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FASHION
Apr 14, 2023
By TORU UKON (Editor in Chief)

ないものねだりの子守唄 Vol.06 CONVERSE Addict

古くて新しい、これぞヴィンテージのアップデイト成功例

《コンバース》の「アディクト」が好きだ。

昔のスニーカーを、今の履き心地にしてくれる、その姿勢が大好きだ。

「アディクト」の新しいリリースがあると必ずチェックし、なんとか購入しようとするが、毎回競争率が高く、入手はかなり困難だ。

4月10日「チャック・テーラー キャンバス オックスフォード」がリリースされたので、即チェックしたが、何度も「SOLD OUT」を喰らいながら、やっと手に入れた。

このモデルが“アディクト化”されるのをずっと待っていた。

 

2023年春のリリースは、グリーンもあったが、昔ながらの生成りを選択。¥18,700。

夏が近づくと、キャンバスのスニーカーが履きたくなる。

自分のスタイルがトラッドなので、キャンバスのスニーカーは大体マッチするのだが、近年、キャンバスのスニーカー自体、あまり多くは存在しない。

大好きだった《トップサイダー》のキャンバスオックスフォードは1980年代を最後に“ピーナツの踵”は消え、三軒茶屋の「SEPTIS」の玉木朗さんが渾身の復活を完成させたが、それも一瞬で終わってしまった(手元にはなんとかストックが1足あるが、勿体なくて履けない)。

となると、《コンバース》のオールスター頼みとなるのだが、これが1990年以降、どうもイマイチ“コスパの良い無難”なスニーカー的ポジションに落ち着いてしまい、かつての輝きを失ってしまった。それもあのソールが原因だ。ハイテクスニーカーが続々登場している中で、1950年代から変わらない硬いクッション性の悪いソールじゃ、大人は我慢できなくなってしまったのだ。

2016年にリリースされたジャック・パーセル。思わず二足買い

「アディクト」は《コンバース》がブランド誕生100年を記念して、2008年にリリースしたハイスペックをもったクラシカルなスニーカーである。

外面は昔の面影そのままに(これも結構こだわりがあって、マニアを満足させるディテールを誇る)、カップインソールでクッション性を改良。圧倒的に履きやすくなった。アウトソールも《ヴィヴラム》に変更。スリップしずらく、ソールの減りも改善された。2022年にはヒール構造にラバースポンジを採用することで、さらに進化し、足入れした際の柔軟性がアップ。その分多少重みは増したが、これならコンクリ床のスタジオで長時間過ごしても足の裏が痛くならない。ヴィンテージが機能性だけを良化し、今風に生まれ変わったのだ。オールドファンにとって、こんな嬉しいことはない。ヴィンテージと呼ばれる名品の半分でも、こんな取り組みをしてもらえたら……。1960年代の《アルファロメオ》が、外装はそのままで、エンジンや足回りだけが今風になったら、バカ売れするんじゃないだろうか。間違いなく、俺は買う。

 

これまで、自分が履いた「アディクト」の中で、最も活躍したのが、2016年にリリースされた「ジャック・パーセル」のキャンバスだ。原宿の「BEAMS PLUS」で目にして、即購入。「アディクト」の存在は知っていたけど、ここまで履きやすとは! あまりに感動して、履いた翌日に再び「BEAMS PLUS」でもう一足追加購入した。「BEAMS PLUS」はトラッドスタイルのお客さんが多いので、「アディクト」のストックも豊富だった。ひょっとしたら、4月に発売された「チャック・テーラー」も在庫があるかも?

 

2017年のホリデーにリリースされたチャック・テーラーのオールホワイト。ここまでシンプルなスニーカーが他にあろうか

ジャック・パーセルの二足買いから間もなく、やはりこちらも「BEAMS PLUS」で見つけたチャック・テーラーのキャンバス オックスフォード。なんとオールホワイト。このモデルのオリジナルを見たことはないが、おそらく《コンバース》のアーカイブの中には存在したのだろう。よくぞ復刻してくれました! とにかくシンプルなスニーカーが好きなオールドモデル・ファンにはたまらないデザイン。しかも、何度も言うようだが、「アディクト」。履き心地は、昔とは比べ物になりません。こっちも二足買いしたかったけど、もう最後の一足だった。

「アディクト」では、チャック・テーラーか、ジャック・パーセルのどちらかがリリースされる。圧倒的にチャック・テーラーの頻度が多い。どちらが好きかで、ファンが対立することはないだろう。ジャック・パーセルが好きな人はチャック・テーラーも好きなんだ、と思う。自分もそうである。《コンバース》もそのことをわかっているのか、この二つが同時にリリースされることはない。そろそろジャック・パーセルの「アディクト」が欲しいな、と思うころに(前の「アディクト」がくたびれたころに)リリースされるに違いない。

チャック・テーラーのブラックキャンバス オックスフォード。2020年のリリースで購入。

「アディクト」ではキャンバスだけではなくレザーもリリースされる。自分は2008年、最初の「アディクト」としてリリースされたチャック・テーラーのブラックレザー(ハイカット)を購入した。その履き心地の良さにヘビロテしてしいまい、今は存在しない。

また、キャンバスでもカラーバリエーションが用意される。自分は2020年のリリースのチャック・テーラーのブラックも購入。夏はどうしても白をチョイスしがちなので、黒の出番は自ずと少ない。街では、《アットラスト》を着ているような人が、ブラックキャンバスのチャック・テーラーを履いているをよく見かける。2023年4月では、グリーンも用意され、こちらも人気だった。過去にはピンクやサックスブルーなどもリリースされた。この辺、フィフティーズ・ファンの影響もあるのだろうか。

なぜかラバーキャップの部分だけが汚れているチャック・テーラー ハイカット。茶色の上にサイドジップとかなりマニアック

すっかり忘れていたが、茶色のチャック・テーラー ハイカットのブラウンカラーも購入していた。サイドジップというクラシックファンには邪道なデザイン。好きなブラウンカラーということで入手したのだが、あまり稼働していない。長い年月、眠っていた。このブログで思い出して、久しぶりに出してみた。邪道だが、ハイカットでは紐を結ぶ手間が省けるので、サイドジップも“アリ”かもしれない。

若いころはハイカットをよく履いたが、年取ると、かがんで紐を締めるのが億劫となり、ついローカットを選びがち。ハイとロー、好みの分かれるところだが、パンツとの関係性もある。どちらが人気なのか、今度《コンバース》に聞いてみよう。

 

経年変化でトウキャップは異常に変色してしまった「N.ハリ」モデル。当時は完璧と言える復刻だった

「アディクト」が生まれるきっかけとなったと、個人的に信じているのが《N.ハリウッド》が《コンバース》に別注したチャック・テーラーだ。おそらく2000年代前半にリリースされたと思う。ヴィンテージショップのバイヤーだった尾花大輔氏が、大好きだったチャック・テーラーのキャンバス ハイカットの3星ヒールパッチモデルを復刻させ、これが大ヒットした。尾花氏は、当時、チャック・テーラーのヴィンテージが枯渇し、価格が上昇していたことを憂いてこの復刻に踏み切ったのだ。小さいトゥキャップ。細いウィズ、サイドステッチ、細い紐、もちろん黒いヒールパッチ。しかもライナーにはディアスキンが貼られていた! それまでの復刻を嘲笑うような、完璧な出来栄えを誇った「N.ハリのチャック・テーラー」。これに《コンバース》が刺激されないわけがない。それを裏付けるように、「アディクト」では何度か、《N.ハリウッド》とコラボしている。私もネイビースエードのジャック・パーセルを購入したが、ウィズが広く、イマイチだったため、足場の悪い撮影に使って潰してしまった。

ちなみに、上の写真の「N.ハリのチャック・テーラー」は購入時にトゥキャップ周りのラバー部分が真っ白で、ヴィンテージ感をつけるために、丸二日、日差しの下に晒したら、変色して、ヴィンテージ感が増した。我ながらよくできた。しかし、その後の経年変化により、もはや異常な黄ばみとなり、ヴィンテージを通り越してしまった、と後悔している。

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