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FASHION
Oct 30, 2019
By THEM MAGAZINE

Interview with MARTINE ROSE as NAPAPIJRI MARTINE ROSE

Interview with MARTINE ROSE as NAPAPIJRI MARTINE ROSE


2007年にメンズウエアのシャツレーベルからスタートし、「Fashion East」のサポートや「Newgen Men」アワードの受賞など着々と歩みを進め、今やロンドン発のブランドとして多くの支持を得るまでになった《マーティン ローズ》。メゾンブランドのコンサルタントを務めた経験を持ち、さまざまなコラボレーションを行うデザイナーのマーティン・ローズが、アウトドアウエアブランドの《ナパピリ》と手がける《ナパピリ マーティン ローズ》(以下略 NAPA MR)のプロモーションのために、初となる来日を果たした。タイトなスケジュールのなか、今回彼女は弊誌からのインタビューを快諾してくれた。彼女の声を通じて、そのクリエイションの秘密を知りたい。

 

 

―初めての来日となりますが、滞在中はどのように過ごしているのでしょうか?海外のデザイナーは日本に訪れると古着屋を回ることが多いのですが。

 

日本に着いてから3日経ちましたが、主に《マーティン ローズ》や《NAPA MR》を取り扱っているショップを訪れたり、取材を受けています。古着屋もまだ行っていませんが、時間に余裕があれば回りたいなと思っています。

 

 

―近年では、アーカイブや過去のコレクションを参照したクリエイションを行うデザイナーも増えています。老舗のアウトドアブランドとして知られる《ナパピリ》のラインを手がけるうえで、ブランドのヘリテージをどのくらい参考にしていますか?

 

私が手がける《NAPA MR》のコレクションも、《ナパピリ》のアーカイブをもとにコレクションを作っています。スタジオには過去に作られたプロダクトが数多く保管されていて、《ナパピリ》のチームと話し合い、彼らが参考にしてほしいラインナップをもとにデザインをしています。

 

 

―シグニチャーである《マーティン ローズ》でも、あなたが幼少期に見た兄弟やその友人たちの、当時のレイブファッションがインスピレーションのひとつとなっているそうですが。

 

はい。しかしそれだけでなく、例えばバスに乗っているときに見たものや、よく聴いている音楽だったり、自分のそのときの気持ちなど、さまざまなものからインスピレーションを得ています。それらをもとにリサーチを進め、そこからヴィンテージのアイテムを集めたり、洋服を加工したりしながら、全体像を自分の中で整理して、ひとつのコレクションとして作り上げています。私自身、さまざまなプロダクトがあるカオスなワードローブが好きなので、ひとつのコレクションでいろいろな格好をすることができるものを意識しています。

 

 

―ブランドとの協業について教えてください。あなたは《ナパピリ》だけでなく、《ナイキ》ともコラボレーションを行っていますね。例えば同じく、《ナイキ》と仕事をしているヴァージル・アブローは自身のコラボレーションワークにおけるメソッドとして、「既存のプロダクトを3%だけ変える」というルールを設けているそうです。あなたもこうした自分のなかでの決まりごとやこだわりはあるのでしょうか?

 

自分の中に明確なルールというものはありませんが、コラボレーションするブランドと自分のDNAが二つかけ合わさったようなものができるように心がけています。具体的に「これが自分のDNAだ」というものを言葉で説明するのは難しいのですが…。例えば、前シーズン《NAPA MR》でフラワーパターンのフリースを出したのですが、これは《ナパピリ》のアイコンであるフリースに、自分のコレクションの特徴のひとつでもあるオーバーサイズのシルエットや主張的なプリントをかけあわせてできたものなんです。「普通のものを普通じゃないものにする」というのが、私のDNAのひとつだと思います。

 

 

―2014年秋冬シーズン以降にリリースされているワイドパンツなど、あなたのクリエイションの大きな特徴のひとつであるオーバーサイズが、ここ最近のランウェイでは影を潜めています。ここ最近のなかで、自身のクリエイションにおける変化などはあるのでしょうか?

 

いつも先を見越してデザインしています。スーパーワイドなパンツをリリースしたときも、当初周りからの反応はイマイチでしたが、徐々に人気が出てきました。そして今は、その先にあるものを考えなければならないと思っています。

 

 

―ここ数シーズンはとくに、テーラリングを意識しているように見受けられます。

 

ブランドを始めた当時はデザイナーとしての自信がそこまでなかったので、ジャケットなどをデザインするのは難しいと思っていました。今では自信がついたので、テーラードアイテムに挑戦してみようかという気持ちになったんです。メンズウエアはウィメンズに比べルールが多く、それを破っていくことにやりがいを感じています。

 

 

―一方で《NAPA MR》のコレクションではテーラードのアイテムがないのですが、何故なのでしょうか?

 

テーラードというものが、《ナパピリ》のDNAにはないものだからです。

 

 

―《NAPA MR》を手がけるきっかけは何だったのでしょうか?

 

ディストリビューションを手掛けている「スラムジャム」と元々仲がよく、彼らが《ナパピリ》をリスタートするときに、コラボレーションしてはどうかという話がきたんです。オファーがきたときから自分のクリエイションとの相性がいいと思っていました。

 

 

―ふたつのブランドをコレクションするうえで、違いというものはあるのでしょうか?

 

《NAPA MR》のコレクションの方が、より直接的でダイレクトにイメージを伝えようとしています。プレイフルで、よりキャッチーなコレクションを意識しています。着る人も特定のスタイルというよりかは、さまざまな人を思い浮かべてデザインしていますね。《マーティン ローズ》のほうが複雑で、新しいファッションということをより追求しています。

 

 

―シーズン毎のテーマはどのようにして決めるのでしょうか?

 

事前にテーマを設けるということはありません。プロダクトを一つひとつ作り上げていくうえで、あるメッセージやストーリーが生まれてくるので、それを最終的なテーマとしたりしていますね。

 

 

―ふたつのコレクションは並行して制作しているのでしょうか?

 

ひとりの人間がふたつの異なるイメージのものを作るのはとても難しいので、《NAPA MR》をデザインするときはそれだけに集中して、自分のブランドを作るときはそれ以外のことはやらない、など明確に分けるようにしています。もちろんふたつのコレクションが重複することもありますが、《NAPA MR》を作るときは“ナパゾーン”に入るようにしています(笑)。スタジオはひとつなので、ひと段落したらそれまでのものを片付けて、次のコレクションに移ります。

NAPAPIJRI MARTINE ROSE 2019-20FALL/WINTER

―《マーティン ローズ》は主にメンズウエアですが、《NAPA MR》ではウィメンズのモデルも多くキャスティングしています。(取材時)今あなたはメンズウエアとしてデザインした《マーティン ローズ》のジャケットを着ていますが、あなたの中のファッションにおけるジェンダーについての考えを教えてください。

 

《マーティン ローズ》でもランウェイモデルに女性を起用していますが、90%がメンズです。ウィメンズの洋服を作ろうと思ったことはありませんが、今後コレクションのなかで女性も着られるメンズウエアを考えてこうという余地はあります。コレクションをつくるとき、自分自身が着るかどうかを考えるだけでなく、デザインチームのメンバーにも聞きますね。ピースは素晴らしいものだけど、それを実際人々が着るかというところまで考えていて、それが自分にとってのクリエイションにおける基準のひとつでもあります。もちろんクリエイションには自信がありますが、チームのみんなのフィードバックといった客観的な意見は大事にするようにしています。多様な意見に耳を傾け、それらを取り入れていき…というのがコレクションの作り方です。

 

 

―日本での滞在中、あなたが作った洋服を着た人は見ましたか?

 

はい!ちょうど昨日歩いているときに、先ほど話した《NAPA MR》のフリースを着ている人を見かけました。アテンドしてくれている人から「デザイナーです」と話しかけなよと言われましたが、いきなりだと悪いと思って遠慮しました(笑)。訪れた店のスタッフや道行く人が実際に着てくれているのを見るとやはり嬉しくなりますね。

 

 

―あなたの洋服にはバックグラウンドとしてカルチャー的な要素も多く取り入れていますが、実際に洋服を着ている人はそれを知らずして着ている人も多いと思います。遠く離れた島国で価値観の違う人々にも愛されている理由をご自身ではどのように考えていますか?

 

ファッションを楽しんでもらうことがすごく重要だと思っています。もちろんデザイナーやブランドがコレクションやプロダクトに込めたメッセージを理解してもらうことも大切ですが、ひと目見たときに、そのデザインに惹かれて着たいと思ってもらうことが、何より大事なのだと思います。

 

 

 

 

Portrait_EKUA KING

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