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MOVIE
Apr 23, 2021
By MAMI UKON

セルジュ・ゲンズブールの 『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』が待望のリバイバル!

フランスきってのスタイルアイコン、セルジュ・ゲンズブールの永遠の旅立ちから早くも30年。生前、彼が敬愛していたといわれる伝説的作家、ボリス・ヴィアンに捧げたといわれる映画『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』のリバイバル上映が決定。529日より4K完全無修正版でスクリーンによみがえる。フレンチ・ポップスの作詞・作曲家、歌手、俳優、画家など幅広い分野でその名を轟かせたゲンズブール 。ジェーン・バーキン、ブリジッド・バルドー、ヴァネッサ・パラディなど数々のコケットリーな美女たちを虜にし、世界にセンセーショナルな話題を提供し続けた永遠のバッドボーイ、ゲンズブールの初監督作品だ。

1976年に映画化された『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』のインスピレーション源になっているのは、1969年にセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンがデュエットして大ヒットとなった曲「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」。その楽曲から放たれるセンシャルかつセンセーショナルな内容は世界中で大論争を巻き起こした。当時のローマ法皇の逆鱗に触れたあげく、ヨーロッパの大半の国で放送禁止に追い込まれるという大事件に発展。そんな逆風をよそにイギリスでは外国語楽曲として初のシングル・チャート1位を記録(やはり、パンクの国!)。愛、アムールの国フランスや日本でもメガヒットを達成した。1986年までに少なくとも400万枚のセールスという金字塔を打ち立てた不朽の名曲。

 

劇中では絶妙なタイミングでその楽曲のインストゥルメンタル版が流れてくるのが印象的。その耳に心地よいサウンドにより、バイオレンスシーンの衝撃やロードムービー的な空気感がスタイリッシュにチューニングされている。そんな風にいたるところに彼の美意識が見え隠れするオフビートなラブストーリー。マルチな才能を持つゲンズブールの世界観が凝縮された作品は、一見の価値ありだ。

Story

舞台は、アメリカの田舎を彷彿とさせながらも、どことはわからない文明社会のゴミ捨て場。トラックでゴミ回収をしながら生計を立てている精悍な顔立ちの男性クラスキー(ジョー・ダレッサンドロ)とあどけなさが残る青年パドヴァン(ユーグ・ケステル)。2人は、仕事仲間以上の固い絆で結ばれていた。ある日ガソリンスタンドに立ち寄った彼らは、併設されたダイナーで、ショートカットが似合うスキニーでボーイッシュな女の子、ジョニー(ジェーン・バーキン)と出会う。彼女は、パワハラ気質で荒々しいその店の主人を疎ましく思い、虚無感に包まれながらも仕方がなく働いていた。その夜、クラスキーとジョニーはダンスパーティで意気投合。しかし、ほのかに恋心を抱いていた男らしいクラスキーが、実はゲイだったことに気づく。それでも二人は不思議なシンパシーを抱き続け、逢瀬を重ねるが・・・。マイノリティが虐げられ、暴力がはびこる世の中。そして、そこに生きる愛なしには生きることができない悲哀を背負った人々。そんな彼らの恋愛模様が、ゲンズブール監督ならではの皮肉とユーモアを交えながら映し出される。

 

ジョニーを演じたのは当時、ゲンズブールのパートナーだったジェーン・バーキン。ボーイッシュなショートヘアにマッチしたデニムとタンクトップのスタイルやギンガム・チェックのワンピースなど、フレンチシックを体現するバーキンの着こなしは、今見ても色褪せないノンシャランな定番スタイル。一方、クラスキーを演じたジョー・ダレッサンドロは、ポップアート界の旗手アンディ・ウォーホルに見出されたイケメンだ。知的で寡黙ながら心の内に激しさを秘めた男性を見事に演じている。最近、ゴシップメディアを賑わしているフランスの名優、ジェラール・ドパルデューが カメオ出演しているところもフランス映画ファンの興味をそそるにちがいない。

公開情報

『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ 4K完全無修正版』
5月29日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
監督・脚本・音楽:セルジュ・ゲンズブール
出演:ジェーン・バーキン、ジョー・ダレッサンドロ、ユーグ・ケステル、ジェラール・ドパルデュ―、ミシェル・ブラン
配給:セテラ・インターナショナル
フランス/1975→2019/90分/カラー/フランス語/R18+/原題:Je t`aime moi non plus
日本語字幕:寺尾次郎
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Text_Mami Ukon

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