FEATURE | 30, Jun, 2020

The LATEST MUSIC -今週聴きたい新譜 『Women in Music Pt. III』-

Them magazineがオススメする今週聴きたい新譜、今週の一枚はこちら。

HAIM『Women in Music Pt. III』

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2020年上半期最後にして待望のリリースとなった、Este Haim、Danielle Haim、Alana Haimよる、LAの3姉妹バンドHAIMの新作『Women in Music Pt. III』。

2019年7月に、今作からの最初のシングルカットとして発表された「Summer Girl」は、それまでの自由で奔放なHAIMの印象とは異なる、サックスフォンが象徴的に鳴り響くメロウでジャジーな一曲だった。
その後、コンスタントにシングルを発表し続け、どれもが出色の出来。4月24日のアルバムリリースに期待が高まるばかりだったが、コロナの影響で時期を遅らすこととなり、6月26日にやっと発表に漕ぎ着けた。

 

HAIMのMVの多くはポール・トーマス・アンダーソンが監督しているのも見逃せない。今アルバムのMVの多くで、3姉妹がひたすらLAを歩く演出が取り入れられている。

 

時代の先端をいくプロダクションの秀逸さは、今作の大きな魅力のひとつ。
ロック、スカ、ジャズなど多様な要素を散りばめ、少々カオティックでありながら、まとまりのあるアルバムのムードを形づくっていく。

プロデューサーとして参加したのは、前作『Something to Tell You』に引き続き、Sky Ferreira「Everything is Embarrassing」などのプロデュースで著名なAriel Rechtshaid(バンドのフロントマンDanielle Haimのパートナーでもある)、そしてVampire Weekendの元メンバーのRostam Batmanglijだ。
この二人はVampire Weekend 『Father of the Bride』も共同プロデュースしており、コロっとした可愛いサウンドや質感、カジュアルだが軽すぎない絶妙で独特なバランスなどに、二作の類似性が見られる(Danielle Haimは、同アルバムの数曲で客演もしている)。
他にも、RostamがプロデュースしたClairoの『Immunity』で、Danieleは数曲のドラムを叩いていたりする。

 

 

今作に、特に歌詞の面で暗いムードが漂うのは、前作ツアー後にメンバーを襲った深い虚無感や過去のトラウマ、前作の制作中に発覚したとArielの精巣がん(現在は回復)によるDanieleのストレスなどがベースとなっているからだ。

『Women in Music Pt. III』というタイトルが表すのは、音楽業界における性の不平等への抗議、いや、抗議を通り越してもはや呆れであろう。
今作11曲目「Man From The Magazine」では、男性記者からのハラスメントについて歌われており、HAIMはこれまでにも“ガールズ”バンドと呼ばれ、安易にくくられることへの意義を唱えるなどしてきた。
ポール・トーマス・アンダーソン撮影によるアルバムジャケットをよく見ると、3人の頭部付近には、いくつもの太いソーセージがぶら下がっており、「NOW SERVING 69」の文字が掲げられている。アルバムタイトルと照らし合わせると、その示唆する内容は容易に想像できるだろう。
2000年に初めて3人が両親とショーを行ったお店が撮影のロケーションだという点も、「最初から”ずっと”そうだった」と暗喩しているのかもしれない。

 

コロナ禍にもMVを制作。Francis and the Lightsが振り付けを担当。

 

今作で最初に書いた曲だという1曲目の「Los Angels」は、アルバム最後の曲「Summer Girl」と呼応している。サックスフォンのメロディーで幕あけを告げる「Los Angels」だが、「Summer Girl」でもサックスフォンは重要な役割であり、「Summer Girl」が“L.A. on my mind, I can’t breathe”というロサンジェルスを心残りにする歌詞から始まるなど、この2曲は曲の位置、リリック、サウンドといった面で応対。MVもすべてLAで撮影されていることからも、姉妹が育ったLAという街が今作に影響を与えているのは間違いなく、効果的なサックスフォンの音色が漂う哀愁を見事に表現している。

ちなみに、6曲目「3AM」の冒頭に挿入された電話の声は、フランク・オーシャンの盟友Vegynによるものだという。今後、VegynプロデュースのHAIMもありえるかも?

 

Edit_Ko Ueoka