Mar 10, 2025
By THEM MAGAZINE
SELECT FOR THEM vol.5

《マーティーアンドサンズ》から、デザイナーの自由な発想が詰まったブレザーを紹介。
Them magazine編集部がいま注目するドメスティックブランドを厳選し、ブランドのイチ押しのアイテムを紹介する「SELECT FOR THEM」。前回に続く第五弾は、《ティム(tim.)》を手掛けていた松村大基氏が2019年春夏シーズンに立ち上げたメンズブランド《マーティーアンドサンズ(MAATEE&SONS)》を紹介。
松村氏は呉服屋を営む祖父と父親のもとに生まれ、幼少期の頃から伝統的な洋服に囲まれた環境で育ってきた。ブランド名の「MATEE」は、呉服屋の店名「松貞呉服店」をもじっており、またニューヨークでポピュラーな名前「マーティー」の要素も重ねている。そこに伝統的な服飾史へのリスペクトと継承の意味を込めた「&SONS」をかけ合わせた。本ブランドでは、デザイナーがこれまでに培ってきた伝統的なテーラリングを駆使し、他とは違ったアプローチでクラシックウェアを提案している。そのアプローチとは、ドレスとカジュアル、強さとしなやかさといった、相反する要素を同居させることで、その狭間に生まれる絶妙な感覚をプロダクトに落とし込んでいる点だ。アイテムの縫製やパターン、ニュアンスについて日々追求し、上質な素材とこだわり抜いたディテールを取り入れながらも、どこか抜けている、そんな大人の色気を感じさせる商品展開が魅力的だ。「大の大人が大真面目に良い服を提案する」というテーマのもと、普通なようで普通でない、真に愛着が持てる日常着を展開し続けている。
カジュアルとドレスなアイテムをバランスよく組み合わせた、まさにブランドを象徴するかのようなスタイルで登場したのは「figure inc.」のディレクターを務める早川氏。生成りのドレスシャツの上にネイビーのジャケットを羽織り、リーバイスのデニムを合わせて、足元は革靴でまとめる。キャップを被ることで、一気にカジュアルな雰囲気を加速させているが、ドレスな雰囲気もほどよく漂っている。今回は、ブランドからごく稀に登場するという、ブラックネイビーのカラーを用いたジャケットを紹介する。(当初はジャケットでの制作を予定していたが、ブレザーへと変更したため、リリースされるアイテムは金ボタンへと変更している)
本アイテムを制作するに至った理由について、「いずれも『このアイテムを作ろう』という形式的な流れではなく、デザイナーの日常での思いつきやひらめきなどが、ものづくりのスタート地点になっています」と氏は話す。アイテム名を聞いたときに、誰もが抱くであろうイメージや固定概念を踏まえて、その解釈やアプローチを少し変えたりブラしたりする。一見すると、一般的なアイテムと同様のデザインであるが、実は細部にまでこだわったディテールの違いがある。そういった服への驚きや発見を楽しんでほしいというブランドの思いが根底にあり、シーズン毎にさまざまな型をリリースしている。
本アイテムでは、アメトラの紺ブレに見られるシングルブレストや、はっきりとしたミシンステッチを採用しているが、ブリティッシュなビルドアップショルダーや、ウエストをシェイプさせるために前見頃のダーツを施している。また、ウールっぽくも見える生地にはシルクを用いていたり、「長めのジャケットが好き」というデザイナーの嗜好が反映されているのもポイントだ。アイビーやプレッピーの必須アイテムである紺ブレを、デザイナーの自由な解釈で、ほどよく脱力感のあるトラッドスタイルへとアップデートした本アイテム。フォーマルな装いからスポーティーな装いまで、春夏は爽やかなスタイルで着こなしてみたい。
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