Them magazine

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Editors Voice
Aug 27, 2025
By TORU UKON (Editor in Chief)

Memory of A Day Vol_06

1987年夏のグルカショーツ

7月1日から9月の中旬まで、毎日半ズボンで通している。数年前からの習慣だが、ここ数年は猛暑地獄で半ズボン一択。半ズボン、というのも随分と昭和な言い方だが、自分の中ではショートパンツというよりもしっくりくる。ショートパンツって、なんだか軟弱で女っぽい。っていう考え方からして、押しも押されもしない(ダイバーシティな視点では問題となりそうな)昭和的思考なのだが。

しかし、最近になってとても穿くのに苦労する半ズボンが出てきた。グルカショーツである。あのウエストバンドがクロスベルトになっているヤツだ。両サイドについたバックルにベルトの鳩目を通すのが、一苦労。加齢により、身体が固くなって腰が回らないのだ。腰を90度捻ると、背中がつりそうになる。今年の夏も何度かトライして、背筋が悲鳴をあげて断念した。

太いウエストバンドのクロスベルト。ダブルストラップよりも年代的には新しく1950年代のデイテール。
バックポケットがないほうがドレッシーだが、自分にはフラップポケットは嬉しい。オリーブはアーミー。空軍はベージュ。
スレキのプリントタグは薄くなっているが、サイズ6でアローマークも見える。年代は60年代らしい。

僕が初めてグルカショーツを見つけたのは1980年代の前半。当時、英国軍のサープラスは米軍ものと違って、本当に僅かしか出回っていなかった。それでも広いウエストバンドにクロスベルトのディテールは大変魅力的で、何度か試着した。が、その度に諦めた。試着してみると、見た目よりも裾幅が広くて、まるでスカートを穿いているみたいだったからだ。当時はまだウエストと裾のサイズ差が大きく、かなりの違和感があった。しかし、年をとってくると、だんだんウエストが大きくなり、裾幅との差が縮まってくる。そして、30代半ばにして、とうとうその差が気になくなって、購入。今、穿いているのは2代目で、奥渋谷の「ブラケット」にて数年前に購入した。その店には、ネイビーやベージュ、ホワイトのグルカショーツもストックされていたが、僕は軍ものといえば、オリーブドラブと決めているので、上の写真のショーツを購入した。

グルカショーツの最大の特徴は広い裾幅もさることながら、深い股上と広いウエストバンドにクロスベルトだろう。これにオーバーサイズのシャツをタックインすれば、かなり大袈裟なブラウジングが生まれ、高いウエストラインと膝へかけてのAラインという(クラシカルな)モードっぽい雰囲気になる。シャツはオープンカラー(開襟)シャツがベストマッチ。僕は《ポロ ラルフローレン》か《コモリ》のベタシャンを合わせている。身体に自信のある人はTシャツでもかっこいいが、裾はタックインが鉄則。オープンカラーシャツなどは着丈が短いものも多いが、グルカショーツの股上なら、心配はいらない。

第二次世界大戦中のグルカショーツはダブルストラップ。アンソニー・イーデンがエジプトで訪問したのはグルカ兵士ではなくロイヤルアーミーの兵士たち

グルカショーツは1980年代前半、英国・ネパール戦争で、英国軍がその屈強さから傭兵として採用したグルカ兵士の穿いていたパンツが起源とされる。ミリタリーウエアとしてはかなり古い歴史を持つ。その後二つの世界大戦を経て、1970年代くらいまで英国軍で活躍していた。1970年代後半、《バナナリパブリック》がバリバリのアウトドアウエアのブランド(&ショップ)であったころ、英国軍のグルカショーツを復刻し、大ヒットさせている。この少し後で、日本の古着屋さんにも英国軍の古着のグルカショーツがチラホラみられるようになった。

グルカショーツには、時代によってウエストのベルトがさまざまなデザインに変化していくが、やはりクロスベルトが人気のようだ。これは1950〜60年代に多くみられたデザイン。ショーツだけでなく、ロングパンツも存在する。僕も左太腿にカーゴポケットがついたロングパンツを持っているが、こちらはショーツよりもレアらしい。似たようなデザインのパンツでオーストラリア軍のグルカパンツもあるが、やはり英国軍のほうが人気のようだ。

自分としては、男の股はヴィンテージのデニムパンツと、ミリタリーパンツさえあれば、十分だと思う。これ以上、何が必要か。女性が求める男の股については、経験不足で不明ではあるが。

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