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MUSIC
Aug 12, 2020
By THEM MAGAZINE

Letter Exchange 4/8 – Bing & Ruth / 原 摩利彦

音楽家、 原 摩利彦と、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト、ビング・アンド・ルースによる、計8通にわたる往復書簡。

今回より始まる第二通目のテーマは、「インスピレーションは何から受ける? 最近ハマっていることは?」。

 

 

1.【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

2,【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」デヴィッド・ムーア→ 原 摩利彦

3.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

4.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

5.【三通目】 「最近、何を聴いている?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

6.【三通目】 「最近、何を聴いている?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

7.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

8.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

 

Diary #2 from Bing & Ruth to Marihiko Hara

インスピレーションは何から受ける? 最近ハマっていることは?

 

お手紙ありがとうございます。オーディエンスの前でライブ演奏をすることは新たな道へとつながっているという感覚など、僕たちはたくさんのことについて同意見を抱いているみたいですね。人々が全員一緒に集まっていること、ひとつになっているということには、演奏に不可欠な命を吹き込む何かがある気がします。

ブルックリンにあるグリーンウッド墓地の春の開花

僕にとっても旅行はインスピレーションの源です。あなたのおっしゃるような新しい人たちとの出会いというより、慣れない土地の居心地の悪さから影響を受けます。僕は自分自身を自宅から切り離し、馴染みのない場所の中に自分の身を置くというルーティーンが好きです。そのルーティーンが、他の方法ではどうやって生み出すのかはわからないような自分自身のクリエイティビティーを引き出すのに役立ちます。今の時期まったく旅行しないということはとても辛いですが、僕はインスピレーションを受けるための新たな方法を見つけているところです。いつも夜遅くに働くのですが、最近では午後や日が暮れた頃に働いていて、これがいつもとは異なる僕の一面を引き出してくれると思っています。

メキシコ・シティーから自宅に向かっている道中。最後に飛行機に乗ったときのもの

僕と僕のパートナーは8月中、田舎に戻ります。1カ月間木々に囲まれた場所で過ごすのはとても気持ちがいいはずです。絶対にピアノのことが恋しくなると思いますが、何かを思って寂しくなることは自分にとってよいことでもあるはずです。それは僕が信じるものであって、毎日のようにもっともっと恋しく思う今このときを乗り越える助けをしてくれる何かでもあります。それはレストランでランチを食べるような、夕食に友人を招待するようなシンプルなこと。僕らは最近数人の友人に会うことができましたが、大体の時間を2人で過ごしています。この間ようやくビーチに行くことができました。

ピザの箱で作った手作りチェスボードとコニー・アイランドにて

僕のアルバムは先週リリースされ、作品が発売された大きな解放感を抱いています。ただ、リリース後にちょっとした憂鬱感も感じています。この感覚は子供を大学に送り出すようです。彼らのことを愛しているのと同時に誇りに思っていて素晴らしい学校に行くのだとわかっていても、さよならと告げるのはとても辛いです。この作品は我が子のようです。自分のアルバムを出したときに何か大きな感情を抱きますか?どうやってその感情を整理していますか? アルバムのリリースはあなたを前向きにさせますか? それともあなたを傷ついた気持ちにさせますか?

 

この混乱の時期が過ぎ去ったいつかあなたに会えることを心から願っています。その時まで、あなたとの文通を楽しみにしています。

両アーティストによる新アルバムをチェック。(左)PASSION - 原 摩利彦 (右)Species - Bing & Ruth

 

 

原 摩利彦

京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程中退。音風景から立ち上がる質感/静謐を軸に、ポスト・クラシカルから音響的なサウンド・スケープまで、舞台・ファインアート・映画など、さまざまな媒体形式で制作活動を行う。ソロ・アーティストとしてアルバム『Passion』『Landscape in Portrait』、をリリース。坂本龍一とのセッションやダミアン・ジャレ+名和晃平「VESSEL」、野田秀樹「贋作 桜の森の満開の下」の舞台音楽、ANREALAGEパリコレクションのショー音楽などを手がける。アーティスト・コレクティブ「ダムタイプ」に参加。

 

 

Bing & Ruth

ビング・アンド・ルースは、NYブルックリンのピアニスト兼コンポーザー、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト。ニューヨークのグリニッジ・ビレッジにあるニュー・スクール・フォー・ジャズ&コンテンポラリー・ミュージックで学んだデヴィッド・ムーアは、2006年にビング・アンド・ルースとしての活動をスタート。初期作品はエレクトロニクスとアンビエント・ドローンが交差するサウンド・プロダクションで注目を集め、〈4AD〉からリリースした前作『No Home of the Mind』は米Rolling Stoneなど各メディアから絶賛された。

 

Edit_Ko Ueoka.

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