FEATURE | 23, Jun, 2020

The LATEST MUSIC -今週聴きたい新譜 『UNTITLED (Black Is)』-

Them magazineがオススメする今週聴きたい新譜、今週の一枚はこちら。

Sault『UNTITLED (Black Is)』

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2019年に『5』『7』と、突如として立て続けに数字を冠したアルバムをリリースし、一気に火がついたロンドンの正体不明アーティストSault。ファンクやアフロビート、ESGなど80年代の音を取り込みながら繰り広げる、ざらついたダイナミックなサウンドが持ち味だ。

アーティストはトリオであるとされ、楽曲のクレジットから推測するに、リトル・シムズやジャングルのプロデューサーであるDean “Inflo” Wynton Josiah、シンガーのCleo Sol、 Melisa Youngの3人 ではないかというのがもっぱらの噂。(確かにリトル・シムズの『グレイ・エリア』とサウンドの感触は似ている)

 

6/19にリリースされた今作『UNTITLED (Black Is)』は、ブラック・ライヴス・マター(以下BLM)に触発されて制作された、渾身のプロテストアルバムだ。20 曲、56分という充実の内容で、終始すべての曲でBLMについて歌われている。

アルバムは、”The revolution has come (Out the lies).  Still won’t put down the gun (Out the lies)”と手拍子&合唱される曲「Out the lies」からスタートし、4曲目「Don’t Shoot Guns Down」ではポリスカーのサイレンの音が組み込まれ、”Don’t shoot, guns down. Racist policeman”というワードが、アナウンスのような機械的な声で繰り返し唱えられる。

6曲目の「X」は、おそらくマルコムXが由来。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後にマルコムXがコメントした”Chickens come home to roost”(因果応報の意)というワードも歌詞に盛り込まれている。

 

『UNTITLED (Black Is)』は、怒りに満ち満ちたプロテストアルバムではあるが、今が世界が変わるときだと、前を向いているアルバムでもある。

ラスト3曲「Miracles」「Hold me」「Pray up Stay up」は比較的甘く和やかなサウンドで、「世界が変わるまで止まらないぞ!」と歌う。歌詞は簡単なワードが多く短文で、非英語圏の人にもわかりやすかったり、BLMを世界的に盛り上げるための華麗な手段にも見受けられる。この冷静な視点は、SalutはBLM真っ只中であるアメリカのアーティストではないからこそか。

2020年のBLM運動の発端とも言える「ジョージ・フロイドの死」からまだ一ヶ月も経っていないこのタイミングで、このクオリティのフルアルバムをリリースできる、圧倒的な制作スピードには驚愕。「止まらない」ためのガソリンとなるか。今聴いてこそ、もっとも意味のあるアルバムかもしれない。

 

 

Edit_Ko Ueoka