Them magazine

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FASHION
Oct 26, 2020
By THEM MAGAZINE

backwoods EYE/LOEWE/NATURE 2020FALL/WINTER

LOEWE Backpack ¥198,000(LOEWE JAPAN CLIENT SERVICE)
LOEWE Tote Bag ¥163,900(LOEWE JAPAN CLIENT SERVICE)
LOEWE Parka ¥390,500(LOEWE JAPAN CLIENT SERVICE)

VOICE of JONATHAN ANDERSON

ジョナサン・アンダーソンが《Eye/LOEWE/Nature》を通じて表現する自然との向き合い方について。

ジョナサン・アンダーソンはフリース・ジャケットが好きだ。自身のシグネチャーやコラボレーション、そして《ロエベ》を合わせた計14のコレクションをロンドンとパリを行き来しながら手掛ける彼にとって、快適な服は欠かせないのだろう。自身のスタイルにシンプルでオーセンティックなものを選ぶ彼はここ最近、《アイ/ロエベ/ネイチャー》を愛用している。《ロエベ》のライフスタイルラインとしてスタートしたこのレーベルは、今季で4シーズン目を迎える。大自然にインスピレーションを得たコレクションはファッション産業が取り組むべき課題である、サステナビリティというものに対する彼の意識を体現している。最高級レザーを使い、職人やアーティストたちのクラフツマンシップに重きを置く《ロエベ》が、オーガニックコットンやエコロジー素材、ヴィンテージ生地などを用いて作り上げるコレクションを通じて届けたいメッセージとは。ジョナサンの言葉から、その真意を探りたい。

 

2019年春夏シーズンにローンチした《アイ/ロエベ/ネイチャー》は、大自然に着想を得たライフスタイルライン。アート作品やクラフツマンシップへのリスペクトから創り出される造形的で先進的なメインコレクションに比べて、よりウエアラブル。ブランドらしく、典型的なアウトドア商品とは異なる大胆な色使い、遊び心のあるデザインに、アウトドアウエアとしての優れた機能性を備えている。ジョナサンはこの《アイ/ロエベ/ネイチャー》を、アウトドアラインではなく、“ライフスタイルライン”として提唱している。「“ライフスタイル”という言葉を用いることで、このコレクションがアウトドアだけではなく都市の世界における美学というものも、伝えてくれるのだと思います。《アイ/ロエベ/ネイチャー》は日々の生活で着るファッションと、大自然を生き抜くためのウエアとしての領域をどちらもカバーしていて、アウトドアラインと言われるような(都市の)外の世界で使用する理想的なウエア以上のものとして提案しています」

2020年春夏のイメージムービーでは、キャンペーンモデルに起用された俳優のジョシュ・オコナーが渋谷のスクランブル交差点や電車の車内から、箱根の竹林、富士山麓までを駆け巡る。いかなるフィールドでも適応するラインナップとして、パーカやウィンドブレーカー、フリースやシャツ、ハイキングブーツなど、都市部と大自然をまたにかけて活用できるプロダクトで構成されている。「デザインソースは私自身のワードローブからきています。《アイ/ロエベ/ネイチャー》では、リアリティを追求したい。《ロエベ》というメゾンでアウトドアに向けたものづくりをすることは、私にとってとても情熱的な取り組みで、同時にとてもパーソナルなものでもあります」

 

機能的なパーマネント・ラインにおけるクリエイションの根底にあるのが、バックグラウンドである自然を保護するためのサスティナブルな手法の模索だ。「自然界に無駄はない」という概念を踏襲する《アイ/ロエベ/ネイチャー》では、プロダクトの多くにオーガニック繊維や再生素材を使用している。そしてカスタマーが製品を購入するたびに、環境保護団体への寄付が行われる。ジョナサン・アンダーソンは、クリエイションにおけるサステイナブルについて、最も早くから意識を向けたデザイナーのひとり。「サステイナブルな取り組みをPRの一環として“利用している”ブランドやメーカーもあると思います。しかし私自身の哲学としては、より長期的な解決策を取り入れ、試していくことが重要だと考えています。人は何か新しいことを学ぶことで、そこから自分たちの本業へと立ち戻っていく。それが、2019年1月に《アイ/ロエベ/ネイチャー》を立ち上げたときから考えていたコンセプト。《ロエベ》というブランドが倫理的な消費を達成するために、長期的なソリューションを模索するためのラボなのです」

 

シーズンを重ねるにつれ、クリエイションとサステイナブルの両立はより高いレベルで実現している。「何も無駄にしない」ための新しい取り組みとして、2020年秋冬のキーテーマとなったのが《アイ/ロエベ/ネイチャー》初となるアップサイクリング。「すでに命があり存在しているものを再利用する」。ミリタリーを多用した今季のコレクションでは、すべてのアイテムにリサイクルおよびオーガニック素材を使用。シーズンを象徴するカモフラージュ柄のパーカやジャケット、バックパックはミリタリーテントの生地から生み出された。ヴィンテージのフランネルやフリース、ミリタリージャケットは再構築によってシャツへと生まれ変わる。リサイクル素材を使用しているため、アイテムのひとつ一つはそれぞれに色や柄の使い方が異なり、それぞれに独自のアイデンティティとストーリーが込められる。もちろん、ディテールのパーツにはリサイクルのレザーストッパーや引き紐、分解可能なボタンなどが用いられている。「よく使われる生地で、使われなくなった古いものを探していたところ、カモフラージュ柄の素材をバルクで見つけてリサイクルすることができたのです。私たちはアップサイクルされた製品から衣服全体を作ると言う観点で、サプライチェーンを実現しようと挑戦しました。カモフラージュ柄を使用したのは決してトレンドを意識したということでなく、たくさんあるものを使うことの必要性について考えたからなのです」。近年にわかに注目されつつある、ファッショントレンドとしての“ネイチャー”や、アウトドアスタイルのファッション化といった現象については否定的だ。「私は“ハイファッション”や“アウトドア・クロージング”といったカテゴリーやエリアで分けたり、そういったボーダーというものを信じていません。人それぞれがその人にとって正しいと思うことをすべきであり、私にとっては創造的なプロセスへの責任を全うするということ。そのひとつである《アイ/ロエベ/ネイチャー》はスタートしてから2年半が経ちましたが、私をインスパイアーし、最も根拠があり実用的なコレクションとして、この取り組みに惹かれているのです」

 

かつてのインタビューで「デザイナーにならなかったらガーデナーになっていた」と語ったジョナサン・アンダーソンにとって、自然というものは代え難い存在だ。「私にとって自然とは、“リアリティ”そのもので、最も重要なもの。自然はいつでも自分のあらゆるクリエイティビティの背景になっています。なぜなら、根本的に自然というものは私が住んでいる世界の風景そのものだから」

 

 

PHOTOGRAPHY BY GENTARO ISHIZUKA.

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