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CULTURE
Dec 24, 2019
By THEM MAGAZINE

CROSS INTERVIEW between KOHH×KEKRA×CHIKASHI SUZUKI

CROSS INTERVIEW between KOHH×KEKRA×CHIKASHI SUZUKI


国内のみならず、海外にまでその名を轟かせる日本人ラッパーKOHH。そして、フランスで近年もっとも注目されるラッパーのひとりであるKEKRA。日本のファッションやカルチャーへ深いリスペクトを持つKEKRAの来日に際して、日仏を代表する二人のラッパーによるフォト・セッションが実現した。
『Them magazine』No.27では、独自のスタイルを持つふたりが愛用する《メゾン マルジェラ》によるファッションストーリーを掲載。ここでは撮影後、本企画の撮影を行ってくれた写真家の鈴木親を含めた、三者によるクロストークをお届けする。

 

English Text here

 

鈴木親(以下S):二人はこれまで会ったことがあるの?

 

KEKRA(以下Ke):いや、残念ながらこれまでなかったんだ。パリにいるときは常に身近な人たちといるようにしているから、他の国から人が来てもあんまり会わないんだよね。俺が東京に来るときは、毎回新しい人たちと出会うんだけど。

 

S:KOHH君もだよね。

 

KOHH(以下Ko):自分もほぼ王子からは出ないですね。KEKRAと同じように、兄弟や友達としか一緒にいなくて。「Dogs」(注:KOHHがディレクションを手がけるセレクトショップ)もやってるし。

 

Ke:今日も開いてるの?夜行きたいんだよね。

 

Ko:いつでも来てよ。

 

S:KEKRAが育ったのは、パリのどのあたり?

 

Ke:バンリューと呼ばれているパリの郊外で、(ポストコードが)92から始まる地区だね。王子と同じようなところかな。

 

S:今はどこが好き?

 

Ke:やっぱり自分が住んでいるところが一番好きだね。開発が進んで、隣の地域がヨーロッパでの金融エリアになったんだ。ビジネスマンやブリーフケース、高層ビルというものは自分たちには関係のないものだったけど、毎日この風景を見ていたよ。

 

S:《マルジェラ》を知ったのはいつ頃なの?

 

Ke:7,8年前くらいかな。(治安の悪い地域だったから)街で《マルジェラ》を着ている人はみな盗難品だと疑われて、警察に捕まったりしていたんだ。それで《マルジェラ》を知るようになって、お店に行って買うようになった。匿名性というメゾンのコンセプトを知ってもっと好きになったんだよ。

 

S:そのときはもうマスクはしてた?

 

Ke:いや、していなかった。マスクをするのは、自分の周りの人間や家族をプライバシーを守るためなんだ。昔は悪いことをするときに被っていたけどね。

 

S:KOHHくんは?

 

Ko:自分が知ったのは…5,6年前くらいですかね。そのころはまだ見るだけだったんですけど。最初に買ったのは古着で、テープが付いている壊れてるスニーカーですね。

 

Ke:俺の最初の《マルジェラ》は茶色のスエードのレプリカ(スニーカー)かな。その後からデニムシャツや、レザーのロングコートも買ったんだ。

 

S:僕が昔パリにいて仕事していたときは、どちらかというとロックミュージシャンが《マルジェラ》を着ていたんですよ。今ではヒップホップがレベルミュージックになって、彼らが新しいことは革新的なことを音楽でやろうとしてるから、ファッションで同じ役割を担っている《マルジェラ》に惹かれるんだと思う。KOHH君の周りにも《マルジェラ》を着る人が多そうだけど?

 

Ko:なんだろう…。自分たちの周りでは《マルジェラ》はもう神、みたいな感じで(笑)

 

S:KOHH君は最初に買ったのは古着って言っていたけど、現クリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノが作る今の《マルジェラ》らしいアイテムが好きだよね。テーラリングとか、ジェンダーレスなものとか。

 

Ko:今デザインしているのがジョン・ガリアーノだからそうなだけかもしれないですけど…。

 

S:ウィメンズも着てたけど、もともと私服とかもそうだもんね。

Ko:ファッションに興味を持ち始めたころから、自分の中だと洋服である以上、メンズ、ウィメンズというものはないですね。何かを参考にすることもなく、着たいものをなんとなく感覚で選んで、それを着る感じ。

 

Ke:着たいものをただ着るだけでいいんだよ。

 

Ko:サイズさえよければね(笑)

 

Ke:俺が洋服を選ぶ基準は快適であること、だね。着ていて居心地がいいことが何より。

 

Ko:自分も。

 

S:二人とも“先入観”というものがないよう感じがするよね。KOHH君は目の前にある服がウィメンズであってもいいと思えば普通に着こなすし。知らない人に会ってもフラットに接することができたり。古い世代は先入観をもとに動くことって多いけど、二人はそこを全然感じないよね。KOHH君が無意識なのはわかるけど、KEKRAもそうなの?

 

Ke:無意識だね。それはさまざまな国を旅行したり、親戚がロンドンに住んでいたりするからだと思う。14歳ではじめて行ったんだけど、そのときに見たスタイルに衝撃を受けたんだ。パリのスタイルに似たアティチュードがあったけど、不完全だったり。
日本のファッションからも影響を受けたよ。日本にはたくさんのブランドがあるけど、日本人のファッションを捉える感覚がとても”精密”で、いい意味でショックを受けたよ。心から情熱を持てるものや、好きなものに対して細かなディテールにこだわる日本人の感覚が好きなんだ。

 

S: 本当に日本が好きなんだね。KOHH君も先日パリに行ってたけど、どこがよかった?

 

Ko:どこがどこだがわかってないんですけど、広場みたいな…。

 

Ke:わかった。10区だね。バーバーとかたくさんあったでしょ?

Ko:そうそう!

 

Ke:パリでは何をしたの?

 

Ko:ショールームを回ったりしてたけど、あとは食事とか買い物とかバーバーショップとか、そのくらいかな。友達何人かと。

 

Ke:来年もパリに来るの?

 

Ko:1月に行くつもり。

 

Ke:仲間たちと一緒に遊びに来てよ。知り合いにラッパーは多いの?

 

Ko:そんなに多くないかな。404 human は知ってる?プロデューサーの。

 

Ke:彼は友達だよ!

 

S:KOHH君はパリでミュージックビデオを撮ったこともあるよね。KEKRAは?

 

Ke:もう5~6作品撮っているよ。3年前に初めて撮って、その翌年もう一回制作して。来るたびに撮影していて、今回(の来日)も昨日から撮り始めたんだよ。

 

S:交錯してるね。そしてようやく出会えたわけだ。

 

KOHH

東京都北区王子生まれ。2013年11月『YELLOW T△PE』を発表。2014年7月に2ndアルバム「MONOCHORME」をリリースし、2015年1月に1stアルバム「梔子」を発表。同年10月には3rdアルバム「DIRT」、2016年6月に4thアルバム「DIRT II」を発売した。HIP HOPアーティストの枠にとどまらず、ファッション・アイコンとしても支持を集めるなど、世界的に注目される存在へと急成長を見せている。

KEKRA

フランス、オー=ド=セーヌ出身。フェイスマスクで顔を隠した匿名ラッパーとして知られ、ノンシャランなフロウと巧みなメロディセンスの融合が特徴。フランスで注目されるラッパーの一人に数えられる。KEKRAとは、スラングの’Crack’に由来するという。3年間で5枚のアルバムをリリース。日本のカルチャーをリスペクトし、日本でのPV撮影も数多く行っている。

CHIKASHI SUZUKI

1972年生まれ。1998年渡仏。雑誌『パープル』にて写真家としてのキャリアをスタート。国内外の雑誌から《イッセイ ミヤケ》や《トーガ》、《セビット》《グッチ》のコマーシャルなどを手がける。

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