Aug 22, 2016
By TORU UKON (Editor in Chief)
ファッション雑誌講座 第7回 「なぜストリートスナップなのか」
今やほとんどのファッション雑誌にはストリートスナップがあります。
自分も高校生の頃は『メンズクラブ』誌の「街のアイビーリーガー」が大好きでした。
『Them magazine』でもストリートスナップを掲載することがありますが、他誌よりは少ないかもしれません。
質問:なぜストリートスナップを掲載するのでしょう
確かに、ストリートスナップを掲載すると売り上げがアップする、と言われています。
「販売の草の根活動」とも呼ばれ、全国規模のストリートスナップは、そこに写真が掲載された本人と、その周辺の人々が本を買うから、通常よりも購読者が増える。それは僕がアシスタントの頃から雑誌業界の定説のように言われていました。
ただ、本当は別の理由があったのです。
答え:プレスの貸し出しが終了するから
そうなんです。ファッションストーリーを撮影してページを作りたくとも、メゾンのサンプル・リースが終了してしまい、撮影ができなくなるからなんです。
通常、メゾン(ブランド)では、シーズン前に撮影用のサンプルを用意します。
秋冬コレクションでしたら、7月にはほとんどのメゾンでサンプルが揃っている状態です。
しかし、10月に入ると、サンプルはなくなります。サンプルセールなどで売ってしまうからです。
各メゾンでは、本国からサンプルを購入しています。雑誌撮影のハイシーズンが終わったら、
そのサンプルはお役目終了。
少しでもお金に代えて、次のシーズンのサンプルを購入したほうが賢明ということになります。
撮影する洋服がなければ、他のページを作るしかありません。
そこで、かつて頭のいい編集者が考え出したのが、「ストリートスナップ」です。
ファッションページの代わりに、これでページを稼ぐことができる。
しかも、売れる。そして、モデル料、スタイリスト料、ヘアメイク料がかからない。
なんというコストパフォーマンス!
こんないい企画はありません。
それで、サンプル貸し出しが終了した12月売りとか、6月売りとかにストリートスナップ特集を掲載することが多いのです。
メンズ、レディスともに、そうした傾向があります。
今では、こうしたプレス・サンプルの端境期だけではなく、海外などで積極的にストリートスナップを行い、それを時期に関係なく掲載する雑誌も増えてきました。
そこには、リアルがあります。
イマジネーションも多少あります。
そして、最大の魅力は、自由な発想があることです。
ただし、ここに大きな問題があります。
ストリートスナップは誰でも撮れて、誰でも発表することができること。ファッションショーの会場の前には、会場に入る招待客よりも多い、ストリートフォトグラファーがいるのではないか、と思えるほど。きっと需要があるのでしょう。
彼らには何の罪もありませんが、彼らが自由に写真を撮って、SNSなどで気軽に発表することは、すでに、雑誌と競合となり、いつしか駆逐する存在になるかもしれません。
それが、時代の宿命でもありますが、私たちファッション雑誌は、ストリートスナップとはまったく異なった表現をしなければならない、と考えます。