Them magazine

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MUSIC
Aug 31, 2020
By THEM MAGAZINE

最近、UK若手によるレディオヘッドカバーが多い

8/24発売の最新号(#30)で、8/28に新作『インナー・ソング』をリリースしたケリー・リー・オーウェンスを取材した。(インタビューはwebでも公開中!)

その準備としてアルバムを試聴し始めたところ、初っ端から驚いたのは、アルバムの一曲目がレディオヘッドのカバー曲だったこと。

2010年代には、ロバート・グラスパーやクリスチャン・スコットなど、アメリカのコンテンポラリーなジャズミュージシャンによるカバーが度々話題となったレディオヘッドだが、ここ最近では、ケリーを含めたUK若手アーティストたちによるカバーが多く見られている。ちょっと気になる現象なので、以下にまとめてみた。

 

 

 

Arpeggi / Kelly Lee Owens from “Inner Song” (2020/08/28 release)

 

ケリー・リーオーウェンスは、レディオヘッド7作目の『イン・レインボウズ』(2007)に収録された「Weird Fishes / Arpeggi」をカバー。曲の中心となるアルペジオを、ギターからシンセサイザーに置き換え、彼女らしい浮遊感のあるドリーミーな一曲に。この曲を契機にアルバムの制作に取りかかったようで、彼女曰く「私自身がファーストアルバム後に体験した喪失感から這い上がってくるような」イメージだという。インストカバーが一曲目に配置されているのも、思い切りがあっていい。

 

 

Weird Fishes / Lianne La Havas from “(Lianne La Havas” (2020/07/17 release)

 

UKのソウルフルなシンガー、リアン・ラ・ハヴァス(Lianne La Havas)も、ケリーと同じく「Weird Fishes / Arpeggi」をカバー。彼女らしい、ちょっとモッタリしたリズムとスネアが強く響く、ジャジーな仕上がりをみせる。このカバーではアルペジオが抜かれていて、アルペジオを強調したケリーとはまったく異なった方向性が面白い。それは原曲タイトルから、リアンは「Weird Fishes」を、ケリーは「Arpeggi」のみを抽出し、ほぼ同時期に発表されるという、まるで打ち合わせしたかのような偶然の対称性が興味深い。
しかし、原曲を知っている人はわかると思うけど、この曲からアルペジオを取り去るなんてなんとも大胆!

 

 

Fake Plastic Trees / Holly Humberstone from “Fake Plastic Trees” (2020/07/30 release)

 

2000年生まれ、UK期待の新人Holly Humberstone。8月14日に初EP『Falling Asleep at the Wheel』がリリースされたが、その2週間前にレディオヘッドの2nd『ザ・ベンズ』に収録された「フェイク・プラスティック・ツリーズ」のカバーがひっそりと発表されていた。シンプルなエレキギターでの弾き語りで、スタルジックな美声が切なく響く。彼女の新作EPも、UKのフィービー・ブリッジャーズやラナ・デル・レイっぽい感じで、オススメです。

UK若手がカバーブームを巻き起こすレディオヘッド。

若い世代目線の”後追い”のレディオヘッド論は、けっこう重要かもしれません。

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