔵庫／ICE BOX』と同時期にあたる初期。子供が生まれ、結婚し、家事に追われて自身の時間が持てなくなった時期でもあり、アーティストとしての自分により敏感であっただろう。夫である写真家の島尾伸三にレンズを向ける姿勢にはどこか精神的距離があり、まだ赤ん坊だった子供のマホも写されている（島尾伸三の作品『まほちゃん』と比較するのも面白い。同じ生活空間で同じ自分の子供を撮っても、ここまで違うアウトプットになるのかと驚愕する）。
箱にしまわれ忘れ去られていたということは、当時の潮田は作品として発表することを考えていなかったのかもしれない。しかし図らずもタイムカプセルとなって、こうして日の目を見ることになった本作は、時を経て何が見いだされ、何を訴えてくるのだろうか？ 2月にはトーチプレスより同名の写真集も発売され、写真家・長島有里枝や写真評論家・光田ゆりが原稿を寄せる。こちらも注目したい。
TERM 2022年1月26日~3月12日
PLACE PGI
ADDRESS東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
OPENING HOURS 11:00-18:00
URL pgi.ac
1940年、東京都生まれ。63年桑沢デザイン研究所写真専攻卒業。66年から78年まで桑沢デザイン研究所および東京造形大学講師を務める。75年ころからフリーランスの写真家としての活動を開始。代表作にさまざまな家庭の冷蔵庫を撮影した『冷蔵庫／ICE BOX』がある。2018年に土門拳賞、日本写真協会作家賞、東川賞国内作家賞受賞。
©Tokuko Ushioda / Courtesy of PGI
Text_KO UEOKA.
