Them magazine

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MUSIC
Sep 12, 2022
By THEM MAGAZINE

Interview with GEORGE RILEY “Running in Waves”

“I just always want to make things fresh and different, at least to myself.”

「少なくとも自分にとっては、いつも新鮮で、異なった曲をつくりたいんだ」
−−George Riley

 

 

現在24歳、ウエストロンドンのシェパーズ・ブッシュ出身のシンガー、ジョージ・ライリー。2021年にリリースしたミックステープ『interest rates, a tape』では、フゥーチャーリズムの色を帯びたジャズやタブ、ジャングルといった多様なサウンドを軽やかに乗りこなしながら、類まれで甘美な声色で歌い上げ注目を集めた。9月には、フランク・オーシャンの楽曲も手がけるVegynによるプロデュースで、デビューアルバム『Runnning in Waves』の発表を控える注目株を、地元シェパーズ・ブッシュにて直撃。大好きだというカラフルなファッションに身を包んだ彼女は、聞けばまだ学生だという。(※インタビューは2021年5月に収録)

 

 

――まだ学生なんですよね?
「リーズ大学で哲学と政治学を専攻して、COVIDのロックダウン時からは法律を学んでいる。もうすぐ卒業するんだけど」

 

――法律? 弁護士になりたいんですか?
「いや、そうじゃないんだけど(笑)。音楽業界は複雑で契約書も専門用語ばかりだし、法律や契約について理解したほうが有利だと思ったんだ。音楽が大好きで、いつも曲を作っているけど、ずっとこの仕事を続けるかもわからないし」

 

――ウエスト・ロンドンのシェパーズ・ブッシュ出身とのことですが、どのように育ちましたか?
「学年で黒人は私一人という私立の女子校に通っていたから、中学での経験はちょっと複雑だったね。14歳で他の学校の人と交流するようになり、世界の広さを少し感じることができた。大部分において、シェパーズ・ブッシュで育つのは本当に楽しかった。何でも近くにあるし、自由度が高いんだ。タバコを吸いながらストリートで暴れまくって、自分たちは本当にクールだと思ってた。普通のティーンエイジャーだね」

――では、曲作りを始めたのはいつころですか?
「たぶん、15歳か16歳くらいかな。いつも詩を書いて、ギター片手に歌っていて。16歳の時に偶然出会った友達が、ブリットスクールという音楽とミュージカルの学校に通っていて、Kensalにある『パラダイス』という会場でよくライブをやっていたから、私もカバー曲で参加したりしていた。曲のリリースを考えたのは、ずっと後になってから。自分のビートを見つけるのに時間がかかったんだ」

 

――なぜでしょうか?
「だって、会うミュージシャンやプロデューサーたちはみな、私の見た目で判断して勝手に枠にはめちゃうんだもの。『彼女はソフトで、R&Bのような音楽を作りたいんだろう』みたいな感じでね。ひとつ前のミックステープ『interest rates, a tape』をプロデュースしたOliver Palfreymanやその仲間に会えた時、やっと自分の作りたい音楽を見つけたと思えたんだ。今ではサウス・ロンドン・ジャズシーンと言われるコミュニティにいて、みんなで一緒に音楽を作っていた」

 

――だから前作の収録曲「say yes」には、Joe Armon-Jonesが参加しているのですね。
「そうそう。以前、彼はOliverと一緒に住んでいて。『say yes』も、ある日にジャムって即興で作った曲が元になっていて、後から『これは本当にいい曲だからフィニッシュしよう』ってなった。いつもこんな感じで、曲を作ろうと意気込んでやるわけじゃないんだ」

 

――ジャズだけでなく、エレクトロやジャングルのサウンドも取り込まれているのが印象的です。
「私は双子座だし、とにかくいろんなタイプの音が好きなんだ。16歳から20歳まではジャズに夢中で、大学時代にはリーズのジャズクラブでレジデントとして歌っていた。クラブで踊るのも大好きで、ダンスミュージックにもどっぷりはまった。ヒップホップもたくさん聴いてたし、本当にあらゆるものから影響を受けているね」

 

――影響を受けたアーティストを挙げるとすれば?
「ソングライティングの観点からは、ギル・スコット・ヘロン。なぜなら、彼はとても正直だから。でも、彼の曲はシンプルでありながら、多くの感情を表現しているところが好き。私がいつも心がけているのは、とにかく感動を伝えることだから。他にはドナ・サマーやリック・ジェームスもいいね。忘れちゃいけないのはケリスで、彼女の写真を携帯のスクリーンセーバーに採用しているくらい好き」

 

――MVでもその影響が見られますが、アフロ・フューチャリズムがお好きなのですか?
「うん。私は宇宙やレトロフューチャリズム、60年代のものが好きなんだ。人々が未来やテクノロジーについて、本当にワクワクするような方法で考えていた時代で、より多くの希望があったように思う。特にアフロ・フューチャリズムは、人種差別の現実からの逃避のようで、とても興味深い。映画『フィフス・エレメント』がとても好きで、衣装や美学に影響されたな。私はちょっと夢の世界に住んでいるような人間なの」

――シングルリリースもされた「Cleanse Me」では気候変動について歌っていましたね。
「ハハハ、そうね。先に言っておくと、私は環境活動家ではない。ベジタリアンじゃないし、リサイクルもほとんどしない。問題視しているのは、気候変動を訴える人たちを社会正義の戦士であるかのように称賛しながら、労働者階級や黒人、社会から疎外された人々には無関心であること。それは私には腑に落ちない。この曲は、そのことについて他の人と言い争ったことを歌にしたんだ。すると、私を活動家と呼ぶ人が出てきた。アーティストっていうのは複雑な職業だね。人々は常に、自分のアイデンティティと結びつけて、政治的信条を語ることを求めるから。多くのアーティストが、自分の作品を過剰に政治化するような罠に陥っているのを目にするけれど、私にはそれがとても空虚なものに見えてしまう。特に、それがお金と関係しているような時は。私はまず一人の人間であること、そして二面性を許されることを求めるし、そしてインスタグラムに投稿することではなく、私を私たらしめている日常のことを綴っていたい」

 

――SNSが嫌いなんですか?
「うん。人生の質を悪くすると思うんだ。音楽をリリースする以前はInstagramもTwitterもやっていなかった。でも、アーティストであるにはオンラインでなければならないんだ。だって、履歴書みたいなものでしょ? SNSを通してみんながアーティストを知り、音楽でも写真でも、クリエイティブな仕事を見てくれるわけだし。私にとってまったく自然なことではないから、いつか何もしなくてもいいようになりたいね」

 

 

――最近<PLZ Make It Ruins>と契約し、Vegynがプロデュースしたシングル「Jealous」と「sacrifice」をリリースされました。どのようにコラボレーションに至ったのでしょうか?
「彼のファンだったから、インスタグラムでメッセージしたんだ。私たちは共通の友人が多かったから、『あなたは私が誰か知っているでしょ?』って。その時彼はLAにいると思ってたんだけど、実際はノッティングヒルにあるスタジオにいて、その日の午後にいきなり曲を作ったんだ。それから5日間ほどかけて、プロジェクト全体のアイデアを作り上げた」

 

――たった5日間! どのようなプロセスだったのですか?
「そのころのVegynは、楽器での生演奏にハマっていたんだけど。私も即興が好きだからとても馬があった。ひたすら曲を書いて少しずつ録音していくと、あっという間に出来上がって、それほど多くのことをやったようには感じなかったね。ストリングスをとても気に入っていて、その美しいアレンジは、超実力派ミュージシャンでもあるJohn Keekが書き下ろしたもの。アルバムは9月にリリース予定」

 

――楽しみにしています。今後の予定は?
「この夏にはたくさんのフェスティバルに出る。グラストンベリーにも出演するから、とても楽しみ。次のアルバムは、正直で悲しいものだから、リリースをちょっと緊張して待っている。私が孤独だとみんなに思われるかもしれないけど、でもそれは本当とも言える。その次のプロジェクトはもっとハッピーで、ダンスミュージックを作りたいと思う。その変わりように驚くかもしれないね。少なくとも自分にとっては、いつも新鮮で、異なった曲をつくりたいんだ」

『Running in Waves』 George Riley (PLZ Make It Ruins)
GEORGE RILEY

ジョージ・ライリー ロンドン・シェパーズブッシュ出身のアーティスト。リーズ大学で哲学と政治を専攻。2019年から楽曲を発表し始め、2021年に初のミックステープ『interest rates, a tape』をリリース。2022年9月9日にデビューアルバム『Running in Waves』 を発表。

 

 

PHOTOGRAPHY BY NABE.
Edit_ KO UEOKA.

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