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ART
Oct 28, 2020
By THEM MAGAZINE

YURIE NAGASHIMA | B&W

再認識されるイメージの手触り

写真における物質性が問われる時代がきた。インターネットの影響で、写真の持つ物質性がどんどん希薄になり、コロナ禍におけるステイホームやリモートワークがそのスピードに拍車をかける。インターネットの世界からモニターを通して、イメージは洪水のように人の目に流れ込み、ただ過ぎ去っていく。イメージという概念、その価値基準が大きく変わる中、写真を固形物としてアウトプットすることにどのような意味があるのか。その問いに、アーティスト長島有里枝が挑む。

 

©Yurie Nagashima / MAHO KUBOTA GALLERY

東京・神宮前にある「マホ クボタ ギャラリー」では4年半ぶりとなる本展では、祖母から引き継いだ大量の押し花から制作した8×10のフォトグラムや、木板に写真用感光剤を塗布してプリントした風景作品など、物質としての写真に焦点を置いたインスタレーションを展開。これまで長島は、アイデンティティや家族など、他者との関係性をテーマに作品を制作し、近年では女性のライフコースに焦点を当てたインスタレーション作品を展開してきた。今年に入っても、著作『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』の上梓や、NYの「ダッシュウッド」から写真集『セルフ・ポートレイツ』を出版するなど、精力的な活動が光っている。近年、暗室作業中に写真の重みや手触りの重要性を再認識したというインスタレーション作品の本質は、モニター越しではなく、ギャラリーに足を運んでこそわかる。

B&W

TERM ~11月21日
PLACE マホ クボタ ギャラリー
ADDRESS 東京都渋谷区神宮前 2-4-7 1F
OPENING HOURS 12:00–19:00(火-土)
URL mahokubota.com

長島有里枝

ながしまゆりえ 1973 年、東京生まれ。95 年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業、99 年カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修士課程修了、2015 年武蔵大学人文科学研究科博士前期課程修了。01 年、第 26 回木村伊兵衛賞受賞、10 年『背中の記憶』(講談社)で第26 回講談社エッセイ賞を受賞。主な個展に 17 年「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、東京)など。

 

 

Edit_KO UEOKA

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