Them magazine

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MUSIC
Aug 05, 2020
By THEM MAGAZINE

Letter Exchange 3/8 – Bing & Ruth / 原 摩利彦

音楽家、 原 摩利彦と、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト、ビング・アンド・ルースによる、計8通にわたる往復書簡。

今回より始まる第二通目のテーマは、「インスピレーションは何から受ける? 最近ハマっていることは?」。

 

 

1.【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

2,【一通目】 「最近、どんなふうに過ごしていた?」デヴィッド・ムーア→ 原 摩利彦

3.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

4.【二通目】 「インスピレーションは何から受ける?最近ハマっていることは?」 デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

5.【三通目】 「最近、何を聴いている?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

6.【三通目】 「最近、何を聴いている?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

7.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」原 摩利彦→デヴィッド・ムーア

8.【四通目】 「この先の暮らし方とは?」デヴィッド・ムーア→原 摩利彦

Diary #2 from Marihiko Hara to Bing & Ruth

インスピレーションは何から受ける? 最近ハマっていることは?

 

まず最初にこちらからもお祝いの言葉を送ります。ご結婚おめでとうございます。パートナーの方は、子どもたちに明るい未来を提供する素晴らしいお仕事をされているのですね。私は大学では生涯教育学(Life-long Learning)を専攻していました。いくつになっても学ぶことは世界を広げてくれることをいつも感じています。

 

なんてかわいいワンちゃん!あなたがサイレンスではなく、静けさ(the quiet)を求められたことに共感します。そこではどんな音がしているでしょうか。そこで食べる朝食はどんなにおいしいでしょう。想像するだけでこちらも気持ちが落ち着きます。朝食といえば、ジョン・スタインベックの短編”Breakfast”を思い出しました。それにしても新種の花の開発までされてるんですね!

 

コンサートは早くしたいです。今年は新しいアルバムとともに各地をまわろうとしていたので残念です。即興ピアノ演奏をよくしますが、お客さんの前だと普段絶対に弾かないようなフレーズが出てきます。やはりライブは違いますね。

心静かになりたいとき、よく湖に行っていました。

 

連日雨が降っています。梅雨が明けたらあの京都の暑い夏がやってきます。外に出られないのはなかなか辛いものです。たくさんの人が家の前の通りを歩いていますが、私たちはまだしばらくは家にいることにしています。

 

自然の中で耳を澄ますと聞こえてくる音世界—-音の種類や動き、音量、移り変わりなど—-から音の配置の仕方やミキシングを学びました。インスピレーションの源です。それから旅行。現地の言葉を1つでも2つでも使って現地の人と話すことが好きで、その一瞬だけの出会いは音と音とが出会って音楽が生まれるのと似ているような気がします。どちらもしばらくはお預けですね。

祖母は1968年に撮影したニューヨーク?の写真

妻と子どもが寝た後の、次の授乳までの数時間を小さな仕事部屋で過ごします。現時点でやり残していることに少しずつ取り組んでいます。主に読書と勉強ですね。音楽は毎日曲ずつこれまで聴いてこなかったものを聴いています。最近気に入ったのはYussef KamaalやJamila Woods。クラシックではワグナーを丁寧に聴いています。映画やドラマももちろん。そしてお気に入りの文具たちに助けられて考え事をします。ノートに考えや計画を書いていると、だんだん音楽をつくりたくなってきます。

スケッチ用五線譜。黄色のメモパッドとマニラファイルはよく法廷ものの映画で見かけるものです。

悲惨なニュースはこちらにも届いています。残念ながら差別はここでも根深く存在しています。特に日本では言葉による差別が深刻です。言葉は本来分かり合うため、尊重し合うために在るはずなのに。我々は言葉をもう一度慎重に見つめ直さないといけません。

次のお便り楽しみにしています。

両アーティストによる新アルバムをチェック。(左)PASSION - 原 摩利彦 (右)Species - Bing & Ruth

 

 

原 摩利彦

京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程中退。音風景から立ち上がる質感/静謐を軸に、ポスト・クラシカルから音響的なサウンド・スケープまで、舞台・ファインアート・映画など、さまざまな媒体形式で制作活動を行う。ソロ・アーティストとしてアルバム『Passion』『Landscape in Portrait』、をリリース。坂本龍一とのセッションやダミアン・ジャレ+名和晃平「VESSEL」、野田秀樹「贋作 桜の森の満開の下」の舞台音楽、ANREALAGEパリコレクションのショー音楽などを手がける。アーティスト・コレクティブ「ダムタイプ」に参加。

 

 

Bing & Ruth

ビング・アンド・ルースは、NYブルックリンのピアニスト兼コンポーザー、デヴィッド・ムーアを中心とした不定形な室内音響アンサンブル・プロジェクト。ニューヨークのグリニッジ・ビレッジにあるニュー・スクール・フォー・ジャズ&コンテンポラリー・ミュージックで学んだデヴィッド・ムーアは、2006年にビング・アンド・ルースとしての活動をスタート。初期作品はエレクトロニクスとアンビエント・ドローンが交差するサウンド・プロダクションで注目を集め、〈4AD〉からリリースした前作『No Home of the Mind』は米Rolling Stoneなど各メディアから絶賛された。

 

Edit_Ko Ueoka.

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