Sep 16, 2022
By THEM MAGAZINE
NORI TAKABAYASHI | THE TRANSIENT BEAUTY : GLOBULAR CLUSTER
退廃に内在するエネルギー
2020年、パリから日本に帰国したノリ タカバヤシ氏は、海がほど近い千葉県に居をかまえた。ある日、近所の浜辺を散策中、打ち上げられている漂流物に出会う。カラフルな子どものおもちゃのパーツ、ナットなどの工業的なもの、何らかの熱によって溶けた業務用のファイルなど、プラスチックや金属ゴミを中心にさまざまなものが打ち上げられていた。一般的にはゴミとして扱われるであろうそれらを目にしたタカバヤシ氏は、直感的に美しいと感じ、創作意欲が湧き上がったのだ。それからというもの、多忙な日々の合間をぬってこまめに漂流物を収集、マスクやアート作品の制作が始まった。今や、自宅にはたくさんの戦利品とも呼ぶべき収集の数々が保管されている。新シリーズとなる巨大なランプシェードは、トランクホテルでの展示のために制作された。波によって削られ、潮によって朽ちたプラスチックは、素材や部位によって光の透過度が違うため、灯りをともせばまったく違う生き物のように見える。中には見慣れたモチーフがあるかもしれない。だがしかし、迂闊に見ていると取り込まれそうな引力を感じるだろう。ノスタルジーや美しさ、そして少しの畏怖の念を抱かせるパワーを放っているからだ。かつて誰かに大切に使われていたかもしれないゴミたち。決して穏やかではない海を旅し、ようやく浜まで辿りついたその月日に人生を重ねてしまう。
【展覧会情報】
『The Transient Beauty 球状星団』
会期：2022年8月11日〜11月30日（終了日未定）
会場：東京都渋谷区神宮前5-31
TRUNK(HOTEL)メインラウンジTRUNK(LOUNGE）
開館時間： 9:00〜23:00
【問い合わせ先】
trunk-hotel.com
TEL.03-5766-3210
ノリ タカバヤシ ヘアスタイリスト、プロップアーティスト。2009年に渡仏。2020年に帰国するまでの11年の間、パリで個展開催、ヘアスタイリストとしてもエディトリアルや広告などで活躍する。日本古来の髪の結びを表現した「MUSUBI」や、海の漂流物に再解釈を加えた「The Transient Beauty」それぞれのシリーズで作品を展開している。Them magazine39号の「PRESENCE OF THERE」でもプロップアートを披露してくれた。Instagram @noritakabayashi/@the_transient_beauty
Text_CHIHIRO YATA(Righters).