PHOTOGRAPHY BY TYLER KOHLHOFF

FEATURE | 11, Dec, 2017

【インタビュー】KOZABURO AKASAKA (アーカイブ)

(2017/04/24発売のThem magazine No. 014 「The ARTIST」に掲載されたアーティクルです。)

 

2017年4月に発表された「LVMH プライズ」で、日本から二人がファイナリストとして選出された。一人が《AMBUSH®》のYoon氏、そしてもう一人が《KOZABURO》のデザイナー、赤坂公三郎氏だ。ニューヨークを拠点に活躍する赤坂氏が手がける服は、一度見たら忘れられないほど強いインパクトを放つ。紙ヤスリで加工したテクスチャー、真っ赤なブーツ、独特なパンツシルエット。それらの要素が単なるこけおどしではなく、確固たるテーラリング技術のもとに作られ、彼独自の世界観を作り上げているのだ。今、世界中の注目を集めているこの若きデザイナーは、一体何を考えて服を作っているのだろうか。そもそもなぜデザイナーを志したのか。彼のクリエイションの根源を探るべく、話を伺った。

 

————まずはじめに、ファッションに目覚めたきっかけを教えてください。

 小中学生のころから長兄の影響で海外のアーティストばかり聴いたり見たりしていました。90年代は音楽の映像化が盛んな時期でしたから。ニルヴァーナやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど、グランジやニューメタルのバンドが好きでしたね。それから50年代から80年代のバンドの音楽と映像に触れるようになりました。彼らが独自の格好でミュージックビデオやライブに出ていたのを見て、ファッションに興味を持ち始めました。

 

————そのころから自分で服をデザインしたいという思いはあったのでしょうか?

 いや、当時はただ単純にバンドマンへの憧れでした。日本ではバンドブームが起こっていて、逆輸入でハイ・スタンダードなんかが流行っていた時代だったので。私自身も実際に友達とバンドを組んでいたりしました。

 

————では、本格的にファッションの道へ進んだのはいつごろでしょうか?

 大学中退後ですね。音楽以外に哲学にも興味があったので、四年制大学の哲学科に進学したのですが、大学3年生の時に将来何がしたいか真剣に考えてみました。当時は大学での学問と並行して専門学校の友人たちと服作りをしていて、やっぱりファッションの仕事がしたいなと。その話を父にすると、「ファッションで一番いい学校に入ったら卒業するまで費用は面倒見てやるから」と言われて。「お願いします」ということで、セントマーチンズへの入学を目標にとりあえずロンドンに向かいました。英語、ファッション、芸術の教養は無く当時はまだセントマーチンズに入れるかどうかも全然わかんなかったのですが。

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KOZABURO 2    Photographer : Michael Ray Ortiz

 

————セントマーチンズで学んでよかったことはなんでしょうか?

 やはり人との出会いです。カリキュラム云々というよりも、世界中から面白い人たちが集まるこの学校でさまざまな人に出会い、自由に想像力を競い合ったことが一番いい経験になったと思います。今はもうデザイナーとして活躍している仲間たちと学校、私生活の時間を共に過ごしたことはいい思い出ですね。

 

————セントマーチンズ卒業後はなぜ《トム ブラウン》を選んだのでしょうか?

 当事、《トム ブラウン》が一番パンクだと思ったからです。私がまだセントマーチンズに在学していたときに、《トム ブラウン》がミラノファッションウィークのゲストデザイナーとしてショーを行ったのですが、同じスーツを着たモデルが40体ほど登場したんです。その時は度肝を抜かれました。私の中にはパンクやロックが相変わらず根底にあって、ヴィヴィアン・ウエストウッドや(ジョン・)ガリアーノをはじめとする、いろんなパンク精神を表現するスタイルが好きでよく見てきたのですが、当時の《トム ブラウン》のショーは今までのありきたりなやり方をアイデアひとつでひっくり返していました。作品と表現に宿る彼自身の信念と反骨精神が当時顕著に私に響いていました。デザイナーのトムも興味がある存在だったので、一緒に働いてみたいという思いがありました。

 

————実際、《トム ブラウン》で働いてみていかがでしたか?

 私が初めてトムとお仕事させていただいたのは在学3年生と4年生の間でのインターンシップでした。そのころ《トム ブラウン》は、レピュテーションは大きかったものの、まだとても小さい会社だったので、本当に何から何までさせてもらいました。そこでファッションの会社の全体像を知ることができましたし、何よりトム・ブラウン本人と近くで仕事をさせてもらえたというのはとても貴重な経験でしたね。

 

————その後、ロンドンからニューヨークへ?

 はい。卒業後に《トム ブラウン》から正式な形で仕事のオファーがあり入社しました。数年間の経験の後、自分の物語、信念を作品を通して伝えたいという欲求が高まってきました。私がいいと思うファッションデザイナーは、我が強くて、彼らなりの自己解釈があって、彼らなりの物語があって、それをコレクションに反映しているんです。トムももちろんその一人なのですが、時が経つにつれて私自身の欲求が高まりに伴い、お互いの表現方法の違いに気付きました。それは決して悪い意味ではなく、お互いのヴィジョンを尊重しあっていたという意味です。彼から教わった教訓は「Be true to yourself」。それは今でも守っています。

 

————そこから独立にいたったんですね。ニューヨークを離れようという思いはなかったんですか?

 私生活で今はここが一番make senseなのと、私が聴いてきた音楽の中でもアメリカ、特にニューヨークは影響力があって、憧れの街のひとつだったので。しばらくはニューヨークを拠点にすると思います。

 

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KOZABURO 3  (LOOK)Photographer : Michael Ray Ortiz

 

————トム・ブラウンの他に影響を受けたデザイナーやブランドがあれば教えてください。

 一番ファッションへの興味が高まっていたときに活躍していたのがガリアーノとエディ・スリマンです。日本のブランドだと《アンダーカバー》や《ナンバーナイン》が好きでしたね。

 

————コレクションについてお聞かせください。《KOZABURO》では、毎シーズン何らかのテーマを設けていますか?

 特にテーマらしいテーマはないですが、私自身の中で何が好きだとか、どういったものを表現したいかは常にあります。それが今の自分にとってと、オーディエンスにとって何をどうすれば一番フレッシュに見せられるのかを考えていますね。私自身、ディテールがすごく好きなので時期によってこだわっているディテールはさまざまだと思いますが、根本にあるメッセージ的なものやビジュアル的なものは変わりません。

 

————そのディテールで気になったのですが、コレクションではよくサンドペーパーを使用していますね。

 これも私の根底にあるパーソナリティと興味のある音楽に繋がる話なのですが、好きなミュージックのテイストや自身のパーソナリティを考えたとき、共通するのは攻撃的な面と繊細な面を兼ね備えているということです。だから私も作品でこの二面性を表現したいと考えています。サンドペーパーには、針があるわけでもなく、切ったり焼いたりする攻撃性があるわけでもない。「擦る」という受動的な攻撃性なんです。見た目に暴力性はないけど、対象が近寄ることで初めて対象を傷つける。私が好きなドゥルッティ・コラムというバンドは、ファーストレコードのジャケットに、このサンドペーパーを使用していたんです。他のレコードと棚に並べると、レコードを取る際に隣のレコードスリーブを傷つけてしまう。攻撃的な姿勢と彼らが作る繊細な音楽の二面性から共感やインスピレーションを得ます。

 

————コレクションをシーズンで区切らずに発表しているのは意図的なことでしょうか?

はい、私の中でシーズンはあまり関係がなかったので。私の初めてのコレクションはセントマーチンズを卒業した2011年のときなのですが、それからイレギュラーに発表しているので、S/SやA/Wといった表現をあまりつけたくなかったということもあります。ですが最近、レギュラーシーズンで発表するような体制も考え始めているので、タイトルのつけ方を考えていますね。

 

————コレクションでは赤を使ったアイテムも印象に残ったのですが、赤という色はやはり重要な色ですか?

 特に意識はしていません。今の自分の中では好きな色が決まっていて、青、紺、そして白と黒です。自分が着たいなって思うものとか、人に着てほしいって思ったものとかを考えたときに、その色が一番先に思い浮かぶので。そこに差し色を入れたいなってときに赤がよく出てきますね。どれも意識せずに、服作りの際に自然でストレスのない色だから使っているだけです。

 

————なるほど。その差し色がとても印象的でした。

 自然と目に入りやすい色ですからね。日本でも昔から色付けでよく使用される色ですし。

 

————今日本というワードが出ましたが、日本の文化についてはどう思いますか?

「もったいない精神」は日本独自で素敵なものだと思います。私は音楽にしろ服にしろ、作り手の思いが伝わってくるものが好きなんです。日本の服って伝統的なものでも根底にもったいないっていうのがあって、着古したものでも残したり繕ってまた着たりするじゃないですか。時間とともに作り手や持ち主の思いが蓄積されていく。私はそういうところが日本の特徴的なところであり、素晴らしいところだと思います。

 

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KOZABURO 2016-17 A/W  Photographer : Sam Rock

 

————あなたにとってのファッションアイコンはいますか?

 いっぱいいます。なかでも音楽的にも存在的にもモリッシーは好きですね。彼は自分の信念があり、アーティスティックかつ知的です。あとニール・ヤングもそうですね。彼らや彼らの音楽が常に何かしらのイメージとして頭の中にあります。

 

————好きな言葉はありますか?

「襤褸(ぼろ)を着てても心は錦」です。見た目はみすぼらしくても、心は気高く豊かでありたい。私の服の見方ってブランディング云々ではなくて、服と服を着ている人間の関係から出来上がるインディビジュアルな表現から来ているんです。グランジでボロボロの服を着たりしていても、その中に服を着ている人の信念が現れていたり、そのハーモニーで自己表現できている時が美しいと思います。私にとってはどこかの高いブランドのジーンズを履いてるより、穴が開いても自分で直して着ているジーンズのほうがカッコいい。でもそれって心の内面や精神性とかを兼ね備えたときに、初めてスタイルとして成り立つファッションだと思うんですよ。一人の人間としてのインディビジュアリティを主張する手段というか。そういうことを自身の作品でも表現していきたいと思っています。

 

————好きな音楽は伺ったので、好きな映画を教えていただけますか?

 たくさんあります。昔よく観ていたので。いっぱいあげていいですか?(笑) 監督としては、ガス・ヴァン・サントやマーティン・スコセッシ、ジム・ジャームッシュ、スタンリー・キューブリック、ギャスパー・ノエとか。俳優では、リバー・フェニックスとジョニー・デップ、ディカプリオ、マット・ディロン。好きな映画は、『マイ・プライベート・アイダホ』に『タクシードライバー』、『ランブルフィッシュ』、『アウトサイダー』あたりですね。やはり自身のファッションやスタイルで影響されたのは、そういう青春を描いたような映画ですね。あと『ランニング・オン・エンプティ』とか『ボーイズ・ライフ』、ヴィンセント・ギャロの映画なんかも好きです。私のアメリカへの憧れって、こういうところからきているのが多いんだと思います。

 

————最後に、今「LVMH」のプライズにノミネートされていますが、発表された際はどういったお気持ちでしたか? また、今後の展望もお聞かせください。

 ニューヨークで一人の外国人としてファッションをやるにあたって、大変なときがたくさんあったのですが、自分がいいと思ったものを自分に正直に作り続け、それが認められた瞬間だったので、嬉しかったとともに感慨深いものがありましたね。今後としては自分がやりたいことで独り立ちして、身の回りの人を助けられたらいいなっていうのが第一ですね。将来的にブランドが大きくなるなら大きくなるで、ラルフローレンやアルマーニのような高いレベルのデザイナーが見ているところまでいけたらいいなと思っています。

 

Kozaburo Akasaka

赤坂公三郎 2011年にセントラル・セントマーチンズのファッション学部を首席で卒業後、《トム ブラウン》でメンズデザイナーとして経験を積む。2016年に自信のブランド《KOZABURO》を本格的に始動。2017年4月現在、2017年度の「LVMH プライズ」にファイナリストとして選出されている。

kozaburo.com

 

Edit_Sohei Oshiro