Jul 18, 2017
By THEM MAGAZINE
【インタビュー】GIANFRANCO VILLEGAS from《SELF MADE BY GIANFRANCO VILLEGAS》
【インタビュー】GIANFRANCO VILLEGAS from《SELF MADE BY GIANFRANCO VILLEGAS》
2017年6月、ピッティ・ウオモの新人発掘アワード「Who is on next?」の会場を沸かせたブランドがある。その名も《セルフ メイド バイ ジャンフランコ ヴィレガス》。そのデザイナーであるジャンフランコ・ヴィレガスは、ラフ・シモンズやエディ・スリマンなど、2000年代初頭にメンズウェアに革新を与えたデザイナーに影響を受けていると語り、自身も彼らと同じく、強く“カルチャー”を感じさせるコレクションを展開する。
結果として「Who is on next?」ではファイナリストに選出され、現在世界各国の注目を集めるジャンフランコ・ヴィレガスが来日。いまだ未知なる部分も多いブランドを深く知るべく、直接話を伺った。
———自身のブランド《セルフ メイド バイ ジャンフランコ ヴィレガス》(以下《セルフ メイド》)は、どのようにスタートしましたか?
ブランドは、とても自然に始まったんだよ。学校に通っていた時、学校のプロジェクトの一環として作ったニットウェアのコレクションとアートパフォーマンスのビデオをネットに公開したところ驚くべき反響があって、ビデオの中に登場したコレクションの一部を買ってくれるという人がでてきたんだ。そのとき僕はまだ学生で、将来に向けて経験を積むことだけを考えていたから、すぐにブランドを始めるなんて考えていなかったんだよ。しかし、続けていくうちにプロジェクトは大きくなって、「ブランド」と呼べる大きさに自然となったんだ。
2013年にフィレンツェの学校を卒業した後には、《セルフ メイド》と平行して、《ダミール ドマ》や《ラコステ ライブ》、そしてフリーランスのデザイナーとしても働いてきた。デザイナーとして他のブランドで働くことはとても重要で、業界のシステムやマーケティング、プロダクションについて実際に学ぶことができた。しかし、去年の9月にはそれらの仕事を辞めて、自分のブランドに集中できるようにしたんだ。デザイナーとして他での仕事をしている時は、《セルフ メイド》は単なる“自分の表現をできる場所”でしかなかったんだけど、今は《セルフ メイド》を“自分のブランド”だと思えている。つまり、本当のビジネスになったということなんだ。
———ピッティ・ウオモの「Who is on next?」のファイナリストにノミネートされたことで、ブランドに変化はありましたか?
ご存知の通り、ピッティ・ウオモはイタリアのファッション業界においてとても重要なイベント。内心、そこでコレクションを見せるのは怖いと思う気持ちもあったけど、プレスの人々は「君が『Who is on next?』のファイナリストなんだね」と気さくに話しかけてくれたんだ。イタリアの新聞紙に取り上げられたことも、みんなが《セルフ メイド》を知ってくれた理由であったと思う。ピッティのプレスリリースには、「ゲストデザイナー: 《J.W. アンダーソン》、《オフ ホワイト》、そして『Who is on next?』のウィナー」と書かれてもいたしね。だから、みんなに周知されたという意味で、変化があったかな。
———それを受けて、今後どのようにブランドを展開していきたいですか?
もちろん、ブランドをシーズンごとに徐々に大きくしていきたいと思っているよ。ピッティでのことはもちろん光栄なことだけど、それは僕にとっては小さなステップにすぎないんだ。僕は野心家だからね。でも、同時に現実もしっかり見ている。地に足ついたドリーマーなのさ。
現時点で継続したいと考えているのは、パリでコレクションを発表し続けるということ。パリは僕にとって、とても重要な場所なんだ。3年間も住んで、初めて業界での経験を積んだ場所だし、友達とか、そういう思い出の場所でもあるからね。今はフローレンスにスタジオを構えているけど、パリにはよく足を運んでいるよ。パリには、PRや業界人など多くのコネクション、そしてインスピレーション源があるからね。1年の6割はフローレンスのスタジオで働いていて、4割はパリにいるんだ。最近はミラノにもよく行くけどね。
———毎シーズン、どのようにコレクション製作を始めますか?
毎回、自分の周りにあるパーソナルなものに目をむけることから始める。例えば、母親との関係性にインスピレーションを得ることもある。その後、ヴィンテージショップやマーケットを回って、徹底的にヴィンテージ服のリサーチをするんだ。なぜヴィンテージをリサーチするかというと、現在のトレンドから離れることができるからなんだ。古い年代のヴィンテージだけでなく、ミリタリーや普通のポップな古着も見るよ。そして、アートもリサーチするね。ミュージアムやギャラリー、「Frieze London」のようなアートフェアも頻繁に訪れているよ。
———《セルフ メイド》のコレクションには、毎シーズン“刺繍されたメッセージ”が施されていますが、なぜでしょうか?
確かに、刺繍やメッセージは、いまや《セルフ メイド》のシグネチャーとも言えるね。メッセージはまるでパーソナルな日記のようで、ノートブックの代わりに、服の上に書いているようなものなんだ。例えば、今シーズン(2017-18 A/Wシーズン)は、“Surround yourself with people who believe in your dreams”と刺繍した。個人的な話だけど、現在チームとして僕と一緒に働いてくれている人々は、僕の夢を信じてくれていて、ブランド名に込めた“self made”という言葉の意味を信じているんだ。“self made”は、「懸命に働く人、自分で何でもやる人」という意味で、僕の周りのみんなはその精神を宿している。そういった人々に囲まれるということは、とても重要なことなんだ。このフレーズは、このシーズンに込めたパーソナルな僕の思いのひとつだね。他には、泣き顔の下に“Keep your head up every time”と書いた。いつも強さ、もがき、怒りについて興味を持っているからね。
———しかし、なぜ刺繍を用いるのでしょうか?
メッセージを服の上で表現する方法を探さなくてはいけなかったんだけど、ただプリントするだけでは容易すぎると思ったんだ。幸運にも、イタリア、特にフローレンスにはアルチザンが息づいているから、クラフトマンシップというのは僕にとって自然なこと。だから僕のコレクションでは、クラフトマンシップや質の高いファブリック、テクニックを用いて、大好きなストリートウェアやヒップホップカルチャーをラグジュアリーに表現しているんだ。
———影響を受けているというアーティストやミュージシャンを挙げていただけますか?
2 PACが一番かな。彼の曲「Life Goes On」のタトゥーを手の甲に入れているくらいさ。僕が書いているメッセージの多くは、彼の曲の歌詞からインスパイアされているんだ。「Dear Mama」や「Life Goes On」、「Keep Your Head Up」はお気に入りの曲だね。彼は常に僕の心の中心にいる人物さ。他にはオールドスクール・ミュージックなんかも好きだけど、90年代後半-00年代前半にティーンエイジャーとして過ごしたから、よく聴いていたNellyやJa Rule、Bow Wowなどからも影響を受けているかも。
アーティストに関しては、無名なアーティストが好きだ。Daniel Firmanのような有名なコンテポラリーアーティストも好きなんだけど、それより小さいギャラリーに展示しているような、まったく新しいアーティストを捜すのが好きなんだ。とても若かったり、まだ学生だったりするようなね。僕は、他の人がどのように感情を表現するのかということに興味があるんだ。例えば僕の場合は、その手段として服があるわけだけど、他のアーティストには別の方法があるわけだよね。新しい時代の、新しい表現の方法を見ることは、とても興味深いことだとおもう。
———東京では、“新しい表現”を見つけることができましたか?
忙しくて、そのための時間がまだ取れてないよ!だけど、一昨日の夜に自由な時間ができて表参道をぶらついていたら、とても良いヴィンテージショップを見つけたんだ。残念ながら名前は覚えていないけど。そこには、古い《ナイキ》のコレクターがいて、1時間以上も《ナイキ》について話してしまったよ。自分と同じようなものが好きなひとに出会えるのは嬉しいことだね。滞在中、1日はフリーな日があるから、下北沢や高円寺を回ってみるよ!
今回の初来日では、ライブ・ペインティング・パフォーマンスを披露。ペイント、スプレーを駆使し、白いTシャツの上にメッセージを施した。そのTシャツは5枚限定で「アディッション アデライデ」にて販売中。同時に、《セルフ メイド》の17-18A/Wシーズンのコレクションもいち早く展開している。そのエネルギー溢れるコレクションを見に、「アディッション アデライデ」に急げ!
Edit_KO UEOKA