Nov 01, 2023
By THEM MAGAZINE
Interview with Lea Boberg

ロンドンで活動するデンマーク出身のデザイナー、リア・ボバーグによるブランド《リア・ボバーグ(Lea Boberg)》。彼女の作る服は、日常生活に馴染む、ゆったりと美しいテーラリングウエアだ。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業し、現在は《ケイスリー・ヘイフォード(Casely Hayford)》のデザイナーを務めながら自身のブランドに取り組んでいる。その《リア・ボバーグ》では、アイテム数を絞り、一枚一枚のパターンを丁寧に突き詰めるクラフツマンシップ溢れる物作りを行う。デザインのアプローチは、彼女を含めた市井の人々のありふれた生活動作に美しさを見出し、デザインに落とし込むというもの。初来日の彼女にそのフィロソフィーを伺った。
“I aestheticize small everyday things.”「日々の小さな出来事にこそ、美しさを感じます」
――2022年の秋冬がファーストコレクションとのことですが、《ケイスリー・ヘイフォード》で働きながら自身のプロジェクトを始めたころについて教えてください。
制作を始めたのは2020年のロックダウンの時です。家にいる時間が長くなり、自分のプロジェクトを始めることにしました。今はアトリエがありますが、当初は自宅の床にパターンを広げて制作していました。人に会うこともできなかったので、全て自分でフィッティングして、自分のために作っていました。その後、イギリスでのオーダーには対応していましたが、お店に卸しているのは22AWシーズンから、日本のみです。
――2020年から一貫した雰囲気の物作りをされていますが、どのような意識で制作されていますか?
次々と新しいものへと展開していくのではなく、自分の好きな一点を深く掘り下げて、本当に作りたいものをアウトプットするように心がけています。学生のころは、自分の色を表現したり見たことのないものを生み出すことを求められましたが、それよりも過去から存在するオリジナルに敬意を払い、いい意味で頑固な物作りに魅力を感じるようになりました。移りゆくトレンドを追わず、世界中の誰にでも共通しうるものは何か、見つめ直したかったんです。テーラリングがそれだと思いました。個人的なものではなく、毎日の生活の中で着用される普遍的なものであり、美しい形のユニフォームをデザインしたいと思っています。
――ムードボード、インスピレーション源を教えてください。
よくチューブ(地下鉄)で人々を観察しています。ただ座って電車を待っている人や、歩いている人の無意識な着こなし、ゆったりとした姿勢には美しさが潜んでいます。彼らがまとう布の振る舞い方など、各々の生活の仕方が着こなしのディテールに自然に現れている様子に惹かれるんです。通勤したり食事を作ったり友人と話していたりという、日常生活にありふれた細かな一つひとつの所作の美しさを捉えています。
――それはどのようにクリエイションに反映されていますか?
ゆったりとリラックスした人々の着こなしにならい、気負わずに着用できるシンプルで快適なものを作っています。裏地やパッドを排してオーバーサイズの軽やかな仕立てにしました。人々のワードローブに溶け込む普遍的なウエアとして、普段のスタイルに合わせて好きなように着てほしい。生活のワンシーンで、心地よさを感じてもらえるような一着になったと思います。全体としてはシンプルに見えますが、目を凝らすと通常のテーラードウエアにはないディテールに気づくでしょう。
例えば、この「R.P.L.(Raw Peaked Lapel) BLAZER」は、その名の通り、ラペルから裾にかけて切りっぱなしのディテールを採用しました。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの卒業コレクションから継続して作っているジャケットですが、そのときに家具用の非常に厚い生地を使用したために袋縫いに出来ず生まれたディテールです。細腹からポケットのフラップがシームレスにつながっているのも特徴です。フロントのボタンクロージャーもボタンが見えない仕様にしています。シンプルな見た目にするために複雑な工程を採用しているんです。
生活のユニフォームであるテーラードウエアを、従来のカチッとしたディテールやシルエットから、現代の生活に馴染む、ゆったりとシンプルで美しいものにアップデートしました。

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