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FASHION
Sep 04, 2017
By THEM MAGAZINE

【インタビュー】《サンネイ》in Graphpaper

Photography_Photomaker.  Edit_Ko Ueoka.

 

 

【インタビュー】《サンネイ》in Graphpaper


近頃、数々のファッショニスタが注目の新星として噂するブランドがある。その名も《サンネイ (SUNNEI)》。英語“SUNNY”の書き間違いが名前の由来だというこのミラノのブランドは、2017 S/Sシーズンにミラノコレクションでランウェイデビューを飾った。コンテンポラリーなバランス感覚で生み出されるウェアは若者を中心に支持され、イタリアのファッション業界に新しい風を吹かせている。

 

9月10日まで、《サンネイ》は神宮前のショップ「グラフペーパー」にてポップアップイベント開催する。それに合わせ、ロリス・メッシーナとシモーネ・リッツオのデザイナーデュオが緊急来日。ブランドのクリエイションと同じく、肩肘張らないエフォートレスな態度で弊誌のインタビューに答えてくれた2人だが、その眼差しの奥には時代を見極める冷静さとクリエイションへの情熱が潜んでいた。

———まずお二人の経歴を教えてください。

 

ロリス・メッシーナ(以下ロリス) 僕の名前はロリス・メッシーナ。生まれはフランスだけど、もう9年もイタリアに住んでいる。イタリアの大学でマーケティング&コミュニケーションを学び、その後《グッチ》にビジュアルマーチャンタイザーとして就職した。そして、僕らのブランド《サンネイ》を立ち上げた。

シモーネ・リッツオ(以下シモーネ) 僕らはミラノで7年前に、共通の友人を通して初めて会ったんだよね。最初はただの友達だったな。僕はシモーネ・リッツオです。今29歳で、2011年からミラノに住んでいる。ファッションデジタルコミュニケーションの学士を持っているよ。卒業後は、バイヤーやデジタルPRの仕事をしていたんだけど、どこか時間を無駄にしている気がして辞めてしまった(笑)

 

———どのような経緯でブランドを始めたのですか。

 

ロリス シモーネとNYに旅行していたとき、いろんなショップを回るなかで、服とマーケットのギャップを大きく感じたんだ。僕らはデザイナーの教育を受けてきたわけじゃないけれど、リテーリングやマーケティング&コミュニケーションは学んでいたし、そのマーケットのギャップにも気づいているんだから、ブランドを始めない理由もないだろうと思った。最初は簡単だったんだよ。あまり考えこまずにブランドのスタートを切ったんだ。

 

シモーネ コンテンポラリーな服を、イタリア生産で作りたかったわけだよ。イタリアの服は古くさく思われることが多いからね。ブランドを始めるにあたっては、いろいろな友達と話しこんだ。すると生地屋で働いている友達は、僕らのことを業界の他の友達に紹介してくれたりしたんだ。言ってしまえば、ブランドを始めることはミラノではそんなに難しいことではない。ネットワークさえあれば、ベストな選択ともいえる方法でブランドを立ち上げることができる。ミラノにはいいアイデアさえもっていれば、助けてくれるたくさんのいい会社があるから。

 

———デザインの勉強をしてこなかったとのことですが、ブランドの服作りはどのように行っていますか。

 

シモーネ とても親しい関係のパタンナーがいるんだ。その人が作ってくれたすべてのピースのトワルに対して、僕らが「これはもう少し長く」など細かく手直しをする形で進める。その後フィッティングモデルにすべてのルックを着せ、さらに修正を加える。こういう方法だから、ほぼデザイン画は描かないね。僕たちは、自分たちのしたいことに対するとてもクリアなイメージを持っているんだ。だからコレクション制作は、僕たちのしたいことを伝えるだけ。でも、紙面に表現されるプロトタイプでは、僕たちの大事にしているフィーリングを感じることができないから、ひたすら手を動かしてトワルをいじるんだよ。

———お二人は仕事を分担しますか?

 

シモーネ デザインやクリエイティブプロセスにおいては、2人で一緒にやるね。それ以外の仕事は割り振っているかな。ロリスは生産管理全般を、僕はコミュニケーションや販売戦略、マーケティングを担当しているよ。

 

———お互いの意見が食い違うことなどありませんか?

 

シモーネ たくさんあるよ!(笑) 基本的には、同じものの見方をしているんだけど。お互いの間にフィルターはないからね。

 

ロリス そう。お互いビジョンは共有しているから、そう頻繁には意見が違うことはないんだけど、たまには違う視点から見ることもある。なぜなら、僕はもっとプロダクトについて考えているし……

 

シモーネ つまり生産コストのことだね! 僕がやたらディティールを足していると、ロリスは「やりすぎだよ!」と怒るんだ(笑)当たり前だけど、プロダクトとプライスのバランスは大事だからね。

 

ロリス マーケティング・コミュニケーションの観点からしたら、同じ現象が僕にも起こる。各々の専門知識から、ブランドを正しい道に引き戻そうとするわけだ。

———2017S/Sの、アンドレア・アルテミシオが撮影した、私服のモデルと《サンネイ》を着たモデルを並べてレイアウトした一連のキャンペーンはとても素敵でした。

 

シモーネ ありがとう。あの「ビフォーアフター」ね。あのキャンペーンを作った経緯を話そうか。写真家のアンドレア・アルテミシオは元々友達なんだけど、彼のモデルをフリーズさせるような作風のファンなんだ。だから、このキャンペーンでも同様の手法を用いてもらった。僕らはプロのモデルを起用するのではなく、親しい友人を招いて《サンネイ》の服を着てもらったんだ。ミラノに住む友人を撮ることで、リアルなミラノを表現したかったんだよ。欧米における、このような「ビフォーアフター」系の広告はすべて嘘なんだ。演出されたダメな姿から、完璧に美しい姿に変身するからね。僕たちは、着せる服うんぬんより、まず人を第一に選んだ。まず彼ら自身がクールな存在で、そして《サンネイ》を着ているからさらに美しいといったものにしたかったんだよ。

 

———2017-18 F/Wのキャンペーンも準備していますか?

 

シモーネ うん!実はまだ撮っていなくて、来週に撮影するんだけど。他にも、アンドレアとのスペシャルプロジェクトも進行中さ。

 

———先ほど、お二人には明確なイメージがあると仰っていましたが、それは時代によって変わりますか?

 

ロリス もちろんさ。僕らの生活が変わることや、新しいものを見たり、新しい人を知ったり、会ってみたりするなかで、イメージもどんどん進化し研ぎすまされているよ。

 

———では、最近夢中になっていて、その明確なイメージに変化を与えているものはありますか?

 

シモーネ ……ストライプ!

ロリス そうだね。僕らのコレクションの中にはいつもストライプが含まれているよ。このポップアップショップにはなぜかないね(笑)

———では、2017-18 F/Wコレクションのプロダクトを一部解説してくれますか?

 

ロリス うん。このコレクションには、たくさんのテクニカルファブリックを見ることができる。注目して欲しいのは特にこの素材かな (上写真、グリーンのシリーズ)。見た目も手触りもウールそのものなんだけど、実はウールじゃなくてテクニカルナイロンなんだ。僕たちは、とてもイノベーティブなテクニカルファブリックを作る会社を知っているんだよ。いい生地だよね。そして、この黄色のマフラーは、ヴェネチアの近くにあるヴィチェンツアで編んでもらっている。これはナイロンじゃなくて正真正銘のウールだ(笑)

 

———どれもイタリアのものばかりですね。

 

ロリス それがとても自然だからさ。僕らの周りにあるものは、僕らが発見したなかでベストなものばかり。でもすべての会社がそれらをベストな方法で使うわけではない。だから違うやり方で見せたかった。イタリアで新しい素材を開発するのも、みんなを驚かせたいからなんだよね。

【SHOP INFO】
Graphpaper
東京都渋谷区神宮前5丁目36−6
03-6418-9402

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