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ART
Mar 02, 2022
By THEM MAGAZINE

DEANA LAWSON | Deana Lawson

差別の爪痕、彩り鮮やかに

リサイクル品や色あせたレースカーテン、破れて今にも崩壊しそうなベッド。フレームから排除しがちなこれらの人間味あふれる要素を、アメリカの写真家、ディアナ・ローソンは意識的に写し出す。

 

世間と黒人コミュニティの接点をさらに増やしたいと考えるローソンは、黒人の家庭や貧困、性差別などを題材に撮影。ローソンの作品の中でも、ロンドンの歌手ブラッド・オレンジのアルバム『Freetown  Sound』のジャケットになった、男女がベッドルームで抱き合う写真を知っている人は多いのではないか。

 

本書は、15年の歳月をかけて撮られた作品と彼女自身について書かれた初めての学術的な一冊。スタジオ撮影のポートレートや演出された活人画、ドキュメンタリー写真などを網羅するボリューム満点の写真集だ。

ローソンの作風は、パートナーである画家のアーロン・ギルバートの表現方法に早い段階で影響を受けている。特に色に関しては、「絵画のように、パレットを意図的に調和させたり、不調和にさせたりしたかった」と語り、色やアイテムが足りない場合はリサイクルショップで小物を買い足しているそうだ。

 

作品制作のプロセスはまちまちであるが、街中で見かけた人の家に行き、実生活を自然に撮ることもあれば、まったく関係のない他人をカップルに見立て、事前に練られた構図やポージングで撮影することも。

 

全裸の女性が身体の柔軟性を強調する写真では、黒人女性を取り巻く差別を訴える。褐色の身体を「目に入れるのに抵抗があるもの」として扱われた経験に抗い、「私たちの身体は見られるべき美しいもの」であると主張する。

 

撮影の裏話を語った本書掲載のインタビューも是非読んでみてほしい。差別の歴史や生活、セクシャリティと対峙するローソンの覚悟が感じ取れるだろう。

 

¥ 7,700(twelvebooks)

DEANA LAWSON

ディアナ・ローソン 1979年、ニューヨーク生まれ。ペンシルベニア州立大学を経て、2004年、アメリカの美術大学RISDで写真の修士号を取得。2014年には初となる個展をシカゴにて開催。2020年にヒューゴボス賞を受賞。現在はプリンストン大学にて写真の教授をしている。

 

Photography_TORU OSHIMA.

Edit_CHIHIRO YATA.

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