Them magazine

SHARE
ART
Feb 21, 2022
By THEM MAGAZINE

Interview with Teiji Utsumi “Haco箱Hair+Nail”

イギリス・イーストロンドンで、2020年夏に創業したヘアサロン「Haco箱Hair+Nail」。オープンから1年強という驚異のスピードで、昨年12月に広さ9坪から40坪へと拡大再オープンを果たした。オーナーのTeiji Utsumi氏は、16年間に渡りロンドンをベースとしてファッション誌や広告をメインに、ヘアスタイリストとしてキャリアを歩んできた。今インタビューでは、彼自身の経歴に加えて、コロナ禍でのサロン開業の背景や同時期にオープンしたネイルサロン、「Haco箱Art」等の活動内容について迫る。

――出身からこれまでの経歴について教えてください。

奈良県出身で、中学校卒業するまで地元にいて、16歳のときに大阪で1人暮らしをしながら美容院で働きはじめました。それで20歳くらいでスタイリストデビューした後、東京でも5年間ほど美容院で働きました。その後ロンドンに渡りました。

 

――なぜ16年もの間、異国の地ロンドンを拠点に活動を続けているのでしょうか。

僕は元々ファッションがやりたくて美容業界に入ったのですが、徐々に『i-D Magazine』や『The Face』などの雑誌に載っているヘアに興味を持ち、それがきっかけで東京のヘアメイクの事務所が入っている美容院で働き始めました。そこで色々な人達の話を聞いて、僕のやりたいことは海外にあるんじゃないかって言われて。初めはニューヨークとロンドンですごく迷ったんですが、僕はUKの雑誌や音楽がすごく好きだったので、イギリスを選択しました。多くの日本人のヘアスタイリストは、2~3年で帰国されることが多いのですが、自分は3年経ってもやりたいことができていないと感じ、もう少し頑張らなくてはいけないなと思って。そうしたらあっという間に16年経ってしまいましたね(笑)

 

――それでは雑誌やファッションのお仕事など、どのように活動の場を広げていったのでしょうか。
はじめロンドン芸術大学に留学していたときに、Piczo君とか、今でも交流関係が続いているいろいろなメンバーと出会う機会がありました。その後に、有名なセッションスタイリスト・James Pecisのアシスタントにつくチャンスがあり、彼に約4年間パーソナルで就いていました。彼が当時、『British Vogue』や『i-D』、『Dazed &Confused』等のイギリスの有名な雑誌を担当していて、そこのチームの人と出会う機会が自然とありました。それで卒業後に、一緒にそこでアシスタントをやっていた仲間が、『I-D』や、他の雑誌で撮るとなったときに、呼んでもらったのがきっかけです。

――ロンドンでサロンを開業しようと思ったきっかけを教えてください。

元々ロンドンにきてフリーランスとして1人で活動していたときから、自分のホームと言えるような場所がほしくて美容院を作りたいと思っていたのですが、忙しくてまったく時間がありませんでした。その後、コロナの影響で2020年の3月中旬から3ヶ月程イギリスがロックダウンに入ったタイミングで、やっと考える時間ができて。そのときに「今出さないともう出せないんじゃないか」と思いましたし、自分的にずっと止まってるのが好きではないから、やることを見つけたいという思いも相まって、サロンを開業しました。

 

――コロナ禍でのオープンで苦労したことはありましたか。

2020年冬に合計4カ月ほどロックダウンになったときは、一切お店を開けられなくて、もうダメかなと思ったこともありました。オープンしたばかりなのに、家賃だけ払い続ける状態が続いて、金銭的にすごくきつかったです。なので自分のセッションワークのお金をすべて回していました。

 

――スタッフはどのように集めたのですか。

元々最初は1人でやるつもりだったのですが、歴代の僕のアシスタントの何人かが、「お店を出すなら手伝わせてください」と声をかけてくれたので、初めはアシスタントと一緒に3人でスタートしました。それから、Instagramを見てカッコいいスタイルを作っているなと思う人をヘッドハンティングしたり、反対に僕のことを知ってて応募してくれた人など、オープンから1年たった今、合計14人ほどに増えました。僕はずっとファッションとの関係が深いサロンを持ちたいと思っていたので、カットがうまいだけではなく、それ以上のものを持ってる人かどうかという基準で選んでいます。

 

――このサロンのスタイルやコンセプトについて、理由とともにお聞かせください。

お店のポリシーとして、自由に働ける場所を目指しています。セッションワークをやっている人達は急に仕事が入ったりするので、サロンで働けないことが多いのですが、「Haco箱Hair+Nails」ではそういう人達を含めたスタッフ全員が外の仕事や雑誌の撮影などを自由に行える環境を作ってあげたいと思っています。

ビジュアル的なスタイルは、パンクとポップがテーマにあります。僕が元々UKのパンクやロックが大好きなので、それがサロンのスタイルに影響しています。あと、今のファッション業界のトレンドとして注目を集めている90’sやSFと、自分のスタイルを混合させることで、ポップな印象を与えられればいいなと思っていますね。ただ時代はどんどん変化していくので、”いい意味でスタイルがない”というのがサロンのコンセプトなのかもしれないです。もしクラシックが流行ったらクラシックをやっていると思うし。僕自身ファッション誌をよく見ているので、流行に合わせてサロンのスタイルを築いていきたいです。

――広さ40坪に拡大オープンしたきっかけを教えてください。

前のサロンも気に入っていたのですが、友達のモデルやカメラマン、スタイリスト、デザイナーがInstagramで拡散してくれたおかげで、気がついたらスタッフが増え、お客さんも溢れていたんです。4席しかない小さなお店で待合室もなく、お客さんが外で待っている状態が続いてしまっていたので、無理してでも新しく広いお店を出さないといけないのかなと思いました。

 

――同スペース内に、ネイルサロンをオープンした理由についてお聞かせください。

元々ネイルはやるつもりはなかったのですが、ネイルアーティストYuikaさんに「ネイルサロンをやりませんか」という連絡が来て。彼女は以前ニューヨークで活動していた人で、ジェルネイルや爪にメタルを入れるなど、アーティステックなところが魅力的だと思いました。僕は元々ネイルに対してあまり詳しくなく、ネイルはファッションというより、ビューティーという印象が強かったのですが、彼女のネイルを見たときに、素直にすごいなと思い、可能性を感じましたね。それでサロンと同じ空間にネイルサロンをオープンしました。

 

――ヘアサロンで行うのは稀な、「Haco箱art」の活動について教えてください。

美容師=アーティストというくらい、美容院とアートは密接な関係にあると思っていて。それで自分がアーティストとして何ができるかを考えたときに、僕は昔から写真集を集めていたので、この知識をシェアしたいなと思ったことがきっかけでアートにまつわる活動を始めました。

 

――「Haco箱art」の収益の一部は募金されているそうですね。

自分の親が若い時に癌で他界していたこともあり、元々人を支援することに興味がありました。そこで、美容院に来たお客様に集めていたアートの本を販売したり、webサイトを通してPiczo君など何人かのカメラマンのプリントを売ったりして、その売上の何%かを赤十字に募金しようと考えたんです。僕は周りの方々の手助けで今までやって来れたと思っていて、そろそろ世界に還元するときだと思い始めました。

 

――それぞれの活動の今後の展望について教えてください。

サロン全体の目標としてはネイルとアート、最近作ったバーバー、それぞれ個別の店舗を作り、1つ1つの活動にフォーカスできればいいなと思っています。ゆくゆくはパリや他の国にも店舗展開するのが夢です。ネイルサロンに関しては、10月にオープンしたばかりなので集客に注力したいです。今ネイルチップを作成しているのですが、細かい手作業で行うそのスキルを応用してオブジェを作ったり、色を使う仕事なので絵を描いて、アート活動として広げてもらったりできたらいいなと思っています。「Haco箱art」は、まだまだ認知度が浅いため、宣伝を積極的に行うと共に、ゆくゆくはもっと若いカメラマンの写真のプリント等を広めていければいいなと思っています。

 

 

『Haco 箱 Hair+Nail』

Place  Groundfloor, 3 Ravey street,London, EC2A 4QP United Kingdom
Opening hours   Mon-Sun:10am-11pm Tue:Close
URL   hacohairsalon.com      haconails.com

Contact   info@hacohairsalon.com
Instagram   @hacohairsalon   @haconailsalon   @hacobarber

 

 

Edit_Rika Shibata

SHARE