Aug 19, 2016
By TORU UKON (Editor in Chief)
ファッション雑誌講座 第5回「なぜ全身同じブランドでコーディネイトするのか」

僕が『POPEYE』誌で仕事しているころ、こんな声をよく耳にしました。
「全身、ワンブランドでコーディネイトしてるやつなんている?」
確かに、当時はいませんでした。
それでも、ファッション雑誌はワンブランドで全身コーディネイトした写真を多く掲載し、
それに対する批判も多く寄せられた記憶があります。
「そんなやつはいない。それは読者を無視した、メゾン中心の紙面作りなんじゃねーの?」
その声は今も僕の耳に届きます。
質問:なぜ全身同じブランドでコーディネイトするのか?
確かに、今も『Them magazine』では、ワンブランドでのコーディネイトをしています。
答え:そのほうが伝わりやすいから。
全身ワンブランドのコーディネイトには、確かにリースしてくれるメゾンの意思もあります。
でも、それだけではありません。
例えば、来年春夏の《バレンシアガ》。あのスーツに他のメゾンの服をコーディネイトしたら、どうなりますか?
《ラフ シモンズ》や《グッチ》など、現在はひとつのメゾンのルックが完成し過ぎており、そこに他のメゾンのアイテムが
入る余地はない、と考えます。
でも、それって、スタイリストやファッション・ディレクターの怠慢、もしくは才能の否定なのでは?
そういう声があるのも事実です。
しかし、すべてがそうではありません。
スタイリストの中にも、全身ワンブランドでコーディネイトしなければならないことに不満を持っている人も少なくないし、
例えば、古着とコーディネイトしたほうが良い、と判断した場合は、メゾンの了解をとって、ミックスコーディネイトすることもあります。
そして、今では、リアルにストリートでも全身ワンブランドでコーディネイトしている人も少なくなってきました。
このことが、ファッションのクリエイティビティの低下につながる、とさらに批判する人もいます。
それは考えすぎではないでしょうか。
お金がない若い人々は、必然的に、様々なブランドや古着などをミックスしています。
メゾン側も、靴やアクセサリーまでサンプルを用意できなく、他ブランドとのミックスを寛容しているブランドもあります。
全身、ワンブランドでコーディネイトしているやつなんていない。
そんな時代ではないし、そこにこだわる理由は今、まったくないと思います。
ちなみに、コーディネイトを、コーデ。
アクセサリーを、アクセ。
そう呼ぶのは、個人的に嫌いです。
理由は、「メリクリ」とか「あけおめ」みたいに、頭悪そうで、ダサいと思うからです。