Them magazine

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MUSIC
Aug 17, 2022
By THEM MAGAZINE

サマソニオーディションで見つけた、注目のアーティストインタビュー vol.1 Jam Fuzz Kid

究極の目標は、日本人だと思われないこと。英語の歌詞にこだわり、世界を見据える未来のロックスターJam Fuzz Kid

2年ぶりに開催される「SUMMER SONIC 2022」への出演権を懸けたオーディション「出れんの!?サマソニ!? 2022」。
最終審査を勝ち抜いたアーティストは「SUMMER SONIC 2022」への出演権を得られるだけでなく、海外フェスや海外アーティストの来日公演のサポート・アクト抜擢の可能性もあるなど、まさに未来の音楽シーンを担うアーティストを発掘するためのオーディションである。その一次審査を通過し、一般投票へと進んだアーティストのラインナップをみると、海外のサウンドから影響をダイレクトに受け、自分達の音楽に反映し英語で歌うアーティストが増えているようだ。その中から編集部が注目するバンド2組にインタビューを実施。彼らは日本で活動を行うなかで、なぜ英語で歌うという選択をしたのか。

 

第1弾はUKロックを思わせるサウンドとパワフルなライブパフォーマンスが魅力のJam Fuzz Kid。大学で出会った今村 力(Vo)、浅井 龍(Gt)、ヤマザキタイキ(Gt)、John (Ba)からなる東京のロックンロールバンドだ。
2018年の結成から4年。メンバーの入れ替わりを経て、現在は4人で活動。平均年齢23歳にして、ブリットポップをはじめとする90’s UKロックの影響を強く受け、キャッチーなメロディとラウドなロックを体現している。Oasisへのリスペクトを公言している彼らだが、もちろん単なる再現ではない。日本を彷彿とさせるワードを散りばめた最新曲「KABUKI」は、UKロックをベースとしながらも、日本のエッセンスを加えた、今までにない1曲に仕上がっている。2022年7月に2st EP「DANCING IN SWEET ADVERSITY」をリリースし、現在は全国ツアー中。11月には渋谷WWWにてワンマンライブを控えているなど、今後も加速し続ける注目バンドである。

——まずは音楽を始めたきっかけを教えてください。

 

ヤマザキ(Gt):10歳ぐらいのころに、YouTubeでASIAN KUNG-FU GENERATIONの映像を見て、バンドってかっこいいなと思ったのがきっかけです。それから日本のバンドをたくさん聞いて、自分も12歳ぐらいからギターを始めました。ちょうど同じくらいの時期に「BECK」っていう漫画を読んで、伝説的なバンドを知って聴いていくうちに洋楽も好きになりましたね。

 

今村(Vo):俺は高校が通信制で、元々はプロのバスケットボール選手になりたかったんですけど、怪我で諦めざるを得なくなってしまって。それで、何しようかなって考えていたときに、友達にキーボードとしてバンドのメンバーに誘われたのがきっかけです。いざ参加してみたら、ボーカルが不在だったので歌い始めました。最初に友達のギタリストに教えてもらったのが、The Rolling Stones。軽音部の顧問はRed Hot Chili Peppersを教えてくれて。一番好きなOasisは、YouTubeで「Don’t Look Back in Anger」とか「Whatever」のMVを見てから好きになりました。

 

John (Ba):小さいころから家でB’zが流れていたのは印象に残っています。彼らも海外の音楽が基礎にあるアーティストなので、僕も洋楽を聴くようになりましたね。

 

浅井(Gt):僕はギター始めたのが小4くらいですね。きっかけは、ピアノとか水泳とか、その才能が悉くなかったからです。でも、「このままじゃ俺の人生つまんないな」と思って。そんなとき何故か思いついたのがギターだったんです。親が音楽をよく聴いていたっていうのもあると思います。そのなかでも特に印象に残っているのはマイケル・ジャクソンですね。

 

 

 

——4人ともバックボーンが違いますが、現在の音楽の方向性になったきっかけを教えてください。

 

今村:初めて作った「yonder」という曲を友達に聴いてもらったときに「Oasisみたい」って言われたんですよ。それから俺たちがOasisを意識するようになりました。そこからはどんどん自分たちのエッセンスが加わって、何とは形容できない、それこそ”ジャムファズの音楽”になっていった感じです

 

ヤマザキ:それぞれ聴いてきた音楽はバラバラだけど、やっぱり根底には洋楽がある気がします。

 

 

 

——さて、歌詞についてお聞きしたいのですが、なぜ敢えて英語を選んだのでしょうか。

 

今村:正直、最初は日本語でも英語でも良かったんですよね。ただ、どちらかだけが良くて。1曲の中で2言語を混ぜるのは避けたかったので、そこで選んだのが英語でした。俺が一時期アメリカにいたってもあったので。でも、英語の歌詞を書くことに関しては日々勉強ですね。あとは純粋にかっこいいなっていう、憧れです。メンバーそれぞれが洋楽に影響を受けているので。やっぱり自分達の憧れているアーティストと肩を並べたり、同じ言語で、同じ土俵で戦いたいっていうのがあったのかもしれないです。そういう闘志みたいなものが今も変わらずあります。

 

 

 

——歌詞は最初から英語で書いているのでしょうか。

 

今村:いろいろなパターンがありますね。日本語で書いた歌詞を英訳をすることが多いですが、はじめから英語で書くこともあります。でも歌詞の意味も大切だと思うので、できれば日本語を1回は挟みたいです。何かフレーズが頭に浮かんだら、そこから発展させていきます。こだわりすぎると書けなくなっちゃうので。

 

 

 

——最新EPに収録されている「KABUKI」についてお聞きします。「KABUKI」はタイトルだけでなく、歌詞に〈WABISABI〉という日本のフレーズが出てきますよね。今までにない楽曲だと思うのですが、どのような経緯で制作されたのでしょうか?

 

今村:「KABUKI」は、ヤマザキとJohnが作った曲が先にあって、それを合体させてできた曲ですね。

 

ヤマザキ:特に意図したわけではなく、それぞれがたまたま同じような曲を作っていました。曲名は僕が作ったデモの名前が「KABUKI」で、それが採用された感じです。

 

今村:そうだったね。俺もなんとなく、「かぶく=かまそうぜ」のような気持ちもあった気がします。最近は海外の方もたくさん聴いてくれているから、日本らしいフレーズを入れるのはいいかなと。俺たちは日本語で歌詞を書くことは現時点では考えていないけれど、日本人だというアイデンティティーを示したかった。なので、日本文化を取り入れたっていうイメージですね。英語の中にある日本らしいフレーズの違和感を、面白いと思ってもらえたら嬉しいです。

 

 

 

——SNSで「海外のアーティストだと思っていたら日本人だった」というコメントを拝見しましたが、心境は。

 

今村:すごく嬉しいです。日本人だと思われない、それが究極の目標かもしれないです。詳しく調べてみたらで日本人だったっていうのが理想ですね。

 

浅井:実際、MVには外国の方からのコメントが多くて。日本だけでなく、海外の方にも聴いてもらえるのは嬉しいですね。

 

 

 

——英語の歌詞の場合、Jam Fuzz Kidのリスナーの大半の日本人の方は、聴いただけでは意味を理解されないこともも多いため、歌詞に込めたメッセージに共感してもらえないかもしれないという考えについてはどう思いますか?

 

今村:リスナーの方達は、全体的な音やグルーヴ感がかっこいいと思ってくれている気がしています。本当に俺らに興味を持ってくれたら、YouTubeを見たり、CDを買って和訳を見てくれると思うんですよ。俺らも歌詞に共感してもらうより、実際にライブで音を感じてもらいたい。だからそれほど歌詞の意味を伝えたいとは思わないかもしれないですね。

 

ヤマザキ:結局は、僕らが聞いてきた洋楽の聴き方と同じだといいなって。シャッフルで流れてきたときに、なんとなく好きだと思って聞き流せる音楽というか。単純にかっこいいと思ってもらえたら嬉しいです。

 

今村:そうですね。英語の曲って共感できるまでが長いんですよ。ほとんどの方は、1回聴いただけでは歌詞の意味まではわかる人はほとんどいないと思います。だからただ俺たちを見て、サウンドを聴いて、何かを感じてほしいんです。いちいち説明するのは野暮かなって。俺だったら、細かく説明されると感動が薄れてしまうと思うし。気になったらなんでも簡単に調べられる時代ですからね。共感をメインにしたりはしません。僕もそういう聞き方をしていたので。洋楽の歌詞の意味は全然わからないけど、かっこいいから聞いたし、本当に好きな曲は調べていました。何故かわからないけどかっこいいものって多くないですか?理由がなくてもかっこいいって、最強だと思うんです。

 

 

 

——今後は海外での活動も見据えているとお聞きしました。出たいフェスなどはありますか。

 

今村:世界の大きいフェス、全部に出たいですね。特に、Glastonbury Festival、Coachella Valley Music and Arts Festival です。海外のアーティストと肩を並べたいです。なんで音楽で日本が劣らないといけないんだって。日本人がやってるロックをもっと世界に知ってもらいたいです。

 

左から、浅井 龍(Gt)、John(Ba)、今村 力(Vo)、ヤマザキタイキ(Gt)
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