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MOVIE
Mar 12, 2024
By YATA CHIHIRO

映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』 W主演・奥平大兼にインタビュー

左から小倉史也、鈴鹿央士、奥平大兼。

eスポーツ全国大会に挑む高校生たちの青春ムービー

 

若手俳優の奥平大兼と鈴鹿央士がW主演を務める映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が全国公開中。eスポーツを題材にした日本初の劇映画である本作は、実在する徳島の高等専門学校の男子学生をモデルにした青春映画だ。

 

電気科3年の田中達郎(鈴鹿央士)は、手首のケガでバスケットボールを断念して以来、モヤモヤとした日々を送っていた。成績は優秀だが、他人と群れることもなく、オンラインゲームに没頭。ある日、達郎の目に「全国高校eスポーツ大会 開催決定」というネット上の告知が飛び込んできた。しかも競技種目は、達郎が日本上位ランカーとして名を連ねる「ロケットリーグ」だった。この大会に出場すべく、同じクラスの小西亘(小倉史也)を半ば強引にチームに引き入れる。また、達郎が校内に掲示した部員募集のポスターを見た2年の郡司翔太(奥平大兼)も加わり、学年も性格も違う3人組が、ぶつかり合いながら全国大会に挑んでいくという物語だ。

 

「ロケットリーグ」とは、カーレースゲームとサッカーが融合したコンピュータゲーム。2015年ごろに登場し、今や世界競技人口は5,000万人といわれている。試合は33で行われ、ジャンプや飛行ができる車バトルカーを操作し、相手チームのゴールにボールを叩き込むというもの。制限時間内に、より多くのゴールを決めたチームの勝利となる。ルールはサッカーに近いが、オフサイドやファウルといったペナルティは一切なく、誰でも楽しむことができる。プレイヤーが高難度の技を披露すれば、観客からは大きな歓声が上がるダイナミックな競技である。

 

監督は、『ロボコン』や『のぼる小寺さん』など、数々の青春映画を世に送り出してきた古厩智之。企画・プロデュースは、「サクラ大戦シリーズ」などを手掛け、ゲーム界のレジェンドと称される、広井王子が参加している。

 

今回、家庭環境に問題を抱え、金髪にピアスというやんちゃな外見をしたキャラクター・翔太を演じた奥平大兼にインタビューを行った。16歳のときには、映画『MOTHER マザー』で長澤まさみ扮する母親の息子役で鮮烈なデビューを飾り、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63回ブルーリボン賞新人賞、第30回日本映画批評家大賞新人男優賞を獲得した期待の若手俳優だ。また、無類のファッション好きでもあり、弊紙45号のインタビューやファッションストーリーにも登場してもらっている。

 

 

ーー奥平さんから見た映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』の印象と、演じた翔太という役柄について教えてください。

「高専生がゲームを通して、いろいろな人と出会い、青春を謳歌する作品です。翔太は見た目こそ派手で、いわゆる“陽キャ”といわれるようなグループに属しているのですが、家庭環境が悪く、繊細な性格の持ち主で、周りの様子を伺って行動している人物です」

 

ーー初めて脚本を読んだ感想は?

「僕自身、ゲームには幼少期から慣れ親しんでいてゲーム好きなので、このような形でゲームの作品に、しかもW主演で携わることができて嬉しかったです。脚本を読んだとき、高専生がひとつになって同じ目標に突き進むことの尊さを感じました。撮影時は、僕が高校を卒業した直後だったので、高校生活を思い出して少し懐かしくもなりました」

 

ーー映画を通して観客に伝えたいことを教えてください。

「学生時代に何かに本気で打ち込んで、全力で楽しんだ経験は大人になるにつれてだんだんと減っていくと思います。そういった経験の大切さを感じていただきたいです」

 

ーー奥平さんが学生時代に熱中したことはありますか

「仕事以外だと、ゲームですね。よく同じ学校の友達と一緒にプレイしていました」

 

ーー撮影は徳島県の阿南地方、海沿いの地域で行われたとのことですが、印象に残ったエピソードを教えてください。

「撮影は、日和佐という漁港の町で行われることが多く、合間に散歩をすることがすごく好きでした。撮影現場の近くにあった日和佐城跡というお城に行ったのですが、そこは少し山になっていて太平洋が開けて見えて、すごく綺麗でした」

 

ーー劇中での3人は学年も性格もバラバラながら徐々に打ち解けていきますが、実際の撮影現場での関係性はどうでしたか?

「(鈴鹿)央士くんとは撮影初日なのに意気投合して、名物の徳島ラーメンを食べに行きました。というのも、ゲームのプレイ動画を映画化している本作では、劇中は3人同時にプレイしているように作られているのですが、実際の撮影は一人ずつ行われています。それぞれ個別で撮影したものを最後に合体してしまうと、テンションや温度感、スピードが合わなくなってくるので、例えば亘のゲーム画面の撮影中は、翔太と達郎もその現場に居合わせて、別室で音声だけで(リモートで)参加していました。その別室で央士くんと雑談をしていて、オフラインになっているかと思っていた音声が、実は小倉さんにも聞こえていたらしく……(笑) 撮影後に『さっき雑談していた話だけど』と話しかけてもらって一気に3人の距離が縮まりました」

 

ーーリモートのあるあるですね。では、劇中でお気に入りのシーンがあったら教えてください。

「達郎と翔太が初めて会うシーンです。翔太は、待ち合わせ場所に現れた年上の達郎に対し、気まずい空気を打破しようと思い、持っていたガムをあげます。この行動は台本になかったのですが、翔太ならどうするかなと現場で考えてやってみました。結果、2人の関係性をシュールに表すシーンに仕上がり、おもしろいなと思っています」

 

ーー役作りで苦労したことはありますか?

「“今っぽい高校生”を翔太で表現することです。撮影に入る前はそこをどう表現しようかと考えましたが、実際にやってみなければわからないな、と。ほかの共演者さんの空気感を現場で見ながら撮影を進めると、自然と高校生らしさが出てきました。また、僕は東京生まれ東京育ちなので、田舎町の風景に馴染むことを役作りの中では意識しました」

 

ーーこれからどのような俳優さんになっていきたいですか?

「憧れる役者像をあまり意識したことはないのですが、毎回ご一緒させていただいた監督をはじめスタッフのみなさんとまた別の作品でもご一緒できるように日々頑張っています」

 

 

 

ーー弊誌がファッション誌ということもあり、ファッションのことについても聞かせてください。最近気になっているファッションブランドはありますか?

「中学生のときにすごく好きだった《マリアーノ》が、今もまた自分の中でブームになっています。改めて、かっこ良さを実感しています」

 

ーー2024年春夏で欲しいアイテムはありますか?

「去年もかなり着ていたのですが、タンクトップです。春先はシャツなどと合わせたり、夏は潔く一枚で着たりしていました。タンクトップってすごく楽なのに、Tシャツより個性的になれるおもしろいアイテムだと思います。今年も、存在感のあるデザインの効いたタンクトップを探したいです。去年のお気に入りは、ネットの古着屋さんで購入した、青色でひらひらしている、舞台衣装のようなタンクトップでした」

 

ーーでは、古着で狙っているアイテムはありますか?

「僕、冬はミリタリーウエアしか着ないくらい、ミリタリーが好きなんです。今は、フランス軍で使われていた“ブレッドバッグ(パンやチーズなどの食料品を収納するために支給されたバッグ)”が欲しいです。あと、テントも入れられる巨大な巾着バッグ“ダッフルバッグ”。プライベートでそんな大きいバッグは使わないですが、ミリタリーにしかないアイテムですよね。ヴィンテージのミリタリーは既にどこか破れていたりするので、自分でリメイクをすることもあります。僕が古着が好きな理由は、新しい服にはない歴史がその一着に詰まっているからです。軍服やワークウエアの歴史を学び、何のために作られたアイテムなのか知ったうえで着ることが好きです」

 

ーー演技以外で挑戦して見たいことを教えてください。

「……たくさんあります(笑)。 やはり服が好きなので、服をデザインしてみたいですし、音楽も制作してみたい。映画には出させていただいていますが、いつか撮る側も経験したいです」

奥平大兼

おくだいらだいけん 2003年、東京都出身。『MOTHER マザー』で長澤まさみ演じる秋子の息子・周平を演じ、鮮烈なデビューを飾る。同作にて第44回日本アカデミー賞 新人俳優賞、第94回キネマ旬報ベスト・テン 新人男優賞、第63回ブルーリボン賞 新人賞など数々の新人賞を受賞。
主な出演作にアムネスティ国際映画賞・特別表彰 日本作品初授与となった『マイスモールランド』、『あつい胸さわぎ』、『ヴィレッジ』、『君は放課後インソムニア』などがある。ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」に出演して、その演技力が話題となった。世界配信中のディズニー+オリジナル作品『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』で主演を務め、2024年3月26日放送のNHK創作ドラマ「ケの日のケケケ」への出演も決まっている。

PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』

全国公開中

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配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2023映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』製作委員会

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