Them magazine

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LIFESTYLE
Aug 24, 2016
By TORU UKON (Editor in Chief)

あれも愛、これも愛。Vol.02 「どうしてトイレのドア閉めるの?」

あるカップルの話。

 

二人が一緒に暮らすようになって、一ヶ月半ほどが過ぎたころ。

 

トイレから彼女の声が聞こえた。

 

「ねぇ、今晩何食べようか?」

 

リビングにいる彼に聞こえるように、ちょっと大きな声だ。

 

「うーん、そうだね……」と言ったきり、彼は今晩の食事のことよりも、
別のことが気になってしまい、その後の言葉が出てこなかった。

 

「どうしてトイレのドアを開けたまま、会話しているんだ? 
そんなことしたら……」
彼が思ったことが、直後に起こった。

 

トイレから、彼女の放尿の音が聞こえてきたのだ。

 

「昨日、中華だったしねぇ。焼き鳥でも行く?」

 

彼女は、放尿の音を彼に聞かれたことなどまったく気にもせず、
今晩の食事のことを話し続ける。

 

彼は驚いた。
今まで、家族はもちろん、付き合ってきたどんな女性だって、放尿の音など聞いたことがない。
というか、普通、トイレに入る時はドアをしっかり締めて、さらに鍵をかけるのが当たり前だろう。

 

なのに、彼女は⁉︎ 

トイレから出てきた彼女は、当たり前のように今晩の食事の話を続けた。

 

今日はたまたまだったのか、と彼は思ったが、その後も彼女はトイレのドアを開けたまま、
普通の会話をする。
さすがに、大きいほうの時は閉めるのだが。

 

一度、彼がトイレに立った時、今度は彼女がキッチンから大きな声で話しかけてきた。
彼はトイレのドアを閉めていて、彼女の言葉がよく聞こえなかったので、黙って用を足した。
トイレの鍵を外すやいなや、いきなりものすごい勢いでドアが開いた。 
彼女が不機嫌そうに立っていた。

「どうしてトイレのドアを閉めるの?」
「いや、どうしてって?」
「恋人同士でしょう? 寂しいじゃない!」
「え? 寂しい?」
「大きいほうは臭いから閉めてもいいけど、おしっこの時は閉めないでよ。話できないでしょ!」
「でも、おしっこの音が聞こえるから……」 
「聞こえたっていいじゃない。私たち付き合ってるんだから」
「おしっこの音、聞きたいの?」
「聞きたいとかいうよりも、トイレに入ってしまって会話ができないのが、嫌なの。 
逆に、同棲しているのだから、おしっこの音を聞かれたくないっていうほうが変!」

 

変なのか? 変じゃないのか?
どう、思います。皆さん。

 

8月24日発売の『Them magazine』。 特集テーマは「LOVE」です。

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