Aug 16, 2016
By TORU UKON (Editor in Chief)
ファッション雑誌講座 第3回「なぜ何百万円もする服を載せるのか?」
ファッション雑誌の素朴な疑問から、ファッション雑誌の意味を考えるブログ。
ファッション雑誌を目指す若者に読んでもらいたくて、書き始めました。
しかし、実は弊社にインターンで来ている学生がいるのですが、彼女に感想を聞いたところ、
「すいません、読んでません」との返事。
正直、ちょっとヘコみました。
どうやら「いいね」を押してくれたのは、僕の周りのオジさんたちが多かったみたいです。
トンガっていたファッション関係者も、年取ると丸くなり、優しくなるんですね。
さて、今日はファッション雑誌の読者について。
ファッション雑誌は、イマジネーションを膨らませるためにある。
そう繰り返し行ってきましたが、では、直接、雑誌を買って読む読者の方々のことはどう考えているのでしょうか?
読者からこんな声が寄せられました。
質問:なぜ何百万円もするような服を載せるのですか?
『Them magazine』では、この春、1,177万円もするジャケットを見開きで掲載しました。
そんな高価な服、誰が買うんですか?
お金持ちしか読んじゃいけない雑誌なんですか?
確かに、そう思う読者は少ないくないでしょう。
答え:買えなくても、知ることはできる
以前も言いましたが、ファッション雑誌は、買い物するための手引き(=バイヤーズ・ガイド)ではありません。
ですから、買えるか、買えないかでジャケットを選んだりはしません。
では、誰も買う人がいないアイテムでも、紙面に載せるのか?
答えは、イエスです。
なんのために?
読者に知ってもらうためです。
こんなジャケットもある、ということを。
高いから素晴らしいのではない。小誌が掲載したジャケットは、通常グラフィックをプリントするところを、
スパンコールの刺繍で表現していました。当然、ハンドメイドです。
その手間がいかに素晴らしい技術なのか、その表現がいかに贅沢なのか、
読者に知ってもらいたいのです。
それを作ったデザイナーも、きっとそう思っているはずです。
(メゾンの営業は、「でも、売れなきゃしょうがないだろう! と批判するかもしれませんが」
日本のメンズファッションの礎を築いたスタイリストの北村勝彦さんに聞いたことがあります。
「一流を知らない者が、B級を語れるか!」
名言です。
チープシックとか、ドレスダウンとかは、
お洒落を極めた者のためにある言葉で、そうじゃなければ、ただ貧乏くさいだけです。
なぜ、パテックフィリップの時計はあんなに高いのか?
なぜ、ジョンロブはビスポークを作るのか?
買わなくても、買えなくても、その価値を理解していれば、その人の価値観も変わってきます。
物の見方、人生の楽しみ方も違ってくるのではないでしょうか。
ファッション雑誌は、そういう人のためにあるのです。
友達の結婚式に着るスーツを買うために、ファッション雑誌はあるのではありません。
どんな結婚式が素敵で、どんな結婚式がダサいか、を判断できる人になってもらうために、ファッション雑誌はあるのです。
偉そうですが、ファッション雑誌は、イマジネーションを膨らませ、
それによって、その国の様々な分野のクリエーターを育てていく、と僕は信じています。