Them magazine

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ART
Nov 19, 2020
By THEM MAGAZINE

Interview with YASUNARI AWAZU for WAVE 2020

広告や雑誌、装丁からCDジャケットなど幅広いジャンルで活躍中のイラストレーターである粟津泰成氏。色鮮やかな水彩画や躍動感溢れるモノクロのイラストは《フェンディ》や《コーチ》、《ミキモト》などのハイブランドとの仕事やさまざまなアーティストのイラストを手掛けている。自身3度目の参加となる今回の「WAVE」展に際し、話を伺った。

 

―これまでの経歴について教えてください。どのようなきっかけでイラストレーターを志すようになったのでしょうか?専門に学んだ経験や、キャリアについて教えてください。

 

子供のころから絵を描くことが好きだったので、自然と絵を描く仕事につきたいなと考えていました。大阪芸術大学でデザインとイラストレーションを学び、大学卒業後はデザイナーをしていました。就職して2年ほど経ってから、デザインより絵を描きたい欲が日に日に強くなってきて、イラストレーターになる決心をし、2007年に東京に上京しました。そこから本格的に活動を始め、当時新宿にあったセツモードセミナーで学んでいる間にホームページを見てくれたエージェントからスカウトが来るようになったんです。そこから少しずつ仕事をもらえるようになっていきました。定期的に展示などもして作品を発表していたので、そこから生まれる出会いもあります。いろんな縁がつながっていき、今のスタイルが形作られました。

 

―ミュージシャンを中心に人物の表情や仕草などからインスピレーションを受け作品を描くそうですが、この作風のきっかけとなった人や作品といったものがあるのでしょうか?

 

絵を描くモチーフは昔から「人」が多かったです。Mark DemsteaderやMichael Carsonといった、人をモチーフにしているアーティストの作品が好きです。どちらも人物の捉え方がすごく好みで、消えていきそうな儚さを持っている。私がよく描いているミュージシャンも、かっこいいけど魂を削っているのが伝わってきてどこか危うさや儚さを感じます。そういったところがリンクして惹かれるのかなと思っています。

一方で最近は心境にも徐々に変化が出てきて、自然が出す夕焼けや木漏れ日などの風景にインスパイアされて風景画なども描いています。

―実在する人物を描くにあたって、どのようなことを意識しているのでしょうか?

 

実在している人を描くときは、ふとした時の表情を見るようにしています。隙があるときがその人の魅力を一番感じるので。でもイベントなどのイラストでは、仕上がりを見て明るい気持ちになるような、その人のポジティブな面を描くようにしています。そのときに出会ったからには、幸せな気持ちになって帰って頂きたいと思っています。

 

―では、実際に会っていない人を描くうえで意識していることはなんでしょうか?参考となる写真や映像からどのようなものを読み取ろうとしているのでしょうか?

 

写真や映像から直感的に感じた雰囲気は大事にしますが、会ったことがない分、相手に対する先入観がないのでその時の自分が影響を受けている色や感覚が入ってくることを楽しんでいます。実際に会ったことがない人を描く機会の方が多いですし、オーダーしてきてくれた人はそこを楽しみにしてくれているので、あまり技法とかルールに縛られないように、そのときの自分のフィルターで描くことを大事にしています。

 

―今回の「WAVE」展では、どのような作品を発表する予定なのでしょうか?

過去2回はモノトーンの作品だったのですが今回は色を使った作品を制作しました。どこか怪しげな雰囲気もある色味で、モチーフは今までと変わらずに人です。見てくれる人がどんな感想を言ってくれるか楽しみですね。

 

―他者と容易に対面できないこの状況になったことで、人物を描くあなたの中で変化したことはありますか?

今まで当たり前にできていたことができなくなるってすごくストレスで、そのストレスが社会に蔓延していて私自身もどこかピリピリしていたり、人って簡単に外からの刺激に反応するのだなと感じます。でもその反面、人の温かみもすごく感じるようになりました。買い物に行ってピリピリした雰囲気の中で、笑顔で接客してくれるだけでもすごくホッコリして癒されたりと、その人の強さを感じますね。

今までは人の儚い雰囲気に惹かれていましたが、それが逆に人の強さでもあると思えるようになりました。弱さがあるから強さがわかる。改めて私が人に惹かれる理由がわかった気がします。

 

―過去の偉人など、すでにいない人でもし目の前で描けるとしたら誰を選びますか?

ジミヘン、エイミーワインハウス、バスキア。27歳で亡くなって伝説になったアーティストは目の前で描いてみたいですね。すごく繊細な人たちだったみたいなのでその雰囲気を感じてみたいです。

粟津 泰成

人物の何気ない表情や仕草、風景の偶然生まれる色彩等からインスピレーションを受け、その感覚 を大事にした躍動感溢れ、生命力を感じるドローイングスタイルは観る人の想像力をかきたてる。 広告、雑誌、装丁、CDジャケットなどのクライアントワークを主軸に、個展などの作品展示など も定期的に行い幅広いジャンルで活動している。


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