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CULTURE
Apr 24, 2023
By TORU UKON (Editor in Chief)

ないものねだりの子守唄 Vol.07 泣けるCM女優、吉田桂子

シリーズで観て泣きたい吉田桂子のCM

涙もろい。

年をとってさらに涙腺が緩くなった。

映画やドラマでも、簡単に泣いてしまう。

NHKの朝ドラでもよく泣いているので、家人から「朝から泣いて、疲れない?」と呆れられている。

疲れない。いいや、むしろ気持ち良いくらいだ。

早い話が泣きたいのだ。

感動して泣くのは、とても爽快なのだから。

本当は朝ドラ並みに、日常的に泣きたいのだが、なかなか泣かせてくれる作品には出会えない。

泣きたいとはいえ、そう簡単に泣ける作品があるわけでもない。残念ながら。

しかし、かつて、毎週泣いていた時があった。

それは決まった番組に内で流れるテレビCMのおかげだった。

それは、大学生になって上京したばかりの娘と、地方で娘を案じる父との電話のやりとり。(今はなき)WILCOMと言う携帯電話会社のCMだ。

2005年から約1年間、確かTBSの日曜朝によく流れていた。

とにかく、娘役の吉田桂子の頼りなさが、最高に巧い。一生懸命に生きていこうとする彼女に、都会は冷たい。馴染めない。そんな生活の中で、唯一の救いは田舎の父からの電話。時にはウザいのだけれど、やっぱり優しい。無償の愛に満ちている。

吉田桂子がお堀端の坂の上で父の電話を受ける。

「お父さん、しょっちゅうかけてこなくてもいいよ。私、元気だから」

ここで一気に涙腺崩壊。父の「元気か?」が心に響く。

何度観ても、泣ける。気持ちよく、泣ける。演出がよほど上手なのだろう。

吉田の声がどこまでも愛おしく、悲しく切ない。

こんなCMが定期的に観られるなんて、幸せだ。

と思っていたら、これが終わり新しいCMが登場した。

 

かつてはファッション雑誌のモデルをしていた吉田桂子。その後女優に転身。個人的にはもっともっと出演作を見たかった。

次のCMは長編。

スポンサーはリクルート。2007年から流れたリクナビ「山田悠子の就職活動」というシリーズだ。

そこで吉田桂子は、就活に奮闘する女子大生をコミカルに演じる。彼女の就活をモニターで見ながら、応援するサポーターが暖かい。

後編は一転、涙と感動のエンディングへ。

こちらも吉田の演じる山田悠子の「ありがとうございます」で感涙。

CMにしては涙と笑いの感動巨編。

おそらくWILCOMのCMがリクルートのこのCMに繋がったか、はたまた演出家が同じ人か。吉田桂子のポンコツぶりと、純粋さ、健気さがが一層引き出されている。

当時、このCMに励まされた大学生は多かったのではないだろうか。

ただ、このCMは当時、秋の就活時期だけと言うショートスパンでのオンエアだったので、観たことがない人も多かっただろう。

吉田桂子という、平凡な女子大生の4年間が、見事にこの2本のCMで語られていた。フィクションとは思えないほどに。

現在は芸名もKeikoとし、北海道に活動の拠点を移しているそうだ。ローカルCMにも出演中。ドンクエンタープライズのHPから

それから10年以上が経った。

吉田桂子は一般人と結婚、今は北海道で暮らしている。CM出演は続いているようで、未確認だが、実の娘と思われる赤ちゃんとの共演した映像もTikTokに上がっていた。

もっと、彼女の泣けるCMを観たかったと思っていたが、なんと2018年、WILCOM社を統合したY!mobile社が母親となった吉田桂子を、今度はおばあちゃんと孫を繋げる役で登場させていた。

「いつまでも、いつまでも話そう〜母娘編〜」だ。ここでも吉田のあの愛おしく切ない声は健在だった。

こちらのCMはなかなか観れないのだが、今回の原稿を書くにあたって、海外のサイトでそのCMを見つけることができた。

WILCOMの続編とも言えるこのストーリーも泣ける。

あのポンコツ女子大生も、しっかりした母親になったんだなぁ、と感慨深く観た。

吉田桂子の泣きの魅力は時を超えて人々の心に刻まれていることを改めて知った。泣きの演技をやらせたら、吉田桂子は天下一品。それを認めている人は少なくないのだ。

もっともっと、彼女の泣きのCMを観たい。もっともっと、吉田桂子で泣きたい。

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